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40人の学生が本気を出す場所「U23マーケティング部」とは

Jリーグ・モンテディオ山形では、2023年の1月から「U23マーケティング部」を発足し活動をスタートさせました。今日はそのU23マーケティング部の成り立ちや目的について書きたいと思います。

40名の学生が本気でマーケティングに挑む

U23マーケティング部(U23)とは、23歳以下の学生を対象にしたマーケティング組織のことです。現時点で40名の学生が参加をしており、毎週木曜日の活動日には、講義やワーク、プレゼンなどを行っています。活動日以外でもオンラインコミュニケーションツール「Slack」を用いて、日々コミュニケーションをとっています。
40名の学生は、主に高校生と大学生で構成されており、モンテディオ山形を好きな学生もいれば、マーケティングを学びたい学生、何かにチャレンジしたい学生など様々です。山形県に限らず、東京、北海道、静岡、群馬、岡山、大阪など全国各地から集まっているのも特徴なのかなと思っています。

キックオフMTGでの学生の真剣な眼差しは未来の希望を感じました

地域社会の課題解決と人材育成

マーケティングと銘打って活動していますが、学生たちには「マーケティングスキル」だけを身につける場所にはしてほしくないと思っています。学生にはこの活動を通して人としても成長をしてほしいと願っていますし、そうしたことを実現できるスローガン、行動指針の策定、メンターの意識統一をしています。

■スローガンと行動指針
スローガンは、米沢藩9代藩主で、江戸時代屈指の名君と言われている上杉鷹山が家臣に示した和歌の一部である「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」の部分を引用しました。
それに紐づく行動指針は、社会人になっても必ず必要とされる要素と、このU23を成功させる上でも欠かせないことを踏まえて作成しました。
今回応募が多数あったこともあり、面談を経てメンバーを選定させていただいたのですが、選定基準においてもこの行動指針を体現できる資質があるかを見極めのポイントに置きました。

●スローガン
「為せば成る」 〜どんなことでも強い意志を持ってやれば、必ず結果がでる 〜

●行動指針
1. 主体性を持って行動しよう
発言/反応をして、自分の存在価値を出せるようにしよう。失敗を恐れず、勇気を出して行動しよう。
2.仲間とコトを成そう
自分よがりにならず周りと協力して進める。一人でできることには限界があるので、多くの人を巻き込んで行動できるようにしよう。
3.感謝を忘れずに 
活動ができるのはたくさんの方の支援があってこそ。支援してくれている方への感謝の気持ちを忘れないこと。
4.諦めない気持ちを持とう
うまくいかないことがあたりまえ。反省して切り替えて次にチャレンジする気持ちで取り組もう。

U23を立ち上げたもう一つの目的は、地域社会の課題解決につながること、若者と地域社会の接点をつくることです。

■地域社会の課題解決
言わずもがな、山形県においては人口減少・若者減少が加速しています。この傾向をネガティブに捉えているわけではありませんが、若者の力、エッセンスを地域に注いだときにどんな科学反応が起きるのかは我々もみてみたいと思いました。モンテディオ山形は、ある意味で公の組織です。そして、ハブになり注目を集め発信することができる存在でもあります。
マーケティング活動が、新たなファンを生むことだとしたら、ファンになってくれる可能性がある人にどんなことをすれば良いのか考えるのが必然です。
初回のミーティングで、学生たちにこんな話をしました。
『良いサービスとは、解決できていない「課題を解決する」もの、充足されていない「欲求を満たす」もの』
良いサービス(イベントを含めた興行)を提供したり、新たなファンを増やすためには、地域(や人)の課題に目を向けるのが必要です。
すぐに形にすることは難しいかもしれませんが、目線としては地域社会の課題解決、若者と地域の接点というのは意識して活動しています。

究極の目的はファン獲得をこえた若者の成長機会と地域課題の解決

全方良しのスキームを実現

U23をクラブと学生だけの関係で終わらせてしまうと、目的はおろかこれまでのようにクラブのリソース補完の関係以上のものにすることは難しいと考えていました。
そこで、下記の関係図にあるように実現したい目的に欠かせない団体、人を巻き込んでいくスキームを運営当初から計画しました。
資金がない、人がいないが理由で学生が企画したことを実現できないのは最も避けたいことです。クラブとしても運営費を予算化したり、不足するリソース・スキルは外部企業様のご支援をいただき進めさせていただいています。ただ支援をいただく形に依存をすることなく、こちらかも企業様にGIVEができるように、学生との交流機会などを設けるなど価値還元を考案しています。

U23マーケティング関係図

学生に提供する”学びの質”へのこだわり

スポーツクラブで働く人が話せる「マーケティング」の話はどうしても限定的になっています。そこで、マーケティングの全体像を捉えて話せる方、たくさんの成功経験を持っている方を講師にお招きし、学生に講演会を実施していただくことにしました。
参加学生は、学生時代の貴重な2時間をこの活動に当ててくれています。良質でためになるインプットを提供したいと考えこのような形がベストだと判断しました。
また、スキル以外にも講師の人生観や考え方を聞くことで、将来のキャリアを描くきっかけになったり、学校生活をより有意義なものへと導いてくれるヒントを得ることもできます。
若い時は、「誰が言ってるか」の方が重要な時期です。活躍しているだからこそ耳を傾け聞き入れられることもあるはずです。その点でも、外部講師の登用は必要不可欠だと考えています。

若者への熱い想いを持った講師の方には感謝の気持ちでいっぱいです
写真:株式会社丸山製麺 取締役 丸山晃司氏

年間40回のプログラムを計画

今年のU23が目指す最終ゴールはXデーに行われる「U23プロデュースデー」を成功させることです。
この日は、試合興行に関わる全てをU23メンバーが主導して行います。
当然そのためには、実務経験も必要ですし、成果を出すためにはスキルや知識も必要です。
年間で計画している全40回のプログラム(+合宿も予定)では、実践の場として試合興行に携わったり、講師による専門性の高いインプットを繰り返してもらいます。無論、クラブのリソース補完ではないため、クラブで決めたことを実施するのではなく、学生自らが考えてプレゼンして承認を得たものを実行してもらっています。

ホーム開幕戦は各チームに分かれてチケットの販促を企画

最初は、ホーム開幕戦でのチケット販促を実施しました。
結果から述べると、どのチームも目標には到達することができず、「1枚のチケット」を売ることの難しさを痛感したことだと思います。
知識不足、チームビルディングがうまくいかない、行動量が少なかった…
何が失敗した要因かも分からない状態に陥ったことでしょう。
でもそんなことは社会に出たら当たり前です。
社会は、予め決まった問題と正解がある答えを探すテストとは違い、自分で問題(課題)を決め、正しいであろう答えを実行しなければいけません。
そのことを早い段階で経験できたことが稀有な体験だと思いますし、それを繰り返すことで思考や行動の習慣化をアップデートすることに繋がります。

ホーム開幕戦では各チームそれぞれが企画したマーケティング活動を実施

全部署・部長レイヤーがU23の活動にコミット

もう一つこの活動のコアになっているのは、全部署が管轄する活動であるということです。ファシリテーションこそ、マーケティング部が主導で行っていますが、プレゼンの審査には各部長レイヤーが参加をしますし、メンターには各部署で活躍する人材をそれぞれ配置しています。
U23のような社会連携活動を進めようとすると、往々にしてあるのが特定の部署や人だけで活動が完結するパターンです。
そうなってしまっては活動の規模も小さくなり、継続して実現をしていくのも難しくなってしまいます。モンテディオ山形の場合、全部署を巻き込み型で学生をサポートしていくという強い意思があります。

学生のプレゼンを聴く各部署の事業部長

コロナで失われた青春を取り戻す

コロナが流行し、多くの人が多くのもの、時間を失いました。その中でも学生は学生時代にしか味わうことができない「青春」を失ってしまいました。そんな子たちが、ここで青春を感じられたら何より嬉しいと思っています。
彼ら彼女たちのやり取りをみているとすごく熱いものを感じます。この熱量、友情が明日の未来を切り拓くエネルギーです。
チャレンジと失敗ができる場所、新たな自分の可能性に気がつく場所、自分を認めてあげられる場所を大人がしっかりとつくってあげたいです。

とあるチームの「Slack」でのやり取り

最後に

学生に対して提供できる価値を高めたい一心で取り組んでいることに偽りはありませんが、本当の意味で価値を感じているのは我々クラブスタッフ側かもしれません。学生からは突拍子もないアイデアが次々と出てきます。その中には課題を捉えられている素晴らしいアイデアもあります。では、なぜ自分たちが集まると同じようにアイデアが出ないのか?
ある種常識人である大人は、経験を重ねるごとに「無理」「難しい」という経験則上で物事を捉えてしまう傾向があるからだと思います。
一方で学生は経験がない分、何も考えずにアイデアを出すことができる。事業には、実現可能性という見極めは大切ですが、テーブルに乗せないことには見極めもできません。
そしてもう一つは、コミュニケーションの量です。上下関係のない、なんでも話せる場だからこそ生まれる会話というのは必ずあります。
このように学生にあって自分たちに足りないものを知る機会としてもクラブスタッフは恩恵を得られているのだと思っています。

メディア実績

TV、新聞、WEBメディアなど多数の掲載実績

多くのメディア様に取材をしていただいています。取材をしてもらうことがゴールではありませんが、地方都市の一つの事例として取り上げていただくことで、他の都市でも同じような取り組みをするきっかけになれば嬉しいですし、中身の部分を含めて包み隠さずさらけ出したいと思っています。

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