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【イベントレポート】monopo session vol.26 「映画・ドラマのプロデュース」- Producer 山田兼司さん -

5月9日(火)に開催されたmonopo session vol.26の様子をお届けします。今回のSENPAIはプロデューサー山田兼司さんで、映画・ドラマ業界のプロデュースについて学びました。広告・クリエイティブ業界を含めた今後のプロデューサーに求められるものや大事にするべきものは何かについても考えていければと思います。

monopo sessionとは、社内外の「SENSEI/SENPAI」をお迎えし、プロジェクトの裏側を深ぼりながらプランニングやクリエイティブについて学ぶトークセッションです。実際のプロジェクトをもとにお話を伺う関係上、非公開のイベントとなります。そのためこちらの記事でも、一部を抜粋してお届け。「もっと知りたい!」と思っていただけた際には、ぜひご参加をお待ちしております!
(告知はTwitterFacebookにて行っております。ぜひフォローをお願いします。)

SENPAIのご紹介

​​山田 兼司 Producer
1979年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。2003年テレビ朝日入社、報道局を経て、10年間、映画/ドラマプロデューサーとして勤務。小栗旬主演・映画「岳-ガク-」、小栗旬主演・直木賞作家金城一紀原案/脚本の連続ドラマ「BORDER」シリーズ、脚本・遊川和彦の連続ドラマ「はじめまして、愛しています。」「ハケン占い師アタル」、山田孝之・菅田将暉主演の連続ドラマ「dele」などを手掛け、2度の東京ドラマアワード優秀賞をはじめとして、ギャラクシー賞(日本のテレビ番組で最も権威のある賞)を3度受賞。「dele」では、テレビ朝日開局60年の歴史で初めて連続ドラマでギャラクシー賞優秀賞を獲得。また、仏カンヌで開催された世界最大級の映像コンテンツ国際見本市MIPCOMの「BUYERS AWARD for Japanese Drama」でグランプリを受賞した。
2019年4月より、東宝に移籍。現在、映画企画室長兼プロデューサーとして映画作品を中心に手掛ける。映画「百花」(菅田将暉・原田美枝子主演)ではスペイン・サンセバスティアン映画祭で日本人初の最優秀監督賞を受賞。他、Netflix シリーズ「舞妓さんちのまかないさん」も手がける。2023年6月2日に全国公開が開始された最新作の映画「怪物」(監督・是枝裕和、脚本・坂元裕二、音楽・坂本龍一)が、第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞。

モデレーター紹介

田中 健介 monopo|Producer
プロミュージシャンから30歳で広告業界に転身。業界経験がないことを逆手に取り、「とにかくやってみる。やってやれないことはない」をモットーに各種広告クリエイティブ、サービス/新規事業立ち上げなどさまざまなプロデュースを経験。現在は企業やサービス、プロダクトのブランディング/プロモーションなど、自身のプロデューサーの職務領域を広げることに挑戦中。

宮川 涼 monopo|Creative Director/Engineer
ブランドとユーザーをつなぐコミュニケーションの企画から、クラフト、世の中にどう広げるかまで、横断的にディレクション・制作しています。 漫画・映画・音楽・テレビ・ラジオがめちゃくちゃ好き。

なぜテレビ業界から映画業界へ転身したのか

はじめに山田さんのキャリアについてお話しいただきました。山田さんは、テレビ朝日に入社した初期にはドキュメンタリーや報道を経験し、社会に対する自身の問題意識を世の中に提示し、その本質を描き出すことに深い興味を持っていたそうです。
その後フィクションの世界に移り、フィクションではより深いレベルで物語を描くことができ、ビジネスとしても成り立つとご説明いただきました。初めは映画部門で「岳-ガク-」や「相棒 劇場版II」などの作品を手がけ、その後ドラマ部門に移動し「dele」や「BORDER」などの話題作を生み出しました。
テレビ業界で十数年のキャリアを積んだ後、東宝に転職し、最近では海外との仕事も増え刺激的な日々を送られているそうです。

プロデューサーの役割と責任範囲:映画業界と広告業界の違い

今回は事前に参加者の皆さまから聞きたいことをピックアップし、主に次のテーマについて順に山田さんに聞いていきました。

最初のテーマは、映画業界と広告業界におけるプロデューサーの役割と責任範囲の違いについて。映画業界のプロデューサーはビジネスとクリエイティブの両面を兼ね備えた職務で、ビジネス面では企画立案、制作・配給契約、宣伝展開、資金調達などのタスクがあるそうです。1つの作品をスタートアップ企業だとすると、プロデューサーは企画を立ち上げ、資金を集め、成果物を世に送り出す役割を果たし、ビジネスや経営の知識も必要とされるとのことです。一方、広告業界のプロデューサーについては、職務が細分化されそれぞれの領域に特化したスキルが求められると語ります。

特に映画業界では、企画立案の力がプロデューサーに最も重要だと強調されました。ゼロから新たにまだ世の中に存在しないものを生み出してお金を払って観てもらうところまで作り上げることが求められるとのことです。

原作がある作品の場合についてもお話しいただきました。大多数の映画プロデューサーは常に新たな可能性を探し続け、ヒットする可能性がある原作を見つけ出すためにアンテナを張り巡らせているそうです。しかし、年間300冊程の本を読んでいても求める原作が見つからないことの方が圧倒的に多いと言います。

さらに映画制作は、企画から公開まで平均2〜3年の長い時間を要するそうですがその間に社会の情勢や流行が変わることもあります。そのため時代が変わっても物語が人々に感動を与える強度を持つかどうかを見極めるのが非常に難しいと山田さんは語ります。

周りを巻き込むためには、魅力的な物語/ストーリーが根本にあるかが重要

Netflixシリーズの「舞妓さんちのまかないさん」も手がけられた山田さん。この作品は京都の方々など多くの人を巻き込んで制作されました。どうすれば周りを巻き込むことができるのかについて田中さんが尋ねました。
現在、NetflixやAmazonのPrime Videoなどの「グローバルOTT」と呼ばれる配信プラットフォームが増えていることによりクリエイターにとっては展開先が増えていると山田さんは説明します。その結果、優れた物語/ストーリーを生み出すことができるクリエイターの重要性が高まっている傾向にあるのではないかとのこと。映画やドラマ制作では多くの人々を巻き込む必要がありますが、そのためにも物語/ストーリーの魅力と座組の魅力が必要とのこと。
"物語/ストーリーの力"はあらゆるものに応用可能で、広告業界でも最高のクリエイターは強力なストーリーテリングの能力を持つ人々なのではないかと話されていました。

また、海外展開についてもお話しいただきました。映画ドラマにおいて勢いのある韓国は、国内市場が小さいため最初から世界を見据えて制作せざるを得なかったことや最初から世界的なヒット作に恵まれたことなどが好循環を生み出し成功しているのではないかとの見解を述べられていました。海外でヒットする理由としても、翻訳されても感情が動くような「普遍的な物語/ストーリーの強度」が重要とのことでした。

良い企画に必要な強い物語/ストーリーの作り方

魅力的な物語/ストーリーが必要だとわかったところで気になるのはその物語/ストーリーの作り方です。田中さんが、素晴らしい企画や物語/ストーリーを生み出すためにどのようなことに気をつけているのか、何を意識しているのかを尋ねました。

山田さんは、「強い物語/ストーリーはコミュニケーションの中から見つかっていくことが多い。人間が存在する限り物語/ストーリーは世界中で生成されているので、企画が枯渇することは一生ないのではないか」と語られました。日常生活、育児、旅行など、さまざまな場面で気づきがあるとのことでした。
また、映画はある種の引用芸術でもあると語り、世界中の過去作品からインスピレーションを受けて自分の個人的な体験と合わせて発酵させることもあるそうです。

今回は記事として公開できる内容がかなり限定されてしまうくらい濃く興味深い内容が多く、大変勉強になりました。(「内容全部知りたい!」という方は、ぜひ次回は当日ご参加ください。)
映画やドラマと、広告業界に違いはあれど、どちらも根本には良い物語/ストーリーが必要という学びがありました。生きているだけで周りに物語/ストーリーが溢れているという視点を持てるようになると、毎日が勉強になり企画やクリエイティブの幅も広がりそうです。
山田さん、ありがとうございました!

monopo sessionは今年から不定期開催となりました。詳細はTwitter、Facebookにてご案内しますのでお見逃しなく。フォローをお待ちしています!

執筆:石原 杏奈 freelance PR(@anna_ishr
撮影:馬場雄介 Beyond the Lenz(@yusukebaba

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