美月/コピーライター

デザインスタジオ・エル所属。ディレクター/ライター/コピーライターです。心に移りゆくよ…

美月/コピーライター

デザインスタジオ・エル所属。ディレクター/ライター/コピーライターです。心に移りゆくよしなしごとを、忘れないよう書き綴ります。どうぞよしなに、お手やわらかに。

マガジン

  • ひとり手帖

    日々の思考の断片です。

  • ひとつきのかけらたち

    一ヶ月毎、日々のかけらをまとめます。

  • 潜行日誌

    • 20本

    遊覧潜水のふたりの、日々の潜行(潜考)の記録を綴る交換日誌です。平日に交互に更新します。

最近の記事

  • 固定された記事

好きなことを、好きなままで 2022/12/31

私の右手中指は、すこし変形しています。年月もののペンだこがあるからです。 今年は、人生の24年目。相変わらずたくさん、文章を書いた年でした。でも、一番変わったのは、仕事として文章を書かせてもらえるようになったこと。人生で一番「誰かの思いを伝えるために書く」ことに、心を尽くした一年でした。 年末くらいは文章から離れようかと思っていたのですが、どうしても、大切な一年のことを書き残したくなってしまった。普段このnoteでは、限りなく脳内ひとりごとに近い文章を備忘録的に残していま

    • 熱を出したときのゆめ

      こうして寝込んでいるあいだに、自分の居場所が、どこにもなくなったらどうしよう。 熱を出すたび不安になる。20歳を折り返した今でも。子どもみたいに思う。どうしよう。こうして寝込んでいるあいだに、世界から忘れられてしまったら。 流行り病に感染して数日。想像の2.5倍くらいしんどくて、ほぼ寝たきり状態で過ごしていた。熱は上がったり下がったり、咳のしすぎで腹筋は痛い、頭はがんがん身体は怠い、なにかしようにも具合が悪い。ひたすら目を閉じて苦痛に耐えるしかない。昼間寝るから夜眠れない

      • すこやかに考えごとをする

        私には、小説/詩を書く用の人格と、それ以外すべての文章を書く用の人格がある。 日記を書くときは、どちらの人格のほうが書けるんだろう。と、最近ずっと考えていた。考えていたらいつのまにか、1年の1/10が終わろうとしている。考えごとが相変わらず下手だ。ひとりで考えては爆発して、ひとりでよく寝込む。 「人生は考え抜くものじゃなくて、生きるもの」だと、江國香織さんが小説で書いていた。今年の目標は、『すこやかに考えごとをし、自分の人生を生きる』です。いま決めました。 もうすこし、考

        • 12月のかけらたち

          会社帰り、電車が遅延していた。申し訳ありません、と駅員さん。あなたのせいじゃない。誰も悪くない。そう思えるくらい穏やかでいられる日が、すこしでも多い人生がいい。 待合室で吐く息が白い。降ってはいないのに、雪の匂いがする夜。 毎月の断片日記も、気づけば6回目。エッセイを書くのがこわいくせに、よく続いたものだ。 かつて、5年間毎日小説を投稿していた。今はお休みしているが、今年は久しぶりに長編を書き上げることができた。周りも私も変わり続けている。どんなかたちであれ、書き続けてい

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        好きなことを、好きなままで 2022/12/31

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          11月のかけらたち

          冬はつとめて。いやいやいやいやいや寒すぎる。つとめてなんて寒すぎる。布団を出るのに覚悟が要る。何食わぬ顔で冬が来た。11月の、日々の断片。 ◯ 住んでいない街を徘徊するのが好きだ。読めない地図は見ず、ただ気になる方へふらふら歩いていく。このあいだは、ちいさな韓国風居酒屋を見つけた。看板に「今日もおつかれさま(にっこりマーク)」と書かれていたのに惹かれて、思わず入ってしまった。コピーライティングの最適解。ぐはあ。 こぢんまりとしたお店で、常連さんしかいない。テレビでは韓国

          意味のないこの世界で、あなたと出会えてよかった【ありがとう、進撃の巨人】

          人生は、この作品を「観る前」と「観た後」に分かれる。もう観る前には戻れないことに、半ば愕然としてしまう。 『進撃の巨人』。 おそらく、私の人生観の一部を形作っている作品。 彼らの台詞を自分ごととして受け取っては、勝手に心臓を捧げてきた。『紅蓮の弓矢』のドイツ語歌詞を必死で暗記していた頃から、かれこれ10年が経つ。 先日、アニメ最終回が放送された。 25歳にもなって、嗚咽しながら泣くとは思わなかった。 どこが琴線に触れたのか理解する暇もなく、ただ感情を激しく揺さぶられ、そ

          意味のないこの世界で、あなたと出会えてよかった【ありがとう、進撃の巨人】

          10月のかけらたち

          ◯ 紅葉をたくさんみた。みさせてもらった、が正しいかもしれない。仕事だったり、友人に誘われたりで、紅葉と接する機会がたくさんあった。 自然の生み出す赤には、どうしてこんなに深みがあるんだろうと思う。蓄積された歴史によるものなのか、堂々たる威厳ゆえなのか。わからないけれど、わからないからこそ圧倒され、言葉を束の間剥奪される。取り戻そうと藻掻きながらシャッターを切り、ため息をつき、ただ、すごいなあとつぶやく。言葉を探すうちにも、葉は風に舞って散っていく。自然の美しさを、そのまま

          蟻と葡萄と10月某日

          休日。夏のあいだに読めなかった本を読む。好きな作家さんの小説、コピーライターの本。溜めていたドラマを1話だけ観る。好きな俳優さんが出ているやつ。 風がつめたいことに気づく。ヒートテックを引っ張り出す。それでも日が差すとすこし暑く、カフェラテはアイスで飲んでしまう。たぶん一瞬で終わってしまう季節。はかない。 シャインマスカットを買おうとして、逡巡してやめる。代わりに想像する。薄い皮がはじける瞬間、じゅわあとこぼれおちる甘味、そして暴力的な幸福感。いつか、ありったけのシャイン

          蟻と葡萄と10月某日

          書くこと秋めくこと

          書きたくて書きたくて仕方がないくせに、書くことは業が深いことだと思っていて、誰にどう届くのか、周りにどんな影響があるかをぐるぐる考えてしまうせいで、ぶわーっと書いたものを人知れず墓地送りにしてしまうことがよく、ある。書き溜めた小説や詩や短歌、ボツにしたコピーやステートメント、誰かに見てほしい気もするし、大切に私のなかだけに留めておきたい気もするし、で、気づけば容量を圧迫して、慌てふためいたりする。風通しをよくするには一度全部吐き出すことが必要だと思い出し、ふかく、息を吐く。吸

          書くこと秋めくこと

          9月のかけらたち

          長編1本、短編2本、詩1本。 9月末に脱稿した。 この1か月間、ほんとうにずっと書いていた。小説の執筆はいつもいのちがけだけど、今回は人生で一番いのちがけだった。 * 6万字弱の長編を書くには、自分の記憶や傷や熱とひたすらに向き合わなければならなかった。 全時間軸の自分と話をした。いつの自分も、どの世界線を選んだ自分も、ちゃんと救われてほしかった。どうか届いてほしいと祈った。あのときの自分に、これからの自分に。 誰かの傘になれるような小説を、とずっと掲げてきたけれど、や

          8月のかけらたち

          8月も過ぎるのがはやかった。 今月も断片的にふりかえり。いつかの自分にあてた備忘録です。 某日-1 大人の写真部に参加。軽井沢と小諸へ撮影に行った。メンバーのなかにはお世話になっている人も、初めてお会いする人もいた。みんな大先輩だから、私なんかがいていいのかどきどきしていたけれど、カメラを持って街を歩いているうちに、そんな不安は消えた。楽しかった。夢中でシャッターを切っていた。 写真はおもしろい。撮るのも見るのもおもしろい。人によって、世界の切り取り方がちがう。何気ない一

          始業式の朝

          いつもより早く家を出たら、駅に小学生がたくさんいた。自由研究が入った紙袋、こんがりと日に焼けた笑顔。今日が始業式らしい。 久しぶりの登校を、見送りに来ているお母さんがいた。ランドセルをぽんとたたいて、いってらっしゃい、と手を振っていた。 登校班らしき数人のまとまりが、ホームで電車を待っていた。電車のドアが開くと、年長者の女の子が、黄色い帽子を被った一年生を先に電車に乗るよう促した。当たり前のように。静かに感銘を受けた。 彼女が振り向き、私まで譲るべきか逡巡する。どうぞ、の

          声が枯れるまで語る時間

          声が枯れるまで話をした。人生について。親愛なる友人と、大好きな街で。 大学4年間を過ごした街には至る所に思い出があり、そのひとつひとつについて語るだけで数時間が経ってしまう。なくなったお店も、新しいお店も、変わらないお店もあった。 あの頃に戻りたい、と悲観的になるのではなくて。未来志向の懐古は心にいい。こういう時間こそ人生だ、と思う。 話しながら気づいたり、気づきながら捉え直したり。声が枯れるまで話しても、まだ話したいと思った。大学生だった私たちもまぶしいけれど、今の私

          声が枯れるまで語る時間

          あの夏の余興

          久しぶりに、帰省した。 通勤に使う下り列車。片手には文庫本。車窓から見える夏が、鈍行のスピードで流れていく。 会社の最寄り駅を通り過ぎると、見慣れない景色に変わる。引っ越してきてから一度も、この駅より先まで乗ったことがなかった。 夏はいつもフィクションみたいだ、と思う。鮮やかな景色も、追憶を誘う匂いも。遠い昔の記憶。ひぐらしの声、線香と桃畑の匂い。 一度、高校の頃の最寄り駅で降りた。この駅には、私の大切な一部がある。いつも胸がぎゅうとする。大好きな場所。 あの頃、毎日こ

          7月のかけらたち

          追憶。あっ、と言うまもなく、と言うまもなく、終わった7月。あまりにも夏だった。夏はいつも短命だ。どうしようもなくまぶしくて、濃い影を残して去っていく。 これは7月の断片。断章。 *** ◯日 人生で経験できる夏には限りがある。ふっと気づいて、焦燥感に襲われた。私は夏が好きだ。いのちの気配が濃いところも、終わりの匂いが強いところも。どうしよう。また夏が去っていこうとしている。待って。私は夏が好きだ。好きだと言っても待ってくれない存在を、人は永遠と呼びます。 *** ◯日

          いつか、あの頃になる夏で

          夏。あまりにも夏。仰いだ空は高純度、木陰が誘う夕涼み。 海。森。光。地面にできる模様。砂の感触。土の感触。視界。私が切り取る世界。夏の匂いから逃れられない。透明な手が背中に触れる。夏。遠い昔の夏休み。塩素とプール、スイカと朝顔。 あの頃はよかった、と人は言う。私も言う。今日も、いつか、あの頃になる。 歩く。砂浜はさらさらしている。歩く。木立はしっとりしている。考える。考える考える考える。ときどき、書く。感じたことを、すべて言葉にはしない。だって。人生にも文章にも、行間が

          いつか、あの頃になる夏で