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卵焼きの決意


大学生になってから、卵焼きが好きになった。
もともと甘い卵焼きは好きだったのだが、食べるのとは違う楽しみを見つけてしまったのである。

そう、巻くのが好きなのだ。巻くのが。

私の理想は薄く、かつ焦げ目なく、一ミリの隙間もなく巻き上げた卵焼きである。
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卵焼きの「巻き」部分に注目するようになったのは、浪人時代、4年前のことだった。
夏期講習に通っていた予備校でお昼に友人が食べていた卵焼きが、完璧に巻かれた卵焼きだったのだ。
薄く綺麗に巻き上がれた卵、しかも真ん中にウインナーを包んだ中身入りの卵焼きだった。

実家の卵焼きは、トロトロとした半熟卵だったので、ぴっちり巻かれた卵は私には新鮮だった。卵料理も好きじゃなかったから、そもそも卵焼きをまじまじ観察することなどなかったのかもしれない。
しかしこの時はしばらく、その卵焼きの綺麗さに感動して「すごいすごい」と言っていたと思う。

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大学に入ってから、一人暮らしを始めたことを機に卵焼きフライパンを購入してみた。憧れはあの、ぴっちり巻かれた薄焼きの卵焼き。

そんなに頻繁ではないものの、卵焼きを焼くときは時間をかけてゆっくり卵焼きを作ることに決めている。
甘い卵焼きの時は、砂糖と1垂らしのお醤油。しょっぱい卵焼きはあまり食べないから、その代わりに出汁巻卵。出汁と卵を1:2くらいにして、出汁がじゅわじゅわ染み出してくるように時間をかけて焼く。
焼きあがった卵焼きに箸を入れるタイミングは、いつだってワクワクドキドキするものだ。。

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今でもまだ、憧れの卵焼きには至っていない。中身にウインナーを巻く卵焼きの方は、更に遠い道のりである。
これからも理想を目指して巻き続ける。これは私の、卵焼きの決意である。

美味しいお酒を一杯飲んで、そしてそのぶん幸せになります。一緒に呑みましょう。