自給自足
都会を離れ、自給自足生活をすることにした。
畑を耕し、野菜を作り、鶏なんかも育てる。養蜂をはじめたっていい。
土地の候補を探し、仕事の合間に足を運び、住まいを決めた。
農協に人を紹介してもらい、働きながら学ぶ。
3年経った頃には、それなりに暮らしぶりが様になってきた。
二つの道の駅と契約したし、レストランからの取引の話もある。ご近所付き合いも良好だ。
だが畑は一人では管理ができなくなってきた。
人を入れた。
事務も一人雇った。
それでも日常の細々したことに手が足りなかったのでコンビニを建てることにした。
コンビニにはご飯がいつでもあるし、新聞、雑誌だってある。郵便ポストだってある。
朝どれの新鮮なおにぎり、ヤマザキあんぱん、ジュースに缶コーヒーにビール。
冬になれば温かいおでんや肉まんが自給自足で手に入る。
近所のおじいさんは、コンビニができて、煙草も買えるし、酒だって買えると喜んでいた。
暑い夏なんて、クーラーがあるから村人全員が集まってきたほどだ。
だが、コンビニにはないものがある。
ビックマックだ。
マクドナルドができると、5駅先の中高生たちが、片道二時間かけてやってくるようになった。
彼らを目当てに、クレープ屋と進学塾ができた。
バスの駅もできた。
暴走族がやってくるようになったとき、横浜に拠点を移した。
私の目的は自給自足だ。住みづらくなれば移ればいい。
選んだ仕事は清掃員だ。
鍬から除菌シートに扱う道具を変え、自給自足の再出発だ。
ビル清掃の資格も取った。
消防設備士の資格を取れば、給料は上がるか?
いや、それより料理をできるようにして家政士になった方がいいかもしれない。どうもそちらの方が自分に向いている気がする。
夢は広がるばかりだ。
仕事が終われば、ふらりと横浜中華街をおとずれ、朝どれとはいかないまでも、新鮮な中華料理に舌鼓をうつ。
最高の癒しである。
もちろんさほど儲からない。
だが、儲けて楽をするために自給自足をする者なんていないだろう。それについては覚悟の上だ。
こういう言い方は反感を覚える人もいるかも知れない。それでも、自給自足は人が人らしく生きれる一つの道のように思える。
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