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豆苗のはなし

つい先日まで、豆苗を育てていた。

育てたと言っても、パックに入って売られているものを、ちょっぴり水につけて伸ばしてみただけだ。

料理に入れる時に、芽の先の方を切って、そのあと必ず、根に水をやる。これを何とはなしに続けてみた。

しかしこれが、数日してくるとなんとも愛しい。
新しく伸びた芽は、スーパーに売られていた時の整然とした感じとは段々違ってきて、大体はへにょんと曲がっていく。
一本はあちらへ、一本はそちらへ、思い思いの方向に、へにょん。
毎日、へにょん が増えていくのである。

へにょんが増えたら、ちょきんと切ってお味噌汁に浮かべてみる。
お味噌汁に浮かび上がる、へにょんとした曲線。
ふむ。なんだか素敵じゃないか。

2週間ほど へにょん 採集に明け暮れた(明け暮れてはないか。)わけだが、そこらでやっと苗自体の限界になり、へにょん があまり出てこなくなった。

日に日に味も薄くなり、そろそろ潮時かな。。明日は燃えるゴミの日だし。と思ったのだが、いざこの2週間を思い返すとなんだか切ない。
入社して半月、不安だらけの生活を支えてくれたのはきっと豆苗だ。豆苗を見て毎日元気をもらっていたのだ。という気にすらなっていた。

とはいえそのまま置いておくこともできず、翌朝泣く泣く豆苗に別れを告げた。

そしてその時 わたしは誓ったのだ。
近々また、豆苗を買う。必ず、再び立派なへにょんを育て上げるのだ。とー

ー完ー

p.s夜中に豆苗の話を書いていたら、思いのほかどうでもいい話が出来上がった。悪くない。

美味しいお酒を一杯飲んで、そしてそのぶん幸せになります。一緒に呑みましょう。