劇場版『オッドタクシー』のトゥルーエンド感の正体

2022年9月9日 14:36

どうも、サブカルライターのモトタキです。2021年4月に放送され、いまもアマプラ限定配信されてる『オッドタクシー』。一部好事家の間で絶賛される作品の劇場版を観てきたのて、ネタバレ上等の映画語りでも書き殴っていく。

そもそもオッドタクシーってどんなん？

タクシー運転手が、練馬女子高生失踪事件に巻き込まれていく、サスペンスとでもいうべきか。ミステリーに分類すべきか。

見た目は『ビースターズ』のような動物人間たちのお話なのだが、あの作品のように動物的特徴が特にあるわけでもなく、ただ見た目が動物なだけのシリアスな人間劇。テイストとしては、『闇金ウシジマくん』ぐらいのリアルな味わい。

YouTubeにある公式チャンネルにはオーディオドラマがあり、アニメ一話を見るごとにこのドラマを一話聞くのが最もベストな楽しみ方。事件の謎に関しては、テレビ版だけで解決する上に、このオーディオドラマがあるとより犯人特定要素が多くなる仕様なのがまたいい。

声優よりも芸人の方が出ているものの、世界観はむしろしっかりしているジブリ的キャスティング。関西人のおっさんおばはんなら『じゃりン子チエ』で成功例を見てるからそこまで驚きはないか。

声優に関しても、主演どころは（え、花江夏樹さん、そんな声出たの）やら（なぜ木村良平さんをここにチョイス）みたいな変わった演技を求めてるものの、それがぴたりと当てはまる。

特にピタリとしてるのは、作中の漫才コンビ「ホモサピエンス」。この二人をダイアンの二人が演じているのだが、ラジオの感じがもはや芸人のラジオそのもの。こうした空気感の醸成が世界観を支えている、のか。

地上波版の『オッドタクシー』は真犯人に辿り着くも、主人公である小戸川の生死が不明になる、なんともバッドエンディング感のある結末だった。

最終回の後に公開されたオーディオドラマも、その内容はなかなかにサイコホラー。とはいえは、このオーディオドラマの結末を知っていると、劇場版の女将の描写にも納得がいく。

それがどう転ぶのか。ほぼ100%、小戸川の死は確定的だった。だが劇場版『オッドタクシー』で提供されたエンディングは、まさにトゥルーエンドだったのだ。

地上波版を観ていないと、正直置いてけぼりを喰らう可能性が高い。振り返りではあるものの、登場人物たちへのインタビュー方式になっている。

副題の「イン・ザ・ウッズ」は、一部では「藪の中ってことか」と騒がれたが、真相はきちんと示された。ならば「藪の中」ではしっくり来ない。ただ「イン・ザ・ウッズ」には「危機の只中」なる意味合いもあるそう。

突然の民俗学的見地から話をするが、日本なら山上他界に海上他界、地中他界が主である。だが海の向こうでは森中他界なる考え方もあるのだろう。赤ずきんちゃん然り、白雪姫然り、たしかに森の中は異界のようなものだ。ゆえに、「森の中」が「危機の只中」になるのも頷ける。

さて、さらっとネタバレしてしまったが、そうこの劇場版では結末が描かれているのだ。小戸川の生死がしっかりとわかる。

結論から言えば、小戸川はサイコパス殺人鬼アイドル・和田垣さくらとの闘争に勝利する。劇中セリフでは「運の良さ勝負」とも言ったが、幸運の女神が微笑んだのは小戸川だった。

エンドロールの描写で、和田垣さくらはパトカーで連行されているニュース映像が流れ、小戸川の友人・柿花が警察から表彰状を受け取るシーンもある。柿花が駆けつけた、と見るのが素直なところだろう。

つまり、この幸運な結末に到る為には「柿花が生存」している必要がある。

ざっくりと、オッドタクシーで小戸川が立てたフラグを見返してみると面白いかもしれない。きっとそれが、トゥルーエンド感に繋がっているはずだ。

最初は「練馬で和田垣を乗せる」。ここで小戸川の死亡フラグは立っていた、と言ってもいいかもしれない。

次に立つフラグは、「樺沢との写真でバズる」。これがなくともドブは小戸川と接触するのだが、樺沢がバズることによって、それは大門弟のドブへの射撃が発生する条件となる。

この射撃を勘違いしたドブが、むざむざ仮面男こと田中に射撃されるのだから、ドブを牢屋送りする為には必要なフラグだったのだろう。また、樺沢がバズることでドブは精神的に弱って、小戸川との協力関係を築くことに好意的になる。

ドブが協力したからこそ、柿花を矢野一派から救出することができた。柿花の救出が失敗していれば、小戸川は死亡していた可能性が高く、実は樺沢フラグを成功させることが最も大きいことがわかる。

いずれは限定解除されるかもしれないが、現時点（2022/09/09）では、限定配信だ。気になる人は観てみてほしい。

映画感想文

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