見出し画像

NMNの効果⑥ NMNサプリ開発までの流れ

若返りのサプリメントとして有名なNMNですが、NMNに関する各種論文を読むと若返り効果が得られたという発見に至るまでの流れが興味深いものだったので、ここで紹介させていただきます。

10年以上前に生物を少し学んだことのある人であれば、老化のメカニズムにDNAの末端にあるテロメア領域が関わっているという話を聞いたことがあると思います。そして年を重ねるとテロメアが短くなるので”テロメアを短くしないことが老化の防止に効果的なのではないか”という話がありました。

しかし、その研究の方向性を大きく変えるきっかけとなったのは1993年に発表された”遺伝子の制御にはDNAのアセチル化とDNAの構造が関係している”という論文が大きな貢献をしているのではないかと思います。

そして、DNAの構造変化と老化の関係を結び付けたのが1997年に発表された論文で、老化の真の原因はDNAの配列や長さの変化ではなく、DNAにくっつく分子やDNAの構造の変化が影響しているのではないか、という報告でした。

この論文を発表したのは、日本でも発売された、”LIFESPAN 老いなき世界”という本の著者であるハーバード大学のシンクレア教授で、この論文は有名な科学雑誌ScienceとCellに掲載されました。

”LIFESPAN 老いなき世界”という本を読むと、老化研究とNMN開発の中心人物はシンクレア教授と思ってしまいますが、実は著書にも紹介されている日本時の今井教授の研究も多大な貢献をされています

今井教授とシンクレア教授はもともとMITでと老化研究の権威と言われるガレンテ教授のもとで研究をしていました。

1997年にガレンテ教授とシンクレア教授が共著で、老化の原因はDNAの構造にあるということを突き止めSienceに論文を掲載した後、2000年にはガレンテ教授と今井教授の共著で老化に関係するサーチュイン遺伝子はNADという物質が関与していることを発見し、これも有名な科学雑誌であるNatureに掲載されました。

この二人が同じ研究室で研究を進めれば、ものすごい成果がでていたかもしれませんが、その後シンクレア教授と今井教授はその後別々の研究室へ移り研究を進めます。

NMNがサプリメントとして着目されるまで、この今井教授の発見から10年の月日がかかりました。

シンクレア教授はその後もSienceやNatureといった超有名雑誌に何度も論文が掲載され、科学者としての頂点を極めたような存在になります。

一方今井教授は、日本人らしく地道な基礎研究をつき進めます。今井教授はサーチュイン遺伝子を活性化するNADという物質がどのような働きをしてどのように制御されるかというような研究を続け、のちに”NAD WORLD”という論文を発表するほどNADの研究を進めてNADがインスリンの分泌や脂肪の代謝、記憶機能への作用など体内の重要な活動に影響していることを明らかにしました。

シンクレア教授はその後、若返り遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化するようなスーパー成分の探索を進めます。

そして1万4千以上の成分についてサーチュイン遺伝子を活性化するかどうか調べ、天然の物質でやっと一つその成分を見つけることができました。

それが、ワインに含まれるレスベラトロールという物質で、以前から抗酸化作用のある物質として着目されていましたが、サーチュイン遺伝子を活性化することで再び脚光を浴びました。

しかし、手当たり次第探す方法ではやはり限界があったようで、天然の物質でレスベラトロールを超えあるスーパー成分は発見できませんでした。

その一方で今井教授のNAD研究は着実に進み、NADの生成に関与するNMNと出会うことになります。

2010年今井教授の発表した論文では”NMNなどを用いてNADの合成を増やせば若返り遺伝子が活性化するのではないかという”発表を行い、2011年には今井教授と同じ研究室の吉野教授が発表した論文で初めてNMNの摂取でNADを増やし、サーチュイン遺伝子を活性化するサプリメントとして使えるのではないかということが予測され始めました。

その後、NMNを用いたマウスの実験が多く行われ、インスリンの生成や脂肪の代謝、骨格筋への影響、記憶との関与等多くの成果を上げたことで、人でも効果が期待されサプリメントとして発売されるようになりました。


これまでNMNの開発に至るまでの流れを調べて、シンクレア教授の論文はSienceやNatureといった名だたる論文に何度も掲載され華やかな道を歩み、今井教授は何度も有名雑誌に掲載されるほどではありませんが、NADの重要性に気づき地道な基礎研究を続けてたという印象を持ちました。

シンクレア教授と今井教授が共著で書いた論文はほとんど無く、二人が共に研究してればより早く大きな成果が見られたのではないかと感じます。


※下記の参考文献を基に調べた内容を記載していますが、より重要な論文やもっと貢献した人がいる、など調べきれていない内容のある場合はご容赦ください。

参考文献

1.The NAD World: a new systemic regulatory network for metabolism and aging--Sirt1, systemic NAD biosynthesis, and their importance. Cell Biochem Biophys. 2009

2.Transcriptional silencing in yeast is associated with reduced nucleosome acetylation. Genes Dev. 1993

3.Accelerated aging and nucleolar fragmentation in yeast sgs1 mutants. Science. 1997

4.Molecular Biology of Aging. Cell. 1999

5.Nampt/PBEF/visfatin regulates insulin secretion in β cells as a systemic NAD biosynthetic enzyme. Cell Metab. 2007

6.Nicotinamide and PNC1 govern lifespan extension by calorie restriction in Saccharomyces cerevisiae. Nature. 2003

7.A possibility of nutriceuticals as an anti-aging intervention activation of sirtuins by promoting mammalian NAD biosynthesis. Pharmacol Res. 2010

8.Nicotinamide mononucleotide, a key NAD(+) intermediate, treats the pathophysiology of diet- and age-induced diabetes in mice. Cell Metab. 2011

9.Dietary Restriction: Standing Up for Sirtuins. Science. 2010

10.Extrachromosomal rDNA circles--a cause of aging in yeast. Cell. 1997

11.Transcriptional silencing and longevity protein Sir2 is an NAD-dependent histone deacetylase. Nature. 2000

12.Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan. Nature. 2003

13.Molecular and Cellular Characterization of SIRT1 Allosteric Activators. Methods Mol Biol. 2019

14.Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature. 2006



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?