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15、解剖(前編)そこで刑事が見るもの、聞く音、感じる匂いとは

↓誰でも一度は目にしたことあるこういう報道

殺人や傷害致死、死亡ひき逃げなど、事件性のある死体が発見されると、警察は被害者を解剖によって調べます

報道ではたったの一文で終わってしまうこの「解剖」

しかし実際警察の現場では、ものすごい時間と労力が費やされる仕事です

解剖を一体やるともうヘトヘトです

この解剖の現場で刑事課員たちは何をして、どんなことを思っているのか、それを明らかにしていきます

これはかなり長くなりそうなので、前編と後編で分けます

前編は解剖の一般的な話や、解剖はその準備だけでもどれだけ大変かといった内容です

後編では、私が実際に解剖の現場で見たこと聞いた音、匂い、地獄のシャワーの話など。

解剖とは何か

①検視と何が違うのか

まず解剖とは何か

これまでの記事で何度も出てきたのが「検視(けんし)」です

解剖も検視も、どちらも死因や死亡推定時刻などを調べるという点は同じです

何がちがうのかというと、

検視は外側から見たり触ったりできる範囲だけ

なのに対して

解剖は、身体を切り開いて脳みその中や臓器の中まで調べる

という点です。

体の内部の出血状態や、内臓の損傷具合までわかります。

凶器で刺された場合、内臓のどの部分まで何センチ到達していたのか、までわかるわけです

詳細な情報がわかるのはもちろん解剖の方です

ただ、手間や労力が検視よりも解剖の方が5倍以上大変です


順序としては先に検視をします。

検視で、殺害やひき逃げによって死亡した疑いがあったり(事件性がある)、逆の言い方をすれば事件性がないことがはっきりしない場合、解剖に回してさらに詳細に調べることになります。

解剖すると驚くほど詳細な情報がわかります

ある交通鑑識の人が言っていました

「道路で2台の車に轢かれて亡くなった人がいた場合、解剖するとどっちの車が致命傷になったかわかる」

それくらい解剖というのはものすごい情報が得られるのです。

死者が残したメッセージや情報を一滴も残さず汲み取るのが解剖の目的です

すべての変死が解剖されるわけではない

解剖に回されるのは、事件性がある死体、または事件性がないことが特定できない死体だけです。

検視の段階で「事件性なし」と特定された死体はわざわざ解剖しません
私が勤務していた時のざっくりな感覚でいえば、解剖まで回される死体は30体に一体くらいでしょうか


②解剖をするのは警察ではない

「警察は遺体を解剖して死因などの特定・・」などと言われますが、実際に体を切り開いて解剖するのは警察官ではありません

医師です。

警察と専属契約をしている嘱託医がやります

私の勤務していた都道府県警では、どでかい大学病院の教授をしている医師でした。

解剖をする場所も警察署などの警察施設ではなく、大学病院です

我々刑事課員が死体をそこまで搬送していって、そこで医師たちにやってもらいます

一般の患者として治療で大学病院を訪れる人は知ることはありませんが、大学病院の片隅には解剖室という何百体もの遺体が解剖されてきた部屋があるのです。


解剖室の様子

解剖を行う解剖室はどんな部屋か

広さは、
私が女性とラブホテルで部屋を選ぶ際
「一番高い部屋は支払いきついけど、一番安い部屋を選んだらカッコ悪いし、パネルの真ん中あたりの部屋にしておこう」と選ぶ部屋の広さです

まず真ん中にどでかいテーブルのような台があって、そこに遺体を置いて解剖します
手術室の手術台みたいなイメージですが、大きくちがうのは大きさと素材
手術台よりも大きい
真ん中に人を置いて左右に寝返りできるくらいの大きさ
解剖中は死体の向きを変えたり裏返したりするためです
表面の素材は、手術台のようにクッション性のあるものではなくキッチンのシンクに使われてるような、スチール?ですね


生きてる人間が数時間寝かされたら冷たくて硬くて苦痛な素材です

しかし解剖する相手は亡くなっており、解剖してると血液やら体液が大量に出るので、こういう大きさや素材になってます

これを取り囲むように、壁際にはいろいろ必要な器具が置かれています

保存液の入った大きな瓶
電ノコ
記録係が使うパソコンとデスクなどもあります

床は最後水で流して洗うため、プールサイドのやうな素材の床で、排水口がいくつかありました。

殺風景で冷たい空気を感じるような部屋でした


医師チームの人数と雰囲気

解剖をする医師は一人ではありません。

一人の人間の全身を切り開いて調べる仕事です。一人でできる作業量ではありません

まず執刀医と言われる教授クラスの代表者がいます

その他に医大生が数人います
いつも3人くらいいました
なぜか女性が多かったです
20歳くらいの若くてかわいい女子大生たちでした

医大生にとってはこれも大切な学習の場です

見学や助手だけでなく、教授の指示に従って実際にどんどんやっていきます

教授「ここからこの角度で切り開いていって」などと指示します

若くてかわいい女子医大生が
「あ❤️間違えちゃったー」
「せんせー、難しいでーす❤️」

なとどキャッキャっしながら、でもやっていることは死体を切り開いているという、こんな光景が見られるのは解剖室だけです

医師たちとはまったく異なる警察側の空気

我々警察も大人数になります

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最初のnoteにタイトル一覧を載せてあります。 1、記念すべき1体目は飛び散った肉片 2、死体なのに体内から音が。その音の正体は 3、初めての腐乱死体。腐乱死体とはどんな死体なのか 4、自殺と断定するには謎が残った白骨死体 6、一家全焼火災の焼死体と怪奇電話 11、傷害致死。飛び散った血痕のDNA結果はまさかの 15、解剖。そこで刑事が見るもの、聞く音、感じる匂い。 など。 15本は現時点ですでに決定しているnote。今後追加する場合もあり。 一度購入してもらえれば、すべてのnoteが読めます。

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