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【画家・絵本作家の声】庄野ナホコさん『北極サーカス』『二番目の悪者』『せかいいちのいちご』原画展に寄せて

こんにちは。絵本美術館 森のおうちでは「たちどまって考えるお話 絵本原画展」を開催中です。
今回の展示では、イラストレーター・絵本作家の庄野ナホコさんの3作品の原画全展を展示しています。

今回は、庄野ナホコさんより、原画展によせてコメントをいただきました。
また、それぞれの作品についてもお話を伺ってみました。

原画展によせて~庄野ナホコ

絵本原画の全点の展示はなかなか難しいのですが、今回は3作品まとめて展示していただき、とてもありがたく思っています。
絵本は、読者の方に印刷されたものとして届きますので、原画に触れる機会はなかなかないのですが、こういった機会に是非原画をみていただけるとうれしいです。

庄野ナホコ

『北極サーカス』について【インタビュー】

 「ようこそ、北極サーカスへ!」ホッキョクオオカミの団長の口上ではじまったのは、ホッキョクグマの優美なアイスダンスに、ホッキョクウサギの炎の輪くぐり、ホッキョクギツネの空中ブランコ……氷にのってやってくる、まっしろい動物たちのサーカスは、不思議でゆかいで、なぜだかすこしかなしくて。夢みるようなサーカスの、すてきな時間。
 動物の擬人化と美しいしいファンタジー世界を描き出すことが得意な庄野ナホコが幻想的に描いた本作は、まるで、実在しそうで、実在しそうもない。人間でも動物でも関係ない。ファンタジーでありながら、地球そのものの美しさを表現しているような1冊

『北極サーカス』 庄野ナホコ/作 (講談社)

●創作のきっかけ
プロになる前に、作品を色々と描きためていたのですが、その中の一つです。
編集の方が、それを見て「描き直して本にしましょう」という事で、念願かなって本にすることができました。

●創作過程のエピソード
この絵本は、見開きだととても横長で、こういった超横長サイズは初めてでした。この特徴を生かしながら構図を作るとき、「距離というものを描けるな」と感じました。とても面白かったです。
特に表紙、トビラは、デザイナーの有山達也さんのアドバイスもあり、良いものになったと思います。

●作品への思い
長く温めていた作品を本として出すことができて、また絵や装丁なども納得のいくものができて、とても思い入れのある作品です。

●作品鑑賞の時に注目の点
最後の大技のシーンは見せ場なので、簡単ですが仕掛けとなっています。

●作品の特徴、技法など
絵は、水彩紙にアクリルグァッシュ、部分的に色鉛筆を使って描いています。
色は、混色をすると濁るのが好きではないので、ほぼ絵具そのままの色を使っています。アクリルグァッシュのマットな感じがとても好きです。
全体のカラーバランスでその絵の印象が決まると思っているので、小さなポイントでも結構悩みながら描いています。
動物は昔から好きで、モチーフとしてもよく使います。微妙な表情を出すことができればいいなと思い、一番力を入れている部分でもあります。

『二番目の悪者』について【インタビュー】

 金色のたてがみを持つ金ライオンは、一国の王になりたかった。自分こそが王にふさわしいと思っていた。ところが、街はずれに住む優しい銀のライオンが「次の王様候補」と噂に聞く。そこで金のライオンはとんでもないことを始めた――。登場するのは動物ばかり。人間はひとりも出てきません。
しかし、1ページ目はこの言葉から始まります。
「これが全て作り話だと言い切れるだろうか」
 人気絵本作家・林木林と、動物の擬人化で独特の世界観を描き出す実力派イラストレーター・庄野ナホコがタッグを組んだ寓話といえる第1弾作品。

『二番目の悪者』 林 木林/作 庄野ナホコ/絵 (小さい書房)

●創作のきっかけ
版元の小さい書房さんからご依頼があっ て、絵を描くことになりました。
二番目の悪者は、絵本の挿絵担当としては初めての仕事でしたのでドキドキでした。

●創作過程のエピソード
町が破滅していく絵を考えるとき、普通に崩壊した町の絵をリアルに描いてもつまらないなと悩みました。それで砂時計の中を落ちる砂の絵を象徴的に使おうと思いつきまして、描いてみました。自分では気に入っているページです。

●作品への思い
判型は小さいながらも、絵を沢山描く必要があり、初めての絵本の挿絵でもあり、とても大変でした。真っ赤な美しい本にしていただいて(装丁bookwall 松昭教さん)本当にうれしかったです。

●作品鑑賞の時に注目の点
金のライオン、銀のライオンはじめ、たくさんの動物が出てきます。
性格の違いや、表情など見て頂ければうれしいです。


『せかいいちのいちご』について【インタビュー】

 ある日、シロクマのところに「いちご おとどけいたします。」と手紙が届きます。そして、届いたひとつぶのいちご。シロクマは「いとしの ひとつぶちゃん」と語りかけ、宝物のように扱います。次の冬、今度は2つぶいつごが届きました。その次の年はもっとたくさん。年々その数は増え…。
 “いちご”や“しろくま”など可愛いモチーフを使いながらも、「増えると減る」をテーマに、読み手に自身の日常に潜む感覚の麻痺を問いかける奥深い内容の物語。
 林木林×庄野ナホコの寓話作品、第2弾。

『せかいいちのいちご』 林 木林/作 庄野ナホコ/絵 (小さい書房)

●創作過程のエピソード
この本の絵を描くときに、最初にテーマカラーとして「いちご」のピンク色がいいのではないかと思い、ピンクをキーカラーとして描きました。表紙もデザイナーの鈴木さんがピンク主体のとても可愛い表紙にデザインしてくださいました。

●作品への思い
大好きなホッキョクグマを思う存分描けました!本のデザインや本文フォント (装丁 鈴木千佳子さん)もとても凝っていて美しいです。

●作品鑑賞の時に注目の点
年々送られてくるいちごの数が増えるシーン(3場面あります)で、背景のグレーを少しずつ濃くしていきました。シロクマの心の変化を色で表してみようと思ったので。


「たちどまって考えるお話 絵本原画展」

この企画展では、今回、ご紹介した絵本3作品と、しおたにまみこさんの『たまごのはなし』(ブロンズ新社)、計4作品の全点の原画を展示しています。
絵本はもちろん魅力的ですが、迫力の原画を、ぜひこの機会に御覧下さい。

2022年4月15日(金)~2022年7月5日(火)
【展示作品】
『二番目の悪者』 林 木林/作 庄野ナホコ/絵 (小さい書房)
『せかいいちのいちご』 林 木林/作 庄野ナホコ/絵 (小さい書房)
『北極サーカス』 庄野ナホコ/作 (講談社)
『たまごのはなし』 しおたに まみこ/作 (ブロンズ新社)

絵本美術館&コテージ 森のおうち
開館時間●9:30~17:00(最終入館は閉館30分前まで、最終日15:30閉館)
休館日●木曜(G.W.期間中は無休、祝日振り替え有り)
入館料●大人800円 小・中学生500円 3歳以上250円 3歳未満無料
〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明2215-9
TEL 0263-83-5670 FAX0263-83-5885


学芸員 米山裕美


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