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消化できてない母の存在ーーヤマシタトモコ著『違国日記 1-9』を読んで

 ヤマシタトモコ著 祥伝社 2017年ー

 朝日新聞に著者の文章が載っていて、母が興味を持ってこのマンガを読んでみたいと私に言ってきたので、一巻だけ買ってみた。母は、よくわかんなかったといってギブアップしたが、私はとても気に入ったので、1巻から9巻までメルカリで購入して読んでみた。

 両親を事故で亡くした高校生が、小説家の独身のおばさんに引き取られて、共同生活をしていくお話。

 このマンガ家の人って、いわゆるBLマンガを描く人で有名なんだろうか。知ったこっちゃないが、すごくおもしろいマンガだった。なんというか、小説じゃないから「行間」とは言わないが、登場人物のセリフに余白があるというか。現実でこういう言葉を発する人っているかな、と考えてしまうんだけど、言葉のぶつかり合いみたいなやり取りの場面展開でもない。コマの割り方がなかなか工夫されているようにも感じたが、登場人物である高校生の女の子の吹き出しに書かれたセリフも、息づかいを感じるような臨場感があった。

 マンガをあんまり読んだことのない私の率直な感想は、この登場人物である叔母さんが一見、男性なんだか女性なんだか分からない。マキオさんという名前もアセクシャルだし、始めは混乱した。そして私は、ひょっとしてBL?と思ったんだが、よく分からないまま読み進めていった感想は、このマキオさんと高校生の女の子、朝の関係が、葛藤はあるんだが、対等な関係性を保っている、ということ。このマンガの中で何回も、その女子高生の死んだ母親、つまり叔母さんのお姉さんのことが出てくるんだが、その女性の存在が消化できてない。二人の共通点が母であり、姉である女性なのだが、二人とも、その女性を執拗にこだわっているというわけではないんだが、ただ単純に好きだった、というわけでもなく、突然不在になってしまったため、消化できなかったのだと私は解釈してる。だからそんな二人は、大人と大人になる一歩手前の女子高生という二人の関係が、ごく対等なんだと思う。

 途中で、じゃあ朝さんの父親はどういう人だったんだろう、と疑問に思ったが、彼の話が出てきたところらへんから、このマンガが一気につまらなくなって、父親という男の話は、とても簡単に描くことができて、とても平凡なんだな、と思ってしまった。9巻目はコマ割りが凝ってて、デザイン性のあるマンガ?とちょっと思ったが、結局、このマンガのストーリー全体が尻つぼみになっているように感じたが、残す二冊でどういう展開するんだろ。

 でも、こういうマンガってどういう終わり方がいいのか分からないよな。そんなの読者が決めることじゃないけど。そういう迷いを作家さんに感じた。



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