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『HADO』という競技のUI/UXデザインの難しさ [後編]

さて、前回に引き続き、私が『HADO』という新しい競技のUI/UXを考える上で苦労した点や気をつけた点について書いていきます。

前編ではどちらかというとUIの話でした。
後編では引き続きUIの話と、もう少しUXよりの話をしていこうと思います。

前編をお読みでない方はまずはこちらをご覧ください。

情報過多を防ぐために

HADO自体のルールは比較的シンプルです。
エナジーボールとシールドを駆使して相手の身体の前に表示されている4つのライフすべてを壊すと1点。
80秒間の時間内でどれだけ点をとれるかを競うというルールです。

ただ、実際には弾を撃つにはガッツポーズの姿勢をとってチャージしなければいけなかったり、シールドを使うにもチャージが必要かつ3回までという使用制限があります。
ライフをすべて壊されるとK.O.状態になるのですが、復活まで3秒間かかります。

それらの様々な情報をプレイヤーは把握してプレイをしなくてはなりません。
しかもヘッドマウントディスプレイを被りながらという不慣れな非日常の中で。

そのためにUIを極力シンプルにするのは当然ですが、さらに下記の事を意識しています。

・必要な時に必要な情報を出す
・情報の重要性に格差をつける

ここからは、HADOプレイヤーのKODAI選手がTweetしてくれた一人称視点の映像を見ながらだとイメージつきやすいと思います。

まず、「必要な時に必要な情報を出す」という部分ですが、例えばシールドのチャージです(動画の7秒目)。

エナジーボールは使う頻度が高く、チャージした値は撃つまで減らず溜めておくことができます。
なので、チャージゲージは大きく常に表示させ、見たい時に見られるようにしています。

一方、シールドのチャージゲージは、シールドを使いたいと思った時に0からゲージを溜めてMAXになったらすぐに使うというものです。
また、頻度も1試合中最大3回しか使えません。

そのため、シールドを使いたいと思った時にゲージを表示させてあげれば十分です。
下記のようにシールドのチャージの動作をした時だけ、照準の周りに円ゲージを出すようにしました。視線も正面から外さなくていいですし、シールドを使わないときは一切表示されないのでシンプルです。

次に「情報の重要性に格差をつける」という点です。
これは、非常に多くの情報がある中で、「絶対に伝えないといけない情報(勝敗に関わるもの)」と「知っていれば有利になる程度の情報」でちゃんと格差をつけて表示してあげましょう、という事です。

極論、「知っていれば有利になる程度の情報」は素人は気づかなくてよいと思ってます。
例えば、シールドの耐久度などです。

これ、流石にわかりにくいとは思ってますが、シールドの両サイドに縦のゲージがありまして、それがシールドの耐久度になっています。

こんな情報は初めてHADOをプレイした人には過剰な情報です。
なので気づかなくても問題ありません。逆に主張しすぎると情報過多になり、ついていけなくなってしまいます。

一方、弾を当てて相手のライフを壊した時などは勝敗に関わる大事な出来事です。
また、4つあるライフをいくつ壊したのか、4つ全部壊して1点とったのか。そういった情報も同時に理解させてあげる必要があります。

今のUIでは、ライフを壊した時、ライフ1つにつき「HIT」という文字を表示し、4つすべて壊して1点が入るときに「K.O.!」という文字を表示しています。

それにより、ひと目でいくつのライフを壊したのか、はたまた全て壊して1点入ったのか(K.O.したのか)がわかります。
上の例ではライフ4つを一気に壊したので「HIT」が4つ同時にでてから「K.O.!」がでています。

開発当初は、リアルさを追求していて、文字ではなく爆発エフェクトで表現させようとしていました。
ただ、これは確実に伝えなければいけない情報のため、リアルさよりも伝達性をとりこのような形にしています。

設計時はどうしてもすべての情報を伝えなくてはいけないという頭になりがちですが、きちんと情報を出すタイミングを見極めるというのと、情報に序列をつけて表示させるものを絞るというのが、新しい体験をさせる上では特に重要です。

リアリティとわかりやすさの両立

先程の「HIT」の文字に関してもそうなのですが、リアリティを追求し過ぎると、どんどんわかりにくいコンテンツになっていきます。

例えば、エナジーボールの形状ですが、下記の火の玉のようにオーラのようなものを纏わせたほうがカッコいいしリアリティがあります。

ただ、これでは当たり判定が真ん中の白いところなのか、外側のゆらゆらしているオレンジの部分なのかがわかりにくいです。

HADOの場合は競技なので当たり判定のわかりやすさは非常に重要な要素です。
そのため、当たり判定が最もわかりやすいよう球体のフチを強調したデザインにし、その形状にあわせて違和感がないようエナジーボールという名称にしています。

また、そのエナジーボールには影を落としています
本来であれば、エネルギー体であるエナジーボールには黒い影はでません。
リアリティを追求すると黒い影は不適切で、うっすらと地面に光が反射する感じだと思います。

ただ、実際は黒い影を落とすほうがリアリティが増します

下記の絵のように同じ丸だとしても影をつけるだけで空間ができ、丸が球体であることがわかり、位置関係がわかります。

参照:http://egokororoman.com/rittai-technic/

人は影があることで物体がそこにあるという事を認識しています。
エナジーボールにも影をつけることでフィールドのどこにあるのかが直感的に理解できるのです。
意外にも黒い影がでるという事に違和感を感じる人はほとんどいません

技術があればあるほどリアリティを追求してしまいます。
ただ、場合によってはそれがわかりやすさを阻害するという事も頭に入れておくことが重要です。

体験をデザインする

最後におまけ的ですが、よりUXっぽい話。

デザインの力でできる事はなにも見た目のクオリティやわかりやすさだけではありません。
HADOをプレイすることでどういう感情になってもらうかという「体験のデザイン」も重要です。

例えばHADOは最先端のテクノスポーツです。
HADOをプレイする人には、最先端のコトをやっている最先端な自分はカッコいいという感情になってほしいです。

そのために、ヘッドマウントディスプレイをかぶるという行為が一役買っていますし、アームセンサーを腕に装備して画面を操作しパラメータを設定するという一連の動作も、未来感を感じる行為です。

また、HADOは3対3で行うチームスポーツです。
チームメンバーと協力して勝利し、ハイタッチをして喜ぶという体験はチームスポーツの醍醐味です。

その体験をしてもらうためには、事前にチームで作戦をたてるという準備期間が重要です。しっかりと準備をした結果に勝利を勝ち取らないとハイタッチまではいきつきません。

アームセンサーのパラメータ設定というのは、作戦を立てる絶好の口実ですし、お互いが設定したパラメータを腕を突き合わせて見せ合うというコミュニケーションツールにもなりえます。

ただパラメータを設定するだけならアームセンサーなど使わなくても可能です。
でも、アームセンサーを使って自分で設定させる事で、プレイヤーの体験、すなわち感情が変わってきます

HADOのような体験型コンテンツには、このような体験のデザインが非常に重要です。
これからのデザイナーにはよりコンテンツの深い部分にも関与し、見た目だけではなく、体験のデザイン(=感情のデザイン)をしてもらいたいと思います。

最後に

テクノスポーツという新しい文化を世界中に根付かせるためには、様々な人の感情を激しく揺り動かす凄まじい体験が必要です。
それは、プレイヤーにとっても、観客や視聴者にとってもです。

そのような体験をさせるには、デザインの力が不可欠です。
どんなに素晴らしい技術やアイデアでも実際に使える状態にするにはデザインが必ず介入します

これを読んでくれたデザイナーの方には、是非このテクノスポーツという新しい文化のデザインにも注目してくれると嬉しいです。
そして、興味を持ってくれたら是非一緒になにかやりましょう。TwitterのDMでもください。

と、長々書きましたがここまで読んでくれてありがとうございます。
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そして、是非5/11(土)の「HADO SPRING CUP」にも遊びに来て下さい。
まだまだ発展途上のスポーツ大会です。自分ならこういうデザインするなぁ、とかを自分の目や耳で感じて、是非ともフィードバックしてください!
お待ちしています!

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