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下北沢 / Shimo-kitazawa

下北沢は今まで訪れたどんな街(町)より、様々な場所の色んな要素が集積してできた街のように思われた。


神戸の北野やトアウェストにありそうな、80年台に建てられた低層のデザイナーズビル。よれよれのポロシャツやユニフォームを扱う古着屋が並ぶ、アメ村のような雰囲気。ちょっと代官山を想起させるような細い道の起伏とうねり…。様々な既視感がノスタルジーを誘い、パッチワーク的雰囲気が街の雑多な雰囲気を作り上げている。


高架下は神田と同じようにきれいに改装されていたが、中に入っているテナントは飲み屋でもおしゃれなビストロでもなく、露店を思わせる台湾やベトナム料理の屋台で、店先でビールを飲んでいるのも、若い頃はバックパックで東南アジアを回っていたような、欧米の中高年である。


駅から南の方へ通りをくだっていくと、細い通りにゴタゴタと人が行き交い、無数の小さな店がスクラムを組んで、大手チェーンが入り込む余地がない。道が交差しているところに、一軒のカフェが、道に沿ってL字に一列テラス席を出し、戸外飲み本場の外国人たちがびっしりと陣取って昼酒をのみ、見ているこちらまで何だか楽しくなってくる。


食べ歩きをしながら進む若者や、外国人観光客も多いが、昔からの街らしく雑貨屋の横に金だらいや柄杓などを扱う金物屋が並んでいる。戸を開けっぱなしのクリーニング屋からは、糊のぱりっとした匂いと共に古いスチームアイロンをあてる、楽しそうな白髪の親父の横顔が覗く。その表情は不思議に印象的で、人混みや辺りの喧騒にうんざりするのでなく、むしろそのムードの中で働くことを楽しんでいる。三叉路のところに花屋があり、見上げると上は生活感丸出しのアパートで、ベランダに干された黒いTシャツがくるくると回っている。ここを少しいった辺りから店が途切れはじめ、石垣に焼き杉の家のような、古くからの住宅街が突如として現れる。カートをひいた婆さんが、繁華街のほうから戻ってくる。


用事のついでに立ち寄って、一時間ほどの滞在だったが、初めての下北沢の印象はこんな感じ。立ち去る前に、若い人がやっている、日本茶のスタンディングバーで休憩してから、帰路についた。

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