もっちもち

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  • 在るまでの日々

    これまで書いた中で好きな文章、 かつ読んで欲しいものをまとめました。

  • 深夜散歩

    なるべく夜に投稿します

  • 心象列車

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或る旧友に宛てて

私は今から君にありのままを書き綴ろうと思う。 君と初めて出会ったのは、幼稚園であるように記憶している。その頃の私は無鉄砲であり、季節の垣根もなく年がら年中半袖でいるような子供を板に着けたような子供であったし、骨と皮膚だけの痩せた子供でもあった。君は私までは行かなくとも、同じような感じであった。だからこそ、僕と君が仲良くなるのも必然であったように思う。 それから、君は私に対してぐちゃぐちゃの怪文書をくれたり、当時流行していた霧吹きを吹きかけると固まってアクセサリーに出来ると

    • 愛しの映画館

      めくる捲る季節の合間に立って暫し物思いに耽るように中洲大洋前の小道を歩いて、それから福博であい橋の設けられたベンチに座り込んだ。 本当にもうないのか。 やっぱり悲しい。それだけである。思い出は沢山あって、中洲大洋に救われた。高校卒業後、学年でたった一人何処にも向かうことが出来ず、二年もの間鬱屈した日々を送りその間に頭が少しずつ可笑しくなった。結句、本格的に精神が破綻し常に喉が閉まるような症状に陥り、飯が喉を通らず、それでも家族の手前無理に運ぼうとするが案の定トイレに向かう

      •  トイレの渦

         履き潰したスニーカーにこびりついた虫や花の名前を白紙に幾つ並べられるだろうか。私は白くつるりとした便座に座りながら考えてみた。蟻、飛蝗、サルビア、ツツジ、その先は何一つとして思い浮かばなかった。花と虫、その言葉だけだった。  トイレットペーパーを右手で絡めとるように巻き取っては腰をねじりながら汚れを拭き取って渦巻きの音を聞きながら立ち上がる。今日も一日が始まって終わろうとしている。それから明日が始まろうともしている。  これは日記だから、それ以上でもない。これからがどうと

        • 卵焼き

          岩チョコみたいな台所の角で卵を一つ割る。卵はだいたい二回か三回で小さなひびが入る。でも時々、一回でひびが入ることがある。そんな時、私はいつも気付かずにもう一度同じ場所に同じ角度で同じ強さで打ち付ける。木目調の床に満月よりも鮮やか卵黄がアメーバ上になって飛び散る。殻の破片が卵白と卵黄に混ざって、 少しだけ私の足の上に乗っかる。 私はいつも朝御飯を作る。 ほんとうは作りたくない。どうして目覚まし時計を押してから、その次のアクションが冷蔵庫の食材をチェックすることなのだろうか。そ

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        或る旧友に宛てて

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          青く漂う夜

          スマホに刻まれた連絡先を眺めては、その先に思い浮かぶ顔の少なさに悲しくなった。そしてそれは鏡だった。 バイト先に向かう道程にOMSB氏の作る音楽を聴きながら首を揺らす、夕立が降りそうな空がそのまま落ちてきそうな気がした。 十月十四日 バイトまで後二十分だ。 靴はボロのおさがり。服は汚れてもいいような帰宅後貧乏性が作用して洗濯機に辛うじて救われるようなものを着て歩いている。格好は十年前と悪い意味で変わらないのかもしれない。仮に頭頂部に煉瓦でも降ってきたら、さながら始めて家に届

          海街とこころ

          海の静けさから潮風がそっと匂いだす。それは夏の趣を帯びて砂浜に溶け、また地球の大地に消えていく。水平線上から打ちあがった入道雲は真っ青なキャンパスの中央に力強く描かれている。その下には、小さくなった船がある。そして手前には白波で身体を揺らす子供と親が照り付ける陽ざしをも喰ってしまうほどの笑顔を弾ませて楽しんでいる。私はそれをじっと見ている。足跡が、私の、辿りを示してゆく。背中には私の暮らす街が佇んでいる。夏の狭間に転がった一日の昼下がり、陽ざしが前方の親子の顔に差し込む。奥に

          海街とこころ

          親密な映画館

          天神のビルが乱立する警固神社方面を歩きながら、左側にはドンキホーテがあり、その前にピザのキッチンカーがあったのを認めた。キャンピングカーを改造して作られたと思しき車内の中には大声で客引きをする一人のツーブロックの男がいた。それに薄黒いサングラスをかけていた。その男の店はかなりの人気店である事を示すかの様にドンキホーテ前の歩道には若い男女が並んでいた。あと二組の四人家族がやってきたら歩道が埋まる勢いだった。確かにいい匂いがする。イタリアのピザ。最近ピザを食べていない事を思い出し

          親密な映画館

          踊る人々

          ショッピングモールの方から笑い声が聞こえる。 惣菜パンの丁度賞味期限が記載された隣に割引シールを貼っている時だった。何だか自分がなくなっていく感覚がある。なぜだろう。午後九時、ショッピングモール側とこちら側、つまるところスーパーで働く我々との間にシャッターが降り始めた。 兎にも角にも割引シールを貼り続ける日々が続いている。二十%オフ。けれど偶に賞味期限が明日に迫った商品がある。それは半額から、さらに値下げされた割引シールを貼らなければならない。私は半額から大体二十円から三

          放浪する大人

          御先真っ暗。暗夜行路。あの小説の主人公も結局は兄貴は良いところの会社に勤めて、自分はのらりくらり放浪…女と遊んで酒飲んでグデングデンになってぶっ倒れる様に眠る。 こちら油まみれのゴミ溜めから、虫が飛んでは頬をすり抜けて羽音が耳に侵入してくる肉の破片の掃除。近所で異臭騒ぎからの死体発見といった一連のニュースのまず出発点になりそうな匂いがする場所でバイトをしている。バイトならばと簡単に辞めて仕舞えばいいかと思ったが、もう一度面接に応募して合否に空っ風で吹き飛ぶ様な身体を曝すのはあ

          放浪する大人

          酒飲み駄文

          息を吸っては酒を飲みツマミを口に運ぶ。そういった暮らしとバイトを重ねては、もう既に今年も一ヶ月が終わった。特に無意味に思える暮らしであるが、それでも心に積もった臭い立ちそうな苦しみを溶かしてくれるものがある。 去年から、私は映画館に頻繁に通う様になった。 天神の方へ、kino cinema、それからkbcシネマ、そして中洲大洋へと足繁く通った。映画館というのはいい。なんといっても上映時間前のロビーに人々が集まってくる様はさながら冒険者ギルドのような様相がある。 特に私は中洲大

          枯れ葉を踏み砕く

          枯れ葉を踏み砕くと硝子が割れた時と同じ音がする。そんな気がする。 目の前を猫が通った。黒い猫で尻尾が根元からちぎれている。人間にちぎられたのか、それとも他の野良猫と喧嘩でもして千切れたのか、はたまた鴉とかに悪戯でもされたのだろうか。とにかく、目の前を通った猫に尻尾はなかった。猫が反対側の鋪道で鳴いた。前脚で顔に付いたダニでも払っているのだろうか。その顔は晴れた空に向いて、私はそれを見ている。 ぽかんと頭上で破裂音がした。冬の空はよく晴れていて、夏よりも青さが心地いい。イヤホ

          枯れ葉を踏み砕く

          冬の夜空の下を歩く

          心から悲しい。そんなこともなく、足はいつもの道路脇で濡れた草の上を通る。話はいつもと同じで変わらない。人生は辛い。つまらない。今日と明日がひっくり返っても変わらない。いつか膨らんで破裂する風船、それならまだいい。 コートの袖をに吹く風の冷たさが、私に冬という季節を否が応でも感じさせてくる。 今年に入ってなにかを書く事もできず、その全てが私の行動全てに通念する倦怠感を表す根拠づけであるかのように、白紙の上で自ら血が滴り落ちる音を聞く。 この人生はつまらない。人はそこから自らを

          冬の夜空の下を歩く

          月の爆撃

          街頭に止まった月からの爆撃によって僕の頭が可笑しくなった。僕の顔の上半分はプリンみたいな色合いになっているだろうし、下半分は昔からの色合いだけど鏡を見たらぎょっとしてしまうかもしれない。僕は考えることができない。なんたって爆撃されたから。頭が可笑しくなった。話しは出来る。幸い。僕は歩いている。ところでここはどこだろう。 砂浜に足が埋まった。 波が砂をどけて泡吹いている。 干からびた海藻がある。僕はそれを拾い上げて、遠くの海岸線にぶん投げた。海藻は空中で粉々にくだけちった。風

          隣の犬

          風は澄んで、透明の空。 私の見える範囲での空には雲が千切れがちに浮かんでいて、もし小学生に戻れるとしたら、こんな空を描きたいと思った。 月があった。丸い月。昨日学校からの帰宅途中に見た月とは異なっていて、右側が食べられていた。月が私を見ている。私も月を見ている。 今日もバイトだ。明日も何もなければ、私はバイトに向かっている。 バイトを始めて二ヶ月が経過した。 今日に至るまで、何度かバイトを休もうと思ったことがある。けれど、いざバイトの時刻に近づくと、私の足はバイト先に向かい

          午前四時の憂鬱

          自販機横に設置されたゴミ箱にねじ込められたコカ・コーラのペットボトル。ネズミ色の箱の中には沢山の塵がある。先日トイレに吐瀉物を垂れ流す前の自分と重なる。舗道の隅にあった赤くぼやける明かりは数時間前に落ちた太陽に似ている。  机に座り、棚からレコードを引っこ抜いて針を落とした。部屋を這うように音が広がり、その中に立っていたら一日が終わっていた。目の前に紙とペンがある。なにか書いてみようと思ってペンを持ち、紙にインクを落とした。点を打ち込んで、その黒点が滲んで終わった。紙の中央

          午前四時の憂鬱

          バイト前

          夢の中でコップ一杯の水を飲んだ。 喉を流れていくそれは、お腹の辺りでじんわりと熱を持ったような気がした。 地を走るタイヤの音がした。目が覚めた。 カーテンが揺れていて、フローリングに光が溜まっていた。私は立ちあがろうと思った。まず足先を動かして、今日も生きている事を実感した。それからお腹をさすった。少し暖かい。 目を擦ったら、天井の木目がくっきりと見えて、ちょっと笑えた。 背中が汗で濡れて気持ち悪い。 私は身体のいたるところに力を入れてベットから脚を出して立ち上がった。 くる