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AKIRA▶︎芸能山城組▶︎ハイパーソニックエフェクト

「奇跡」や「魔法」などの形容詞がよくつく音楽だが、根底には「物理」や「数学」のロジックがある。

例えば、どれだけいい楽器でいい演奏をしても、電圧が足りないとスピーカーから音は出ない。2013年に開催した野外RAVEでは、自前の発電機では電圧が足りず、「太陽建機レンタル」に工事現場サイズの発電機を借りに行きました。

▲設営中の2013年の野外RAVE

また、つい先日、大阪の海水浴場「二色浜」でDJをした時も、電源を借りた海の家の電圧が低くモニタースピーカーの音が出なくて苦労しました。

生前の大瀧詠一さん(はっぴいえんど)はスタジオのある福生市の電圧が低いことを嘆いていたらしいですが、最近の私も現場の電圧に一喜一憂しています。

余談ですが、プロ用の電源タップやケーブルを販売している秋葉原の「オヤイデ電気」さんは、「電源タップを変えればお米は美味しく炊けるのか?」などの実験をしています。料理も音楽も電圧次第なのかもしれません。


アニメ映画史上の金字塔、大友克洋監督の「AKIRA」の劇中音楽を担当した「芸能山城組」の組頭である「山城祥二」こと「大橋力」さんは、1990年代に「ハイパーソニックエフェクト」という現象を発見し、2000年に米国生理学学会で発表しました。

「ハイパーソニックエフェクト」とは「周波数が高すぎて音として聴こえない高複雑性超高周波(40kHz以上)を含む音」が人間の脳の最深部(中脳・視床・視床下部などの領域。以下、「基幹脳」)を活性化して惹き起こす現象とされています。

基幹脳が活性化すると、音楽を聴くときの「美しさや快さや感動」の発生をつかさどる脳の〈情動神経系〉の働きが活発になり、音楽が心を打つ効果と魅力が劇的に高まるらしいです。音楽を聞いて涙したり、鳥肌が立つ時は「ハイパーソニックエフェクト」が作用している可能性もあります。

2022年10月8日に「なかのZERO大ホール」で開催された「芸能山城組 AKIRA公演 逢燦杰極譚(アキラジェゴクダン)Ⅱ」を鑑賞しましたが、バリ島の巨竹打鳴アンサンブルの轟きを中心に声、鍵盤楽器、電子楽器を融合させたライブは今までの人生で一度も味わったことのない体験でした。

▲ 芸能山城組 AKIRA公演 逢燦杰極譚Ⅱ

▲芸能山城組の本部で叩かせて頂いたジェゴグ

「ハイパーソニックエフェクト」のような「超高周波」とは真逆の「超低周波」が人間を踊りに駆り立てるという研究結果もあります。

カナダで伝統的に医学と工学に強い大学として知られている、マックマスター大学のダニエル・キャメロン教授が2022年に学術雑誌「カレントバイオロジー」にて下記のような発表をしました。

電子音楽デュオ「Orphx」のライブコンサートにて、人間の耳には感知できない超低周波を発生できる強化スピーカーを設置し、45分間のコンサート中に、2分間隔で強化スピーカーのオンオフを繰り返しながら観客の動きをモニターしたところ、「超低周波が存在するときに踊る人の数が11.8%増えた」らしいです。

ハウスやテクノのDJの方なら、長いブレイク(間奏のようなもの)後の低音で踊り狂うお客さんはお馴染みだと思います。しかし、この実験で流れている超低周波は「知覚できない」、もとい「聞こえていない」はずなのに、踊る人が増えていることが興味深いです。

また、フランスの耳鼻咽喉科医で発明家だった「アルフレッド・A・トマティス」は、人間のDNAには落雷や地震、津波の地鳴りや猛獣のうめき声などの低周波が「生命を脅かす危険信号」として認識するようプログラムされていることを発見しました。

聞こえないはずの音(低周波)が人間を踊りに駆り立てたり、感知した瞬間にその場から逃がす(危険を避ける)ように、ホモ・サピエンスの時代から変わらないリズムが我々のDNAには刻まれているようです。

AKIRA 」も「米国生理学学会」も自分の生活には縁遠いと感じたかもしれませんが、新宿駅直結の複合施設「NEWoMan新宿」のBGMにはハイパーソニックエフェクトが取り入れられています。

「NEO-TOKYO」のリズムは案外近くに実装されているので、新宿に行かれる際はぜひ体感してみて下さい。

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