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アトツギの挑戦#3「Re:BORNし続ける創業98年の精肉店 加工品製造、その先へ」

新規事業や組織改革に取り組む筑後地区のアトツギ経営者にフォーカスする「ネクストリーダーズ」第3回は、久留米市役所近くの「あきない通り」にある精肉店の挑戦です。


https://uoq.jp/(魚久精肉総本店)

「朝早いし、きついし。本当に、肉屋にはなりたくなかった・・・」

新規事業アイデアを競うピッチイベント「アトツギ甲子園」でファイナリストに選ばれたこともある中村拓也さん。
100年続く魚久精肉総本店(久留米市中央町)の4代目だが、彼の口から聞かれたのは意外な言葉だった。

大学卒業後はダンボールを製造する会社に入った。先代からも事業継承を求められることはなかったと話すが、2017年に自らの意志で家業に入った。

中村さん
「肉屋として地域貢献したい、生産者支援がしたいという二つの想いがあった」

ダンボールメーカー時代に様々な生産者の苦労を見聞きしてきた経験から、「肉屋として安定的に食品が供給できる仕組みを作り、生産者を支えたい」と考えたのだ。

継承から7年目を迎えた今は「誰もが精肉店で働きたいと思えるような、魅力的な仕事にしていきたい」と意気込んでいる。

【これまでの主な取り組み】

2017年 家業「魚久精肉総本店」に入る
2019年 設備投資して、新たに加工品の製造を始める
2021年 店舗を改装 ホットドッグの店頭販売をスタート
2022年 第2回アトツギ甲子園で全国大会へ進出 
    「Re:BORNプロジェクト」始動
2024年 来客用の駐車場を整備する

様々な改革は数字にも結び付き、店の売上は中村さんが入る前の1,5倍ほどに伸びた。

(改装後、明るくなった店内)

自店の強みを創るための「設備投資」


まず中村さんが取り組んだのは加工品の製造だった。創業以来、精肉事業だけを続けてきた魚久精肉総本店だったが、このままでは将来がないと考えたのだ。

中村さん
「加工品であれば付加価値を付けて販売できるので、利益改善が見込めると思いました。周囲から『絵に描いたことが上手くいくわけない』と否定もされましたが、『自費で設備を買う』と言って押し通しました。結局は資金を出してくれましたが」

2年後の2021年には、お店の知名度を一気に引き上げる看板商品もできた。

UOQDOG (ウオキュードッグ) 25cm超のウインナーは九州産豚肉を100%使用

まちの肉屋を守りたい・・・加工品製造は次のステージへ


加工品で収益構造の改善を図っていたさなか、新型コロナウイルスが流行した。
飲食店の時短営業や外食を控える動きが広がったことを受け、多くの精肉店でフードロスが生まれ、廃業に追い込まれる店もあった。

そんな中、自店の生き残りだけでなく、魚久と同じような”まちの肉屋さん”支援につながる取り組みを考え出した。

それが、肉屋支援プラットフォーム「Re:BORN」
他店で持て余した肉の端材を加工する。希望があれば自社ECサイトに出品し、販売支援を行う事業だ。自社の加工設備を他の精肉店の売り上げアップにも繋げたいと考えた。

小規模な店を支援するため、小ロット(2kg)からでも請け負うことにした。(大手は100kg前後から請け負うところが多い)

中村さん
「高齢社会の中で、家の近くのお店が必要とされる時代がまた来ると思う。だから、近所にあるまちのお肉屋さんを残していくことが、その地域に住みたい人を増やすことにつながると思っています。その支援を、同じ肉屋だからこそやっていきたい」

中村さんのRe:BORNプロジェクトは2年前のアトツギ甲子園でも高く評価され、ファイナリストとして全国大会で発表する機会も得た。

Re:BORNの現在地と今後の展望


Re:BORNのプロジェクトにはこれまでに10件近い依頼があった。
今後は中村さんが広報や営業活動に注力し、さらに受注を増やしていきたい考えだ。

中村さん
「人手不足が一番の課題なので、私がいなくても店が回るよう組織化を進めていきたい」


中村さんは、店舗改装の際に加工場を敢えて外から見えるようにした。
「安心の見える化」と呼んでいる。さらに、地域のイベントにも積極的に参加し、開かれた精肉店、地元で長く愛される精肉店を目指す。

中村さん
「最終的には、うちのような拠点が各地ででき、エリア内の精肉店が強みを共有していくというのがRe:BORNの未来。共感してくれるような肉屋さんが生まれてくれると嬉しいです」


モトムットは筑後地区で新しいチャレンジを続ける事業者を応援しています。


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