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つばさをくれた人

ほんの数ヵ月間だけ、お世話になった職場がある。
いろいろと事情があり、どうしても退職せざるをえなかった。
最後のお別れの日、上司が「これ、ささやかなものだけれど…」と、美しい水色の箱を手渡してくれた。
家に帰って、ふぅ、と一息つく。
熱い紅茶を淹れながら、「あぁ、もうあそこには二度と戻ることはないのだ」と実感する。
さっきもらった箱を開けた。
あっ、と思った。
ティファニーブルーの箱の中には、つばさがたくさん入っていた。
おおぶりの、軽やかな天使のつばさが。
私が次のステージへ羽ばたけるように、大きく飛躍できるように。
私は、つばさをほおばった。
パイでできた、頼もしいつばさ。
ほんの短い間しか在籍していなかったのに、いつも気にかけて、なぜかとても信頼してくれていた。
過酷な人生を今も歩んでおられる最中なのに、それを微塵も感じさせず、いつも優しげに歌うように話しかけてくれた、聖母のような人。
あなたのおかげで、また次も頑張れる。
私は、最強のつばさを手に入れた。






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