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ウェブトゥーンと紙の本ーー小川悠介著『漫画の未来』を読んで

 小川悠介著 光文社新書 2024年出版

 近所の本屋さんの新書のコーナーをぶらぶらしてたら、この本に出会った。最近、流行ってるマンガを読んでいて、いろいろ疑問に思ってたんだが、帯に書いてある「韓国・ウェブトゥーンの世界戦略とは?」という言葉を見て、この本読めばなにか開けるかもと思って、買って読んでみた。

 ウェブトゥーン、上下にスクロールできる画面にコマがあるらしい。というのも、すべて、コマが並んでいるという構図ではないらしい。上下にスクロールする流れに沿って、コマと吹き出しがうまく構成されているよう。そこが紙の本は、どちらかというと、コマを横に勧めていくとストーリーが展開していく、という感じだが、ウェブトゥーンは「スクロールできる」画面の上と下という流れが重要だということがまず初めに言える。

 紙の本になっているマンガは通常、めくり(読者に驚きを与えるコマ)右上と、引き(話の続きが気になるコマ)左下に位置するコマというふうに考えられるらしい。これは私なりの大きな発見で、紙とデジタル書籍の違いは何だろうとずっと考えていたのだが、その答えは、一枚づつ本のページを「めくる」動作とそこに流れる時間だと思っていた。それが、ウェブトゥーンだと、この「めくり」と「引き」という紙の本の重要性を先に語っておかないと、というのは当然なことで、そこが十分に議論されないから、ウェブトゥーンで売れたマンガが書籍化されたりするんだな、と思った。

 私は、ウェブトゥーンで売れたマンガは紙の本で書籍化できないと思った。

 そこから、このウェブトゥーンという媒体でどう売るか、というのがマーケット戦略で、韓国の企業は、「待てば無料」というシステムをとったらしい。どんどん読み進めていきたい読者の真理を考えて、ある一定の時期を待てば、無料という売り方をしたらしい。売り方というか、サブスクの仕方というか、顧客を長くつなぎ留めておく戦略といえる。こういう考え方って日本にはないから、おもしろいな、と思った。

 『ONE PIECE』初代編集者、浅田貴典さんは「キャラクターを魅力的に動かすという点ではタテもヨコも変わりはない」と語ったらしいが、紙媒体か、スマホか、は多分違う。キャラクターを「動かす」という考え方に、言葉が足りていない。こういう人って、マンガをアニメ化することとかどういう風に考えていたんだろう。

 LINEマンガと韓国のネイバーという会社は密接な関係にあるということを知ったんだが、多分、このマンガ市場はとても大きくなりそうなので、出版業界の人は、よく考えた方が良いと思う。


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