復讐の記憶(映画)

カナダ・ドイツ合作映画「手紙は覚えている」のリメイクを語っており、予告編だけでも分かるようにモチーフとした全くのオリジナル作品。

そして個人的に、リメイク元を遥かに超えた作品でした。

バディアクションとしての完成度が高くて、アクションシーンや逃亡劇に迫力があり、始終ハラハラしながら楽しんで見る事ができました。

主人公のピルジュはアルツハイマーを発症しているのですが、非常に頭がキレ、勘も鋭く、暗殺の手際の良さには思わず見とれてしまいます。
何か特殊な訓練でも受けてたの?昔、プロの殺し屋でもやってた?と言いたくなる。

最初の方でもサンタ姿になり、キレッキレのダンスを披露するのですが、普段の歩き方や姿勢なんかは老人らしい。
しかしトウジョウとのバトルシーンなどは、とても老人同士とは思えないド迫力です。あと、力も強いんですね…

そして80歳のピルジュと20代のインギュの友情が良い。この2人は元々が友人関係なのですが、ピルジュは父親のようでもあり、兄のようでもあり、悪友のようでもある。クソ客に復讐するシーンは痛快です。

ピルジュは子供の独立と、妻に先立たれた事から、長い間心に留めていた計画の実行を決意します。それは、日本統治下で起きた理不尽な出来事への復讐。

軍事侵略、強制労働、従軍慰安婦…これらを歯に衣着せぬ演出で糾弾。そして小物感溢れる日本の自衛隊。
こりゃ、日本の右翼激怒案件映画だ。よく上映できたな、シアターが右翼の妨害に遭わなくて良かった。

「ここまでやれるんだ!」と感動しました。よく「作品に政治思想を持ち込むな」との意見を聞きますし、韓国でもそういう意見はあるんじゃないかと思う。
そういう訳ですから、邦画では製作者側も政治思想になるべく触れぬよう、曖昧に作り逃げ道を作るものだという印象があるのですが、この映画はこうまではっきり言っちゃうんだ、と。観客に問いかけながらも、自身の意見もしっかり表明している。
日本での公開を決めた事もスゴイと思います。批判を覚悟して主張する勇気、あとそれだけ映画としての完成度に自信があったのかもしれない。

しかし私はこの映画から、日本という国への嫌悪といったものを感じませんでした。もっと広いというか…人を人とも思わぬ所業、そして傍観し被害者を見捨て、追い打ちをかける卑劣さへの怒りを強く感じます。

そしてピルジュによって裁かれる、親日家を標榜する韓国人たちは真実日本をリスペクトしているわけでなく、金銭的な損得からそうしているに過ぎない事が描かれています。
元国防長官は「我々の国は核兵器のおかげで復活した」と言いました。本当に親日家であるなら、こんな事を言うはずがありません。
もっと言えば、日本の犯した過去の過ちを正当化する事も無かったでしょう。

ラストはリメイク元と大きく異なり、20代のインギュにより希望のある終わり方でした。若い世代を鼓舞するような、そういう意味でもパワーのある映画です。

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