見出し画像

20代の私が30年前の「東京ラブストーリー」を観た話

暇だったので「東京ラブストーリー」を観た。

私は20代後半だ。東京ラブストーリーが放映されていた時、まだ生まれていない。だが、有名すぎて名前は知っている。前々から興味はあったが「東京を生きる男女の色恋沙汰でしょ」と高を括っていた。

それなのに、最後泣いていた。なんで?

🗼

永尾完治(カンチです。役者は織田裕二さん)と、同期の赤名リカ(鈴木保奈美さん)のラブラブモーションかと思っていた。でも実はカンチの高校同級生の里美ちゃんや三上くんが深く絡んでいて、色恋沙汰の洪水が溢れに溢れ、びちゃびちゃだった。知らなかった。

令和だからこそだが、携帯電話でかい・肩パッドでかいの二大ツッコミが終始続く。そして、待ち合わせをほとんど勘と祈りで貫き通す模様を見て、スマホの恩恵をひしひしと感じた。今だったらお蔵入りするようなコンプラ場面、ジェンダーのステレオタイプが横行していて、はらわた煮えくり返りそうだったが、これらを改善してきてくださった先輩方にひたすら感謝した。

🗼

はじめは「この甘い恋愛模様を最終話までマジ貫くんか…?」と覚悟すらしたが、やはり柴門ふみ、坂元裕二のタックルよ。ドラマ構成と演者らの心情描写が秀逸でやられた。

画像1



私がそんなことを思ったのは、とりわけヒロインのリカ(鈴木保奈美)の存在だ。「カンチ~~!」が、ド肝を抜くほど可愛らしい。この彼女が、真面目なカンチを振り回す。「好きだから」という理由で、カンチの仕事や飲み会やらあらゆる場面にひょっこりはんのようにやって来ては、場をかき乱す。「せーので後ろ振り返ろう!」とか「好きって言ってくれたら元気出る(満面の笑み)」とか、もうメモしといた。使ってみようと試みてるのだ。うそです、リカだから許されるあざとさ。

しかし途中。部長(西岡徳馬さん)が「あいつ(=リカ)は、人のために頑張りすぎる。人生の荷物を背負いすぎてる」的な言葉をカンチに放つ。この時、私は気付いた。

リカ…!あなたは非常に一途で、犠牲心と孤独の塊ではないか!

大好きなカンチを雨の中何時間も待ち続けたり、彼の仕事を裏で上手くいくように助けたり。仕舞いには"女"を使って、人間関係を円滑にしている。彼女はあざといのではない。孤独に従い、報われない恋心を持て余す、純粋無垢な人間なのだ。晴れてカンチと付き合うが、浮気沙汰でごたつく時に「人を好きにならない方法を教えてよ!」と叫んでいた。「これは"孤独"の物語だぞ」と胸が痛くなった。生意気にも。

このあたりから

「あれ?私もリカの孤独、ちょっと分かっちゃうかも?」
「リカ(と同じように恋する私)頑張れ!」

そんなことを思ってしまう。ここに「共感の蜘蛛の糸」が垂らされており餌食になってしまうように感じた。

100%共感できるほど長く生きていないが、恋する気持ちの無敵さは、すごい。寒い中でも想い人を永遠に待ち続けられる体力が体のどこかに貯蔵されているし(どうでもいいことには1分も待てない)、夜いくらでも電話できそうだ(どうでもいい夜は即寝)。

要はいくらでも、頑張れるということかもしれない。恋すごい。

でも残念なことに、そのエネルギーは全て還元されるわけではない。使ったら使った分だけ無駄になる恐れもある。比例しない。それを見た瞬間「自分だけじゃない」と、勇気とかもらえる。

そして、人間はいつも寂しい。

人は、傷ついても誰かとかかわることを辞められない生き物だ。それゆえに、群がったり離れたり泣いたり笑ったりしている。不純物ばかりに見えるそれら。でも、そんな恋の構成要素はやっぱり美しいと思ってしまう。

🗼

もう30年も経っているのでネタバレも何もないが、結局、カンチとリカは結ばれない。リカは海外赴任するのだ。泣かなかったリカが泣いてた。で、私も泣いてた。「なんで好きなのに結ばれないの?!」と。

最終話なんかもっと残酷。お別れした3年後のシーン。二人は再会する。カンチは結局、さんざん彼を振り回した高校の同級生・里美ちゃんと結婚している。リカはアメリカでバリキャリになり、凛とした大人な姿で「カンチを好きになったことが、今でも私を強くするの」とか言っている。「本当はそんなことないでしょ!あなたがカンチと結ばれなくてどうするの!?」と突っ込んでしまう。

でも、何かを得るには、何かを捨てなくてはいけないのだ。

「美しい」と書いて「かなしい」と読むことがある。そんなキリキリ感が胸を締め付けるようなドラマだった。

🗼

時代関係なく「人間は変わらないんだな」とつくづく思う。たまに、紫式部の「あの女はいけすかない」という腹黒い和歌や「あの人愛おしい」みたいなピュアな和歌が発見されて「いつの世も人の心は…」という言葉を目にする。きっと、1000年後にこのドラマは「平成の紫式部」になるのだろうなぁとしみじみしながらPCを閉じた。


でもひとつ。
仕事中に友人からかかってくる「あいつと寝た」という電話の多さに心が追いつかない。

いらんでしょ!そんな情報!

いつもありがとうございます。いただいたサポートは、巡り巡って、あなたの力になれるような、文章への力に還元いたします。