見出し画像

ネギと卵

こないだ母親にお昼のチャーハンを作ってもらう機会があった。
母親は昔から冷やご飯がたまってくるとお昼にチャーハンかオムライスを作る。子供の頃から食べており、いつも同じ具材で昔は何とも思わなかったが、ここ何年かでたまに食べるとすごくおいしいなと思うようになった。変わらない、安定の味、ということか。

その日、いつものように冷蔵庫をあけた母親は「卵とネギた足りない」と言う。家のすぐそばに小さなスーパーがあり、急いで買って来ようかといったが、あまり昼食にこだわりがなかった私は、「あるものでいいよ」と答えた。

できあがったチャーハンはいつもより色が地味めで、母は食べながら「やっぱりネギと卵た足りないとものたりないねえ」とこぼした。食べれらる味だったので、私は気にせず食べた。

冷やご飯が多かったので、残った焼き飯は翌日の昼食に持ち越されることとなった。母は「リベンジ」だと言って、卵とネギを買い足しにいき、材料を加えたチャーハンを中華鍋でさっと炒めた。

いつもの具材でで出来上がったチャーハンは、卵の黄色とネギの青がとても鮮やかだった。そして味が昨日より格段によくなっており、二人で「おいしいおいしい」と言ながら食べた。「卵もネギもそんなに味がするわけでないのに不思議だね、香りの力っ大きいよね」と言い合った。


香りに関する本を読んでいる時に、食事の味の7割は香りで感じている、というのを読んだ。科学的に説明されるとすごく難しく感じるが、身近なところでは、風邪をひいて鼻がつまると味が分かりにくくなる、まつたけは味よりは香りを楽しむ食材、など思い当たる例がいくつかある。

その時は自分の調べていることとは直接関係がなかったので、軽く流す程度だったけど、改めて料理における香りの役割って大きいんだな、と思わされた。


それからまた別の日に、刻んで冷凍していた揚げが余っていたので、いつものわかめの味噌汁に加えた。油揚げの油で風味が増した香りがたちのぼり、そこに新鮮な細ネギを加えると、一気に爽やかさがひろがった。少しのことなのに、こんなに変わるんだど驚かされた。

それまで特に注目していなかったが、揚げって美味しいんだなと思うようになり、ネギも今まで習慣でいれているだけだっのに、料理がぱっと明るくなり、味噌汁の味がひきしまることに気づいた。

あってもなくても同じと思っていたものの違いに、どうして急に気づくようにたったのか、自分でも不思議だが、そういう小さな積み重ねで料理はアップデートされていくのかな、とも思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?