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サンタが家にやってくる

「サンタクロースを信じていないと何も貰えない」

昔、そう子供ながらに思い、存在を信じていた。

我が家はサンタさんからしかプレゼントが貰えなかったからだ。
純粋さの中に、家庭環境からくる影響が今思えば染み込み過ぎていたと思う。

そして成長するにつれ、頑なに信じている"フリ"をしたものだ。
もし、私が「サンタはいない」と悟ったことを親が知ってしまって
プレゼント制度が廃止されることを恐れたのだ。

しかしながら、毎年「サンタさん」に欲しい物を伝える手紙を書いても
枕元に置かれているのは決まって、"絵本とぬいぐるみ"という組み合わせ。

ガッカリ感は否めないが、それでもプレゼントを貰えることが嬉しくて
毎年懲りずに手紙を書き、心待ちにしたものだ。


そんな、子供にしてみればVIPな来客を迎えるにあたって
多くの問題を解決しなければならなかった。

海外から輸入されたサンタエピソードでは、どれも侵入ルートが煙突から。
しかし日本では煙突がある家なんて非常に珍しい。

絵本などでサンタという存在を認識した子供同様、
これは一般的な日本家屋に住む私にとっても大問題だった。

「大丈夫」という親の声なんて聞かず、
来てもらう為に考えた苦肉の策は、"窓を開けて寝る"という強行。

きっと私が寝たあと、窓は速やかに閉められたに違いないけれど。

次に浮上した問題は、ベッドにつりさげる靴下だ。

ベッド・・・
私の家では畳に布団を敷いて寝る、ザ・ジャパニースタイル。
ベッドなんてもので寝たのは、小学校の保健室が初めてだったくらいだ。

そこは子供、
必要なものは"プレゼントを入れてもらう靴下"という安易な考えに至り、
ベッドをねだられなかったことは両親も安心したことだろう。

しかしここで再び、疑問と問題が浮上する。

それは、その靴下のことだ。

自分の靴下は小さい。大人の靴下を借りたとしても
どう考えてもこんなところに自分が欲しいプレゼントが入る筈がない。

もしそのせいで違うものに差し替えられたら・・・

そんな不安を親に話すと、
「大丈夫、サンタさんは枕元に置いておいてくれるから」
と言われ、我が家のプレゼントの定位置は枕元に決定。

・・・とはいえ、どんなお迎えスタイルになろうとも
プレゼントはずっと"絵本とぬいぐるみ"、
それが我が家にやってくるサンタ、だ。

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