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ごまはすらないけれど、わさび胡麻を贈る

イタリアの医療システムとして、家庭医(ホームドクター)制度というものがある。

健康保険に入る際に、地域の保健機関で、任命されている家庭医の中から、まだ受け持ち患者枠が空いている医師のリストが紹介されるので、その中から1名選択して、その家庭医の患者として登録してもらう。

そして、一般的な健康の相談や、検査や薬、治療の処方箋が必要な時には、家庭医を受診することになる。公的医療機関にかかりたい場合、もしくは、私的な医療機関にかかる場合でも、任意で加入している保険で払い戻しの手続きをする場合等は、家庭医の出す用紙が必要となる。

家庭医受診の際には、基本的には患者に支払いは発生しないと思われる。各州の保険機関から任命されているので、その任務遂行のため、公的に報酬を受領しているとのこと。ただし、その医師に別の私的医療機関でかかったり、個人クリニックでかかる場合は費用は発生する。

わたしは、今までに3人家庭医が変わった。

1人目は、登録はされていたものの、受診することもないまま定年退職されたので、お会いする機会もなかった。

2人目は、前述の理由で家庭医を登録しなおす必要があり、周囲の人たちの評判を聞きつつ選択した。最初はよさそうだったのだが……受診するうちに色々と思うところが。。。地域の保険機関で変更することも可能ではあったが、しばらくして、やはり定年退職のため、自動的に変更になった。

3人目は、暫定的に2人目の家庭医に登録されていた患者を受け持つように任命された方。まだ、若いので定年退職までは時間があるが、任期終了ということはあり得るのかもしれない。
コロナの時期から家庭医になったので、基本的には、予約を取って伺うことになる。(それまでは、診療時間内に直接行って、順番待ちだった。時間予約の制度がなかった。少なくともわたしの家庭医の場合だが)
はじめて電話をした際に「○○先生でしょうか?」と尋ねてから話しているので、担当医師と話しているのかと思っていたら、あとから、秘書だと名乗られた。その携帯電話番号は、担当医師が応答するのか、秘書が応答するのか、時によって異なる。時には、どちらも手が空いていないからか、応答しない場合もある。
秘書の方は、担当医師の身内の方。
ある時、診療所で顔を合わせた際に、わたしが日本人であることが話題にあがったが、その秘書さんが「あぁ、日本!わたしは、ワサビが大好きなの!日本に行ったら、ワサビをお土産に持って来て!」とわたしに言った。
どのぐらい本気で言っているのか、世間話程度(リップサービス?)なのかは分からないのだが、日本に行く前に、とりあえず、こちらで購入できるものの、どこにでも売っているわけではない愛用のわさび胡麻をサプライズで持参した。普通のチューブわさびは、最近、一般的なスーパーでも入手できるので、日本の本わさび度が高いものでないのならば、変わったものが良いだろうということで。
まずは、担当医師に説明して渡したのだが、すぐさま秘書さんを呼んでくれて、その喜びようと言ったら、わたしの想像以上で!クリスマス前だったが、「クリスマスツリーの下にプレゼントと一緒に置くことにするわ!!」と言って、それこそ希望していたものを受け取った子どものようなはしゃぎ具合だった。

そして、わたしは「わさび」として認識されるようになった。
電話で話していても、「あぁ〜、わさびの!すぐにドクターにおつなぎしますね」というように。

日本帰省時には、彼女にわさびを買ってこよう。

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