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むすびにかえて ~愛知ものづくり産業界の今、そして今後~

過去から現在へと歴史には連続性がある。たとえば、ジャーナリストの池上彰氏は「歴史の前後には常に因果関係があり、いくつもの出来事の積み重ねによって形づくられている」と、作家の原田伊織氏は「歴史というものは、一本の線で繋ぐことができる連続性をもっている」と説く。
愛知ものづくり産業もまたしかり、「前の時代に根がないと新しい産業の芽はなかなか育たない」(2019年4月19日付中部経済新聞)のである。いきなりポッと出たものなどが一つもないことは、ここまでの話を通して理解いただけたかと思う。陶磁器産業、繊維産業、自動車産業、さらには食品産業も、愛知の有する豊かな自然環境(ここからもたらされた産業資源)や地理的優位性に起“因”して成立した。これらは、地域特性に合致した仕事として必然的に定着し、外からの新しいノウハウを適宜受け入れつつ、ときを重ねて成長を“果”たしたのである。 

そして迎えた令和時代、ものづくり産業界では、ものづくり技術(有形)とデジタル技術(無形)をすり合わせて、製品の機能を使った高付加価値サービス(ことづくり)を創造しようという挑戦が本格化している。愛知ものづくり産業の代表格・自動車を例にとれば、デジタル技術をはじめとする異分野を巻き込み、CASE(Connected=インターネット接続、Autonomous=自動運転、Shared=カーシェアリング、Electric=電動化)というコンセプトのもと、自動車をつくる産業から自動車を移動手段として活用するサービス産業(モビリティ産業)への転換が志向されている。

モビリティサービスの柱の一つ 自動運転車(トヨタ自動車WEBサイト「画像・動画DL」より)

これなどは一見すると、まったく新しい取り組みのようにもみえるが、実際のところはそうでもない。

愛知にとってのモビリティ産業とは、ものづくりという同県の強みを活かした取り組みであることは明らかで、歴史の連続性から導き出された由緒正しき進化形といえるのではないか。もちろん、国内外のコンペチターとの厳しい競争がこの先待ち受けているはず。しかしこれまでそうであったように、必要な要素のうち、引き継がれてきたものづくりの技(技術)は持ち前の創意工夫力によってさらに磨かれ、新分野(今回はデジタル技術)は他者のそれに学びつつもしっかりと手の内化され、やがて地域の基幹産業へと成長するだろう。歴史的な視点からすれば、こうした姿を想像しても何ら問題ない。

(了)

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