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子どもも大人も育ちあうところ

チューリップと女の子

寒い冬のあいだ中、土の中でじっとその時を待っていたチューリップたちが色とりどりに咲き乱れ、桜の蕾がほころびはじめる季節。
うららかな春の訪れに心がはずむ一方で、言いあらわせないさみしさも胸に去来します。
そう、春は保育園にとっては卒園シーズン。
子どもたちの巣立ちの季節です。

晴れの日も雨の日も、暑いときも寒いときも、
毎日一緒にすごしてきた子どもたちを見送るのはとても切ないのですが、
同時にとても大切なことを思い出させてもくれます。

それは、わたしたち保育者が子どもたちを育てているようで、実は私たちが子どもたちに育てられているのだということ。
保育園は、子どもも大人も育ちあうところなのだということです。


入園したばかりのころは、歩くこともままならずミルクを飲んで泣いて寝ての赤ちゃんだった子どもたち。

ひとつずつできることが増え、ときに壁にぶつかり、挑戦をくりかえしながらまたひとつできることを積みかさねていく。
自分の欲求や快不快を伝えるばかりだったのが、いつのまにか思いやりや優しさを見せ、心に他人を住まわせ始めていく。
世界への好奇心にあふれ、目に映るすべてを新鮮にとらえて喜びをはじけさせる。

そんな日々成長していく子どもたちの姿は、わたしたちについ忘れてしまいがちな多くのことを教えてくれるのです。

なんでもないことのように思える成長が、実は奇跡のような瞬間瞬間のつみかさねであること。

身体と心の発達がみごとに絡まりあい関係していく、その設計の神秘。

わたしたち大人があたりまえにしてしまっていたこの世界の美しさ。

生命の尊さや神秘性をこれほど鮮やかに感じさせてくれる仕事は、ほかにないのではと思ってしまいます。
子どもたちと成長や発達の悩み苦しみ、喜びを共有し、子どもたちと一緒に日々新鮮なまなざしで世界を見つめられる。保育者には年齢不詳の若々しい方が多いのですが(笑)、だからこそなのかもしれません。

飛ぶ綿毛


こうして子どもたちを新たなステージに送り出すこの季節。
一人ひとりのこれまでの歩みを思い返します。
だれひとりとして同じ子はいません。

それぞれにちがう魂、感情、体をもった子どもたちと、一人ひとり真剣に向き合い、悩みぬき、かかわりあうことで、わたしたち大人も新たな気付きを得、新たな視点で世界と向き合わせてもらい、人間としての深みを増していけるのだと改めて実感することができるのです。

わたしが保育の師と仰いでいる方が、お会いするたびにおっしゃる言葉があります。
「 人間の成長は、人との出会い。」

その言葉の意味を噛みしめながら、
出会ってくれた子どもたちに心からの感謝と愛と祈りを送ります。
巣立っていく子どもたちの次なる出会いが、また彼らにとって輝かしい未来につながるものであるように願います。

そしてまた新たに入園してくる子どもたちにとって、わたしたちとの出会いが素晴らしい成長への新たな一歩となるように、ともにすごす時間がしあわせな育ちあいの時間となるように、わたしたちも前を向くのです。


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