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ドラマ「最後から二番目の恋」「続・最後から二番目の恋」〜あの頃の悲喜こもごも

最近までT○erで『最後から二番目の恋』が配信されていた。
もう10年前の作品なのかぁと思うと感慨深い。
お篭り期間で時間があったので観始めたら、早く全話観たくなってしまい、FO△で2012年秋スペシャルと『続・最後から二番目の恋』まで一気見してしまった。

このドラマはいろんな意味で、昔の自分に刺さるところが沢山あり、リアルタイムでも観てたけど、今見返してみても主人公・吉野千明(キョンキョン)と啓子(森口博子さん)と祥子(渡辺真起子さん)、45歳独身・女3人のセリフや心情などが、胸に刺さりまくりである。
女3人で飲みながら千明が、あたしって家族作らなかったんだなぁ…としみじみすると、3人で暮らそうよ!と慰めあったりするのだが、これ、私も女友達と、孤独死が怖いから年取ったら皆んなで同じアパートに住もうよ、とよく言いあったものだ。何かというと集まり、女だけでつるんでよく飲んだ。
元カレの名前を検索し合って、千明が、死んでた…とポツリ呟く場面は、そっそうだよね…この歳になるとそういう事もありうるよね…と、自分は元カレの名前を検索したりするのはやめとこうと思ったり。

千明はテレビ局勤務という設定だったが、私はWeb業界で長年働いていて、千明のように連日深夜までの勤務は当たり前で、まぁブラックだった。40近くにもなると体力的にもキツくなって、一人になるとよく、いつまで働けるかなぁ…と考えたりしていた。
しかし、頼れるのは自分のみで、誰かに頼ろうとも思ってなかった。
何だかんだ言っても今より自立してたし、何でも自分一人で決めてやる、一人でやるのが当たり前だった、あの頃ーーー。

男になんて負けない!と勝気でサバサバした性格で親分肌だけど、実は健気な千明と、生真面目で理屈っぽいけど心優しい長倉和平のキャスティングは、キョンキョンと中井貴一さんという組み合わせが当初意外だったけど、ドラマが始まってみると抜群の相性で、いつも終いには言い合いになってしまう二人の会話劇がとっても面白い。
ちょっと情けなくて滑稽で、女達に"丁度いい"と振り回される和平を演じている、中井貴一さんの大人の包容力とコメディセンスも炸裂している。
劇中、地蔵みたいと口々に言われていて笑ってしまったけど、中井さんは50代になってもシュッとしててダンディで素敵だ。

普段他の人には見せないような、素の自分を晒け出せる相手がいるっていいなと思う。ケンカ腰になると「なんっスか!」と、タバコをスパスパ吸いながらヤンキー口調になる千明に、和平が「アナタ(バイクで)峠でも目指すんですか!」とツッコみ入れたり。
「長年連れ添った夫婦みたいですね」と和平に言われて、まんざらでもなさそうな千明。恋愛になりそうでならない二人の関係が、心地よく見える。

この作品は恋愛ドラマというよりホームドラマの温かさがある。
長倉家には常に人が集まっていつも賑やか。
朝食には家族以外に千明も加わり、嫁に行った長女の典子までやってきて、毎朝ワイワイやってる。
長倉家のちょっとクセ強めの兄弟それぞれのキャラクターも際立っている。

引きこもり気味でオタクっぽくて不思議キャラの次女・万里子を演じた内田有紀さんは、最初誰か分からないくらい別人に見えるハマり具合で、こんな役も出来るんだなぁと感心した。

寂しそうな女性を見るとほっとけない、ワイルドなのに癒し系の次男・真平を演じた坂口憲二さんは、鎌倉の自宅で古民家カフェをやっている設定だった。
この家の内装がレトロな雰囲気で素敵なのだ。学生時代から鎌倉に足を伸ばすとよく訪ねた『ミルクホール』って言う大正浪漫なカフェを思い出す。調べたらまだあった!
坂口さんは芸能活動休止後はコーヒー焙煎士になっていた。趣味のサーフィンを愉しみながら、コーヒーの世界でセカンドキャリアを築いている姿は、この作品の頃よりさらに貫禄がついて渋く格好いい。
坂口さんを見ていると、同じくサーフィンが趣味だった春馬くんにもこんな人生があったんじゃないか…と、ついまた思ってしまう。

和平と親子でお見合いすることになる、母の大橋秀子(美保純さん)と娘の知美(佐津川愛美さん)もクセ強め。
佐津川さんは今回見返すまで出演してたの忘れてた。童顔でアニメ声を遺憾なく発揮した役でパッツン前髪も可愛い。そして若い。
キャストの中で、役の人物像も本人も一番ファンキーなのは、美保純さんだと思う 笑。美保さんは若い頃から、どっかつかみどころのない奔放な所がけっこう好き。

続編で千明の年下の元カレ涼太役で登場した加瀬亮さんは、頼りなくていかにもダメな感じがあまりにも自然すぎて、演じているように見えない 笑。
でも千明は今でも何だか未練がある感じだし、万里子にまで好かれてしまう。私には理解できない何か惹きつける魅力が、涼太にはあるのかもしれない。



あの頃、毎週のようにつるんでいたほとんどの友人達が今も独身で、私だけがこんな遠い国にいて、アンタがお母さんとか主婦とかやってるの未だに想像出来ない、と言われたりもするけど、もう昔の私はいない。
着古したスウェットのズボンに息子のお下がりのパーカー着て、1日中スッピンほぼ家で過ごし、家族にご飯作ったり洗濯したりしてる私は、息子が生まれてからはスニーカーばかりで、ヒールは疲れるし石畳の道にハマると怖いしで履かなくなった。
今はそれぞれ別の道を歩いている私達。
悲喜こもごもの懐かしいあの頃には、もう戻れない。

今の私はさしずめ、飯島直子さん演じる長倉家の長女・典子って感じ。
私はあそこまで開けっぴろげじゃないけど。典子と夫・広行の、しょっちゅうスッタモンダしても、破れ鍋に綴じ蓋で結局収まる関係も笑える。
クレイジーな程の放浪癖がある広行役の浅野和之さんも、トボけた演技がいい味出してる。


このドラマのタイトルが "最後の恋"じゃなくて、『最後から二番目の恋』っていうところが、とても良いさじ加減で物語を表していると思う。
岡田惠和さんの脚本は、会話とリアクションが絶妙な面白さ。
ちょっと切なく時に可笑しくホロ苦い大人の物語は、見終わったあと、心にほんのりと温かい余韻が残る。





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