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4/27(土)インタビュー田原町09、ゲストは『死なれちゃったあとで』を書かれた前田隆弘さんです。


『死なれちゃったあとで』の前田隆弘さんの文章は、小説を読むようだ。
ジャンルとしてはエッセイにあたるのだろうけど、故人のことを、つきあいを思い返しながら書いていく。ポツン、ポタリ。あ、こんなこともあったなあと。

会社のパートの人たちを引き連れて海へ遊びに出かけるからという父に〈ジョン・レノンの顔がでかでかとプリントされたロンT〉を貸した。その日、息子のシャツを着た姿で父が溺死した。
息子はおもう。なんでまたこの格好でなんだ。
なんでといえば、一緒に海に行ったおばさんたち。その香典だ。
お坊さんのお布施の額に悩んだあとだけになまぐさく、著者ならずとももやもやする。

ソトヅラのいい人だったらしく、何で?というくらいお父さんはお金をあちこちに貸していたらしい。息子の学費は払ったふりをしてスルーしていたくせに。
はたして借金した人たちは、葬式に現れるのだろうか?

こうして葬儀は父の存在をあらためて考えなおす機会となる。たぶん前田さんにとっていちばん父親について考え、想った日だったんじゃないか。
読者からするとそんな見も知りもしない人のことを想像しながら、ちょっぴりわが父のことも思い浮かべたりもした。
葬儀は要らんと言いながら、本当にせんでいいんやね。しないよ。三度念をおすと、ボソッと「いや。おまえと○○さん(ヘルパーのひと)には来てほしい」。
トシをとるにつれ、当時の父の心境がわかるようになってきた。だから、前田さんの外面のいいお父さんのことも呆れ笑いつつ身近に感じることができた。

前田さんがこの本を書くきっかけとなった大学の後輩。
一回会っただけだけど、たまたま事故に遭遇する前夜にいっぱいしゃべった会社の社長さん。
こっそり小遣いをくれていた祖母…。
一冊の中には、いっぱいの死と追憶が詰まっている。

もう一篇だけ紹介すると、雨宮まみさんの葬儀の日のことを書いた長い一篇「完結しない」。
一読、二読した際は、気持ちが沈んでゆく話題にもかかわらず滑稽味のある場面に目を奪われていた。葬儀に参列したことのある人なら、わかるだろう。鼻に詰められた棉だ。
棺のまわりを人が囲んでいる。出遅れ、残っていたのは足下だけ。前田さんの位置からは、その棉がよく見える。見えてしまう。すました顔にちょっとお間抜けな。その様子を書きながら、死んでしまうとはこういうことなんだと理解させていく。

私事だがコロナの中、友人に見送られたいと言ってたと聞き通夜に行った。あきるほど目にした彼の顔が、えっ?!別人に思え、じっと眺めていたことがあった。
そうか、眼鏡をかけてないからだ。
大学の頃は松田優作にソックリといわれ、本人もその気になっていた。モテもした。裾のひらいたジーパン姿で歩き方を似せていた。当時は眼鏡はかけていなかった。そんなことすっかり忘れていた。

詰め棉の描写はひとによっては不謹慎ととられかねないが、あえて書いたところに故人との親愛、関係性がうかがえた。
その後の回顧の中に、雨宮さんが女子プロレスラーにインタビューする本の企画があり、参考にしたいからと前田さんにぜひインタビュー術の本を書くようにすすめた話が記されている。
雨宮さんは思い立ったら行動するひとらしく、出版社を見つけたからと二人して出向く。
共著ではない。相談をもちかけられた編集者は、なんで彼女がそこまで他人のお節介を焼くのかと不思議そうに応じている。
結局、実現しなかったそうだが、雨宮さんというひとを知るのに面白い(打算がうかがえない)エピソードだ。
その後、前田さんは雨宮さんと二人でしょうもないことを話せるようになり、最近になって出た彼女の本のことなどもはさみながら、どう想ってきたのかを綴っている。他の文章もそうだが、どの、話も先が見えない、どこに着地するのだろうというくらいうねうねしスリリングでもある。
ひとを書く、書きのこす、伝えるというのはこういうことなのだ。

今週末4/27(土)、前田隆弘さんがゲストの「インタビュー田原町09」はおかげさまで完売しました。
でも、
あっ、知らなかったよ。
なんとか参加したいという場合は下記あてにお問い合わせください。
Readin' Writin BOOK STOREあて
readinwritin@gmail.com 

本、お店に積んであります。インタビューを仕事とする前田さんに、この日しか聞けないインタビューをしたいと考えています。

文=朝山実

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 爪楊枝をくわえ大竹まことのラジオを聴いている自営ライターです🐧 投げ銭、ご褒美の本代にあてさせていただきます。