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映画:1/10 Fukusimaをきいてみる

数年越しでずっと見たかった映画
1/10 Fukusimaをきいてみる

を、ついに見た!

古波津陽監督による

1/10 Fukusimaをきいてみる
は、福島復興の10年を記録するプロジェクトだ。
1年づつ、長編ドキュメンタリー映画として
公開されている。
はじまりは2013年。
今回見せてもらったのは
2017年版と昨年2022年度版である。
立場も性別も年齢も違う人々の「今」
が、インタビュー形式で淡々と綴られていく。
印象的だったのは、「海」の美しさだ。
福島、大震災、津波、原発事故ときて
メインテーマのように繰り返し
あの海の静謐な美しさはなんだろう。
その海と共に、そこで生きる人々の想いが
語られていく。
ドラマチックにではなく、
日常の断片として切り取られていく。
福島!復興!感動!という
熱くたぎるようなものは、
少なくとも演出としては伝わってこない。
画面に装飾がない分、
登場する人々の思いが
より鮮やかに心に迫る。
原発事故により生業を奪われた人々の
訴訟と、
政府や東電に対する静かな非難の声がある。
原発の現状について公的に説明する仕事を行う
経産省の木野さんが
同じボリュームで想いを語る。
2017年度版で印象的な、20代の女性沼能さん。
NHKのインタビューで話したことが
不本意な形で切り取られ、
人間関係がおかしくなったという傷を持ち
大学では「家」というドキュメンタリー映画をと撮り、
賞を取ったのだそうだ。
このシリーズをつくつた古波津監督はそれを聞き、
本当に人に寄り添える形の
ドキュメンタリーとはなんだろうと
考えて、あえて
矛盾する意見を矛盾したままに並べていく、
というこの形をとるようになったと言う。


大熊町で、亡くなった娘さんの遺体を探し続ける
木村紀夫さんは、2017年版の映画の中では
白馬で、自給自足の生活を目指していた。
今年2023年1月に私も大熊で
木村さんからお話しを聞いたが
6年前の木村さんは今より攻撃的な印象があり、
怒りが生々しかった。
そこに、震災の影響で家族を亡くした
自分を投影するし、
過ぎてきた年月の重さを感じる。
2022年度版で印象的だったのは
灘高の高校生2人だった。
もっと祖父母から、日常の小さなことを
聞いておきたかった。
と語る湯川くん。
100年たって被災者がみんな死んでしまった後も
災害は起こるし、そこで人々の生活や
命を守ることの重要性は無くならない。
当事者じゃない人にしかできないことがある。
もっとライトに、世間話の延長として
福島の話をしていきたい。
という清水君。

映画のアフタートークでは

対立構造が表面に出ると、
若い人たちがそこについて行きにくい、
政府も東電も、反原発の人も、
みんな福島のことを真剣に考えている。
復興や津波、被災のことなど、たくさんの要素がある中の一つとして原発の問題を取り上げたい。

人によって全然違う。まとめるのは不可能。
どんなふうにそれぞれの人が
福島に向き合っているのかを描きたいと思った。

と、監督ご自身が語る。

人や特定の立場を否定して
「正しさ」を競い合っても、
何も変わらない。

それぞれの意見や立場を尊重しあうことでしか、
もう私たちはじまらないところに
私たちは来ている。

はじめてこのシリーズを見た時、
この映画の上映会を主催してくださった方は
「なんじゃこりゃあ‼️」
と思ったのだそうだ。

そりゃそうだろう。

一つの一貫した意図、
「こう見せよう」というのがない作品をみて、
「こう思いました」というストレートな感想を、
持ち得るわけがない。

必ず誰かの意見は、自分の価値観を
否定的に刺激するはず。

だからこの映画の感想は

「もやもやする」

が、いいらしい。

もやもやするのに、
作品として美しく編集され、
視覚と心のありように
不思議な感覚の齟齬がある。
そこに揺さぶられて、
2本連続、夢中になって見てしまった。
人が好きな人はぜひ見てみてほしい。

⭐️22年度版データ
監督·撮影:古波津 陽
聞き手:佐藤みゆき

語り手:
井上美和子 四條海璃亜 木村紀夫 湯川友太 清水敬太
安田志穂 渡邊光貴 木野正登 佐藤真由美 佐藤進
長谷川純一 上野敬幸 平岡雅康


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