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冬色ショコラ

あの頃の私は少しだけ背伸びしていた。

いつもの待ち合わせのカフェであなたに合わせて本当は飲めないブラックコーヒーを口にして、渋くて美味しいなんて笑っていたんだ。

渋さを誤魔化す為に、甘すぎるガトーショコラを一緒に頼んで誤魔化していたのを覚えている。

無理してたんだなぁ…

私よりも大人で素敵なあなたに子どもだって思われたくなくて、色々と背伸びをしていたみたい。

服装も、会話も、必死にあなたに合わせて…

それでも、あなたはいつまで経っても、付き合おうとも、好きだとも言ってくれる事はなくて…

行き場のないあなたへの気持ちが溢れそうで、でも伝える勇気はなくて、私はドンドン追い詰められていった。

最初は、時間がある時にカフェで話したり、食事に連れて行ってもらえるだけで幸せで仕方なかったのに…

あなたに会う度に、もっとあなたのそばにいたい。

あなたの心が欲しいって、贅沢になって…

あなたとふたりで過ごす時間を楽しめなくなっていった。

私からあなたに飾らない本当の気持ちを伝えられたら良かったのに、拒否されるのが恐くて何も伝えられなくて…

追い詰められた私は、あなたの元から去るという選択肢を選んだ。

最後に会った時に、あなたの笑顔と大好きな声を忘れないように心に焼き付けたせいなのか

何年経っても、あなたの事が忘れられなくて…

ふたりが出逢って別れた冬になると今でも、渋い珈琲と甘いガトーショコラを注文してあの頃の想い出に浸るんだ。

あの時、勇気を出して自分の気持ちを伝えていたらふたりの未来は変わっていたのかな?

何て考えながら、渋い珈琲に砂糖とミルクを足した。

あなたに合わせて背伸びしていた私はもういない。

私は私らしく生きている。

あなたのいないこの街で…

あなたへの想いは未だに消えないけれど…

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