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白銀に舞う

白銀に舞う

その週末、仕事で雪山に既に入っているお隣の山仲間に合流する為、奥さんと私と魚は電車でもって信州に向かった。

魚は窓の外を見ていて飽きないようだ。

小さな驚きの声が聞こえてくる。

魚が入っている透明な水筒用に奥さんが作ってくれたカバーには外が見えるようにスリットが入っていた。

トンネルをくぐるたびに冬の気配が強くなっていった。

奥さんが、不意にいう。

「前の主人と今の主人と私は同じ大学で

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雪もよい

高い山ではソロソロ雪が降る日もあるようだ。

隣の住人の山仲間は頻々と山に出かけているようだ。

隣の奥さんは山でご前の主人を亡くしているのでさぞかし心配なのではないかというとそうでもないらしい。

山男の妻はそのくらい鷹揚でないとつとまらないのであろう。

「ご心配でしょう?」
「いえ、仕事ですから、心配したって仕方ないんです。」

なるほど、山へ行くのを生業にしていたのかと、合点がいった。そう

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魚を調べる

寒くなってきて、天気がいい日には縁側で日向ぼっこをすることが多くなった。

山仲間のお隣りさんは山に行っているようだ。最近は奥さんも一緒に行っているようで、お土産をくれる。仲良きことは美しきかなといったところだ。

釣り好きの知り合いはどうしているのかなと思っていると、果たしてやって来た。

「今日はお客さんを連れてきたよ。」

意外なこともあるもんだとおもっていると、お客というのは沢筋で黒い鳥を

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鳥を見る

釣り好きの知り合いから、沢に誘われた。

何時もいく河原よりも上流で滝なんかもあって涼しいという。

残暑が厳しくて、外に出掛けるのが億劫だったので、行くことにした。

魚も行きたいというので、小さなプラケースに入れてつれて行く事にした。

舗装された道が途切れた所から暫く行くと宿屋があってそこの横から沢に降りた。いつもの川も綺麗だけれど、こちらの水は透き通っていた。

魚に泳いでみるか聞くと、や

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枇杷と山仲間と魚

縁側で爪切りをしていると、隣の家から何やら話声がする。

どうやら、枇杷の実が気になるらしい。

例年、ウチの枇杷の木が塀をこえて隣の家の敷地に枝を広げてしまうのを隣家のご主人が枇杷の実を収穫しつつ剪定してくれていたのだが、昨年のちょうど今頃不慮の事故で亡くなられてしまったので今年はかなり茂ってしまっていた。

「あぁ、すみません、よろしければ取っていただけると助かります。」

「じゃ、遠慮なくい

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川でのこと

川でのこと

それはいつの事だったろう。
梅雨入り前のやたら空が青い日だった。

釣りに行くという知り合いについて、川の上流のほうの駅で降りた。

知り合いは釣りを一緒にしたらどうかと言ってくれたが、魚のヌラヌラした感じがイヤだったので断った。

河原に降りて知り合いとは分かれて河原を歩く事にした。

近所の河原とは違って、石の大きさが違うし、なんだかゴツゴツしている。

なるほど、なかなかこの河原はいいなぁな

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