monkichi16075

音楽と本と珈琲をこよなく愛する書籍校正者。 特にバイオリンとピアノは、死ぬまで続けてい…

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音楽と本と珈琲をこよなく愛する書籍校正者。 特にバイオリンとピアノは、死ぬまで続けていきたいです…

最近の記事

木の温もりと、音楽と

私の心の拠り所、 兵庫県立芸術文化センター。 硬質でスタイリッシュな外観と、温かみのあるウッディな音楽ホール内部とのギャップが新鮮だ。 大・中・小と3つの音楽ホールが入っているが、 一番のお気に入りは小ホール。 舞台を360℃ぐるりと取り囲むように客席が配されたすり鉢状の小ぶりなホールで、演奏者との距離も近く、アットホームな雰囲気が心地良い。 (収容人数は400あまり) 壁も床も舞台も、全てが深みのある飴色の木材で覆われていて、おごそかな重厚感が漂っている。 先

    • 音が枯れた日

      父を亡くしてから、弾けなくなった。 ピアノも、バイオリンも。 もう1ヶ月、私の指からは音が出ない。

      • つばさをくれた人

        ほんの数ヵ月間だけ、お世話になった職場がある。 いろいろと事情があり、どうしても退職せざるをえなかった。 最後のお別れの日、上司が「これ、ささやかなものだけれど…」と、美しい水色の箱を手渡してくれた。 家に帰って、ふぅ、と一息つく。 熱い紅茶を淹れながら、「あぁ、もうあそこには二度と戻ることはないのだ」と実感する。 さっきもらった箱を開けた。 あっ、と思った。 ティファニーブルーの箱の中には、つばさがたくさん入っていた。 おおぶりの、軽やかな天使のつばさが。 私が次のステージ

        • 生き直し

          16年勤めた組織を、離れた。 もう何年も前から そろそろ生き方を変えなければと思いながらも、 様々な理由から踏み出せずにいた。 離職のきっかけは、家族の病気。 認知症が急激に進み自分では何もできなくなってしまった父と、脳の病気で著しい言語障害と異常行動を繰り返し始めた姉を、母と二人で介護するためだ。 勤め人をやめ、どっぷり介護生活にひたること半年あまり。 覚悟はしていたけれど、いろいろとヘビーな毎日だ。 ヘビーすぎて、今は詳しく書く気になれない。 でも、父と姉には、とても感謝

        木の温もりと、音楽と

          最高に、楽しい!

          石田組、本日、兵庫県立芸術文化センター再降臨! 先ほど全ての演奏が終わり、興奮冷めやらぬまま帰途についているところです。 アルバム発売記念ツアーの初日が地元の芸文センターだなんて、さらに感無量。 真珠のように艶やかな組長の美音に、組員のみなさんの宝石をちりばめたような旋律が絡み合う奇跡のような2時間、アンコール最終曲で組長の発する「もう一曲だけやります」で「えぇっ!もうそんな時間?」とビックリしてしまうほど、本当にあっという間でした✨ みなさん、石田組は最高ですよ!!

          最高に、楽しい!

          つれづれ本 (1)

          365日、本を読まない日はありません。 本は心の栄養、知識の源、心地良い現実逃避📚️ 徒然なるままに読み進めていくうち、 自分の「何か」が変わっていくきっかけになった 本達をご紹介します。 注) 本の紹介そっちのけで、 話が遥か遠くへ飛んでしまっている場合がございますが、何卒ご容赦を… 『永遠(とわ)をさがしに』原田マハ著 物語のテーマは「音楽と共に生きる」、 そして音楽を介した「私」を巡る人々との、 時を超えた深いつながり。 主人公「和音(わおん)」や継母「真弓」

          つれづれ本 (1)

          この本の、この一節(5)

          「多くの人が強固で迷いのない精神を望み、欲するだろう。 しかし、目の前の弁造さんのように急に自信を失い揺れ動く精神が抱く確かさはどうだろう。 その揺れを見つめることの正直さと強さはどうだろう。 信念を持ちながらも、揺れることを見つめ生きていること。 この心の在りようにこそ僕が触れてみたいと切望した"生きること"の中心があるように思えた。」 (『庭とエスキース』奥村淳志) これまで積み上げてきたもの、 それが一瞬で崩れ落ちる衝撃に 激しく動揺しながらも、 目を

          この本の、この一節(5)

          この本の、この一節(4)

          悲しみの花は、けっして枯れない。 それを潤すのは私たちの心を流れる涙だからだ。 生きるとは、 自らの心のなかに一輪の悲しみの花を育てることなのかもしれない。 (『悲しみの秘義』若松英輔) 生きていれば、 どんなに悲しみから逃れようとしても 必ず涙を流すことになる。 つらく寂しい出来事に涙を流せば流すほど、 心の中の悲しみの花は潤い、 瑞々しさを増していく。 その姿は、 悲しみを単なる負の感情から 祈りや願いへと昇華させ、 何とか生きていこうと再び目

          この本の、この一節(4)

          家のローンさえ無ければ。

          家のローンさえ無ければ 今すぐにでも勤め人をやめて、 「好きなこと」を仕事にできるのに… 毎月、給与振込口座から住宅ローン口座へ 給料の大半をせっせと移しかえるたび、 くちびるを噛み締め悶々としていたわけですが… そもそも好きなことして食っていきたいなら 最悪、家を手放すことになってもいいはずで、 (家族としては全然納得いかないでしょうが) 住宅ローンのために 今の職場にしがみつき続けるって、どうなの? ダサすぎる、自分。 覚悟が無いヤツの、くだらない言い訳。

          家のローンさえ無ければ。

          この本の、この一節 (3)

          「不安で自分を殺すな」 (『やりたいことをやるために、好きなものを好きだと言うために、僕らは生まれてきたんだ』坂爪 圭吾) 自分を押し潰そうとしているこの不安の源は、 実は自分自身の考え方や捉え方だったりする。 自分の首に手をかけていたのは 実は自分自身の手だったことに気付かされた一節。

          この本の、この一節 (3)

          この本の、この一節 (2)

          飴色の廊下を裸足で歩くとき、 足の裏の皮膚が 過去みたいなものを捉えるのがわかる。 たとえば朝起きて飲むコップ一杯の水の中に、 夕方につける玄関の電球の光の中に、 ひっそりと過去が溶けている。 (『スコーレNo.4』 宮下 奈都) 祖父母が亡くなり、今はもう誰も住んでいない家へ、時おり心を休めにくる。 やわらかな光が、くすんだ障子や古びた縁側のそこかしこに溢れ、温かい手に包まれているような穏やかさと安らぎを感じる。 家の中のものに一つ一つ触れてゆくことで、か

          この本の、この一節 (2)

          珈琲豆を挽きながら

          心を空っぽにしたい時、 ひたすら珈琲豆を挽きます。 ゴリゴリ、ゴリゴリ。 ミルのハンドルを回す手の内側に、いくつもの歯車に豆が挽き込まれてゆく振動が直に伝わってきます。 夜明け前の、静かな朝。 挽きたての粉にお湯を注いだ瞬間の、 アロマをたっぷり含んだ、香ばしく豊かな香り。 生きていれば、 日々いろいろな事が起こり、 時には心を持っていかれそうになることも。 でも、焙煎士さんに愛情込めて ゆっくりじっくりローストされた豆たちが 今日もこうして、癒しと力

          珈琲豆を挽きながら

          この本の、この一節 (1)

          「私はあの白いウエハースの、きちんとした形が気に入っていた。 もろいくせにみごとにスクエアな、きちんとした、ほそながい。 私はそれで椅子をつくった。 小さな、きれいな、そして、誰も座れない ー。」 (『ウエハースの椅子』江國 香織) なぜか、心にシンとした痛みがひろがり、いいようのない寂しさと、どこまでも沈み込んでいく感覚に囚われた一節。

          この本の、この一節 (1)

          奇跡の集まり

          新年を迎えたオフィスに、 そっと足をふみいれる。 みんなの顔には、 休暇中の幸せだった時間の余韻が まだ、ほんのりと。 「今年もよろしく~」 挨拶しながら泳ぐように自席に辿り着き、 ふと思った。 こうしてまたみんなと逢えるのは、 ある意味、奇跡なんだ。 最近、 悲しい出来事があまりにも多い。 病気、事故、火事、無差別殺人、 そして次々襲ってくる天災。 いつ巻き込まれるか分からない危うさの中で みんな生きてる。 誰ひとり欠けることなく いつもの顔ぶれで いつもの日

          奇跡の集まり

          幸福な朝

          つかの間の冬休み、最終日の朝。 温かいベッドの中で、好きなだけ、たっぷり眠る。 特別なことは何もしなくていい、 巣穴ごもりの至福の時間。 この安らぎと穏やかさがいつまでも続きますように…