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「アホーイ!」 〜スロバキアに湯治に行ったら、楽しくて楽しくて仕方がなかった話〜

毎年2月になると思い出す。コロナが始まる直前の2020年2月、スロバキアに湯治に行った日々のことを。

そもそもスロバキアに行く予定ではなかった。

カナダ留学時代のルームメイトに会いにチェコに行く予定だった。彼女にチェコで何をするのがおすすめか聞いたところ、「温泉(Spa)に行くのが面白いのでは」と言われた。
早速"Czech Republic spa"という検索ワードを打ち込み、温泉地を調べてみた。

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???

あっつあつのお湯に浸かり、「ぷは〜っ、く〜極楽〜」みたいな絵を思い浮かべていたのに、なぜだかそれにそぐわない単語ばかりが温泉地の写真と共に出てくる。

そう、チェコでは温泉は治療の一種と捉えられていて、治療や療養のための温泉地がたくさん存在するみたいなのだ。

せっかくなら現地式の温泉の利用の仕方をしてみようと思い、気になる症状を選ぶ欄に"アトピー性皮膚炎"と入力しておすすめの温泉地を調べた。(過去に和歌山の高野山近くで湯治をしてかなり症状が落ち着いた経験があるので、興味が湧いてきた)

いくつかチェコの温泉地の情報が出てきたものの、皮膚関連の治癒ならスロバキアのSmrdakyが有名だ、Europe's most efficient skincare spa! という情報がやたら出てくる。

せっかく行くなら、一番良いと言われている所に行ってみたい。
ということで旅程を変更し、チェコの後にスロバキアまで湯治をしにいくことにした。

2泊程度と考えて予約の連絡をしたところ、「治療目的なら2週間〜4週間をおすすめしています。もちろん1泊からでも滞在可能ですが、最低1週間くらいは滞在しないとなかなか効果は見えにくいわ」と。

いくつかコースがあったが、お試しコースである1泊54€ (当時のレートで一泊約7千円)コースx 7泊を選んだ。

このTaster Cureコースという1泊54€の価格には以下が含まれる。
• 宿泊費(個人部屋)
• 朝食と夕食
• 医師による診察
• 1日1回の温泉治療
• 施設内のジム利用とジム内のグループプログラムへの参加

そして私はいざやって来た。Smrdaky(スムルダーキー)に!

ど田舎にあります

村自体は小さいが施設自体は公園のような広々とした敷地内にあり、3棟の大きなホテルが立っていた。チェックインを済ませると、まずは温泉治療を受けるにあたって医師による診察を受けて下さいと診察室に案内された。

幼少期からアトピー性皮膚炎があること、今は比較的症状は軽いが赤みと乾燥が気になること等説明し、皮膚を見てもらった後、私の7日間の治療内容が決められ、ものすごい臭いの塗り薬を渡された。(大学生時代に塗り薬ステロイドを辞めたので、ステロイドが入ってないか確認したが、入ってないと説明してくれた)

治療予定表
入浴の他に、硫黄を含んだ泥パックや紫外線を浴びる施術があった
塗り薬
私の部屋。全室個室ではなく、共有部屋もあるそうだ。


早速、今日の温泉治療へ。

ホテルの外にある治療棟

バスローブを着て待ち、番号が呼ばれたら浴槽のある個室に入る。

係の人の指示に従い、裸で湯船に浸かる(一般的な家庭の浴槽のサイズ)

じゅ、10分で終わった。短い。
毎日10分づつ増えるに違いないと願い、ホテルの棟へ戻る。お湯は濃い硫黄泉だった。

Smrdakyという村名は英語に訳すとStinker(匂う人)という意味で、ここに湧く硫黄泉の匂いから、周辺の人たちからStinkerと呼ばれるようになり、元々の村名Nová VesからStinker=Smrdakyに改名したそうだ。世界一硫黄含有量の高い温泉で、400年前から治療の意図(特に皮膚関連)で温泉が利用されているとのこと。

https://ensanahotels.com/en/destinations/slovakia/smrdaky/spa-history

ホテルに戻ると夕食の時間だった。食堂に行くとメニューを渡され、明日からの晩ごはんをABCDの選択肢から選んでカードに記入して下さいと。

晩ごはん。療養施設ということもあり、健康的なメニュー。美味しかった。

係の人がすぐ出て行ってしまったので、どこにカードを提出したら良いのかわからず、周りの人に聞こうとするも英語がわかる人がいない。すると、食堂にちょうど入ってきた綺麗なマダムが、綺麗な英語で説明してくれた。

「私はジャナ。あなたはどのくらい滞在するの?」

ジャナさんは製薬会社で働くマダムでここには1ヶ月滞在予定だそう。

そんなに長く?私ももう少しお金に余裕があれば1ヶ月くらい滞在したかったと言うと、スロバキアでもチェコ同様温泉は公的治療方法として認められていて、医師の診断書があればここの滞在費のほとんどは保険でカバーされること、ここに来ているほとんどの人がそういった経緯で来ていることを教えてくれた。乾癬、慢性湿疹、ニキビ、アトピー、関節リウマチ、脊椎症の治療を目的の人が多い。

「あ、そう今日の夜、ダンスパーティーがあるけど一緒に行く?」

湯治と聞くと静かに病院みたいに過ごすイメージだったので、少し驚きながらもついて行く事にした。(長期滞在に飽きないよう施設が色んなイベントやアクティビティーを用意しているそうだ)

お、踊りまくっている。老若男女が踊りまくっている。
恥ずかしさもありジャナを見ながら突っ立っていると、「アホーイ!(こんにちは)」と言って色んな人が誘ってくれて結局私も踊りまくっていた。

翌朝、食堂で行くと「アホーイ!」と色んな人が満面の笑みで挨拶してくれる。昨日一緒に踊った人たちなのだろうか?と思ったが、知り合いだからというより一定期間の滞在を共にする施設内では、みんな気軽に誰にでも挨拶をするようだった。

ジャナさんが居たので一緒に朝食をとる。

朝食はビュッフェ形式

「今日の夜はカーニバルの仮装大会よ!あなたも来るわよね?」

ガチのやつだった。

ここでもまた「アホーイ!」と色んな人が話しかけてくれて一緒に踊ったり、なんでまたこんな所に日本人がいるんだと聞かれ、google翻訳片手にみんなでワイワイ盛り上がった。

衣装は湯治に来る前に事前に用意して持って来たのだろうか?

もっと踊ろう!飲もう!と誘ってもらったが、翌朝7時からたった10分の入浴のために起きないといけなかったので深夜1時に部屋に戻った。(えらい)

翌朝、入浴は15分だった!
朝食を食べているとジャナさんがやって来た。
「アホーイ!」という言葉だけは覚えたけれど何しろそれ以外のスロバキア語が全く話せないので、優しいジャナさんがほぼ毎日声をかけてくれた。

「今日は近くの村で結婚式があるらしいのだけど行く?」

カーニバル時期なこともあって町の仮装パレードの人たちと踊る新婦さん

見知らぬ人の結婚式に参加してきた。ここでもみんな楽しそうに踊りまくっていた。

色んなイベントのおかげで3日目にもなると色んな人と顔見知りになった。本当にみんなフレンドリーで親切な人ばかりで、温泉治療の行き帰りに歩いていると色んな人がおいでよ!コーヒーでも飲む?と話しかけてくれ、だんだん楽しくなってきた。

とある日は敷地内の公園に散歩に誘われ。

この不思議な木の枝で
「見てて」と、なにやら編み物をしだす男たち
「はい、君にあげる」とプレゼントしてくれた。

とある日はボーリングに出かけ、夜はバーで乾杯。(湯治中なのに良いのかw)

毎日朝食、温泉、夕食しか決められた用事がないので、空き時間は滞在している人たちとの交流を楽しんだ。

そんなこんなであっという間に7日間は過ぎた。

肝心のお肌はというと、日に日に赤み、そして痒みが減っていくのがわかった。(途中から紫外線照射の処方も追加してもらったのも、効いたのかも)
やはり施設の人の言う通り、1週間では劇的な改善とはならなかったものの効果には満足だ。

日本だと湯治は保険対象外。10年前和歌山で湯治をした時、より効果が得られるようにもっと長く滞在たかったが金銭的な負担が大きいのが悩みの種だったので、スロバキアやチェコのシステムは素晴らしいなと思う。

そして何より、スロバキアの人たちのオープンマインドと温かさにはびっくりした。
おかげさまでまたもう一度戻ってきたいと思う国がまた一つ増えた。

最後は特に仲の良くなったメンバーが見送ってくれて、その内の一人トーマス君がアクセスの良い都市まで車で送ってくれた。感謝

左から:アンカ、ジャナさん、リディア、ロベルト、トーマス
ここには映っていないがイアンさんも、ありがとう!


だから私は毎年2月になると思い出す。このスロバキアSmrdakyで過ごした日々を。

あっという間に4年が過ぎた今でも、「アホーイ!」とメッセージを送って来てくれる温かい人たちだ。

Smrdakyへの湯治滞在にご興味がある方はこちら。https://ensanahotels.com/en/destinations/slovakia/smrdaky


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