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ルノアール喫茶室が恋しい。

東京にいくと必ず訪れる場所がある。それはルノアール喫茶室だ。
店の佇まい、控えめなクラシック音楽、そしてレトロな雰囲気がたまらない。
もちろんレトロな喫茶店は他にもたくさんあるし、なんならスターバックスでも読書は捗るのだが、ルノアールに行かないと、旅が、しまらないのだ。東京に行った感じがしない、というのは言い過ぎではないのだ、僕にとって。
ルノアールを知ったのはたしか、東畑開人さんのエッセイだった。
それから東京にいくたびにせっせと足を運ぶようになった。混んでるけど、落ち着く。チェーン店だからこその安心感というのもあるのかもしれない。珈琲の味はめちゃくちゃ美味しいのか、と言われると、正直に申し上げると普通だ。
近所にある珈琲屋のほうが味はうまい。でもルノアールに惹かれる。なぜだろうか。
まず挙げられるのはセーブポイントとしての存在である。東京にいくと、いろんな本屋を巡るので、へろへろになる。休憩したい、そうするとだいたいルノアールが近くにある。新しい店を開拓するのも楽しいのだが、HPが減った状態で新しいダンジョンに挑むのは大変危険な行為である。何も考えずにセーブできる安心感を与えてくれるのは、冒険には欠かせない。
買った本をパラパラ読んで、店内の音楽をゆっくりと聴いて、そんな時間が何より大切なのだ。
再来週には東京にいるはずなので、おそらくルノアールにも立ち寄るだろう。(おそらくではなく、確実に)
次に考えられるのは、知らない土地に知っている場所が存在することの重要性である。
東京では僕は完全なる他所ものである。何かの拍子に曲者だ!と迫害される危険性もあるかもしれない。
僕は東京の人間に擬態し、颯爽とルノアールの扉を開く。
とはいえ東京には魅力的な珈琲屋がたくさんある。そろそろ開拓しても良いからなのかもしれない、もちろんルノアールを挟みながら。

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