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【#83】長野県議会議員選挙・上伊那郡選挙区レポート(2023 4.9)

 長野県議選レポート、一発目は上伊那郡選挙区をお送りします。「長野市や松本市じゃねーのか?」とか「上伊那郡ってどこだよ?」という声が聞こえてきそうですが、私が近くに住んでいて事情に詳しいというコトと、私から見て最も面白い選挙区がこの上伊那郡でしたので、どうしても真っ先にお届けしたいのです。
 “保守3分裂” となり、その隙に共産候補が悲願の議席奪還なるか? 複雑に絡み合う政局模様をどこよりも詳しく、レポートします。

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◆概要

長野県議会HP より引用) 
  • 長野県南部(南信)の北寄りに位置する地域で、色塗りされている自治体の北から、辰野町箕輪町南箕輪村宮田村飯島町中川村 が範囲になる

  • 有権者数:66,285人

  • 衆議院は長野5区に属し、宮下一郎(自民・6期)氏を選出


◆立候補者(定数2/4名)

原 健児  (57) 無所属 現 2期目を目指す(無)
瀬戸 純  (57) 共産  新 政党役員
垣内 将邦 (40) 自民  新 農業
清水 正康 (48) 無所属 現 2期目を目指す(県公)

※末尾に所属会派を記入
(自):自民党県議団
(共):共産党県議団
(改み):改革・創造みらい(立憲社民系)
(県公):県民クラブ・公明(公明系)

◆前回(2019年)の選挙結果(定数2/3名)

[当]清水 正康 (40) 無所属 新 15,063票
[当]垣内 基良 (69) 自民  現 12,064票(自民)
 -------------------------------------
[落]山崎 健志 (58)  共産  新 10,800票

投票率:56.75%

 前回は新人の清水候補と自民のベテラン県議である垣内候補が当選。 改選前まで議席を持っていた共産はベテラン県議が引退、後継候補が落選し議席を失いました。

◆補欠選挙(2022年)の選挙結果(定数1/2名)

[当]原 健児 (57) 無所属 新 17,729 票
 -------------------------------------
[落]瀬戸 純 (56)  共産  新 14,468 票

投票率:49.99%

 現職の垣内基良さんがゴルフ中に倒れ、そのまま急逝。 それを受けて行われた補選は「保守を自称する無所属」(←ココが今回の選挙に繋がるポイントになります)の原候補が瀬戸候補を破り初当選しました。 この二人は今回の本選にも立候補しています。
 なお、この補選レポートを読んだうえで今回の本選レポートを読んでいただければ更にお楽しみいただけるコト請け合いなので、是非ご一読いただきたく。


◆POINT

①亡き父の意志を継ぎ、立候補した「世襲候補」

 議員在職中に亡くなってしまった父・基良さんの意志を継ごうと立候補したのが、息子の将邦候補。 “弔い合戦” を演出するなら昨年の補選に出るのが自然でしたが何故か今回の本選に照準を合わせ、自民党も当たり前のように政治未経験の将邦候補に公認を出しました。 基良さん死去時からコレが既定路線だったようで、昨年の補選で自民党は公認も推薦も出さない、ほぼノータッチという異例の対応を取ったのです。
 基良さんは5回の県議選で3回トップ当選した「強い」候補でした。 その地盤をキチンと引き継げられたなら将邦候補の当選は固いでしょうが、国政で世襲候補の体たらくに対し批判が強まっている昨今なので将邦候補にも同様の目が向けられる可能性が有り、油断は出来ません。(※以降、文中の「垣内」は今回立候補した将邦候補のコトを指します。 御了承下さい)

②候補者の地盤と上伊那郡の “南北差”

(クリックやタップで拡大して御確認下さい)

 上伊那郡は伊那市を挟んで北部の辰野町・箕輪町・南箕輪村(赤)と、南部の宮田村・飯島町・中川村(青)に分けて捉えるコトが多い選挙区です。 それを考慮しながら各候補の地盤を見ますれば、、

原候補 → 箕輪町(赤)
瀬戸候補 → 辰野町(赤)
垣内候補 → 辰野町(赤)
清水候補 → 宮田村(青)

 となっており、これだけを見れば清水候補が南部(青ゾーン)票をまとめれば当選できるように見えます。 が、6町村での人口差が大きく、当日の有権者数を見ると、

・辰野町 :15,582人 ・宮田村:7,006人
箕輪町 :19,890人   ・飯島町:7,489人
・南箕輪村:12,434人 ・中川村:3,884人

 と、南部3町村の有権者数を足しても箕輪町ひとつに及ばないという状況。 また辰野町・南箕輪村の有権者数も南部の自治体を圧倒しており、

 清水候補は南部票をまとめるだけでなく、北部票にも食い込まなければ厳しい状況と思われます。 ただ、清水候補は1期目に「県民クラブ・公明」に所属していて公明党推薦連合長野支持を受けており(公明党は垣内候補にも推薦を出している)、1期4年務め上げた実績をアピールしながら、その組織票に期待したいところ。

 清水候補と同じく現職候補ながら対照的なのが原候補。
 4候補で唯一政党や組織の支援を受けていないため相当厳しいと思いきや地盤が有権者が最も多い箕輪町なので、箕輪町で票固め出来れば当選ラインにグッと近づくコトが出来ます。 原候補の獲得票数が情勢を大きく左右する、今回の選挙のカギを握る候補だといえます。

 そして瀬戸候補は唯一の左派系候補として、左派リベラル支持層の票を総獲り出来るという、これ以上ない大チャンスの到来です。 地盤が垣内候補と同じ辰野町だという点がマイナス要素ですが、自民公認と共産公認なので支持層がかぶるコトは無いでしょうし瀬戸候補は元辰野町議なので一定の知名度が町内に有るでしょう。 そして根強い「アンチ共産党」対策か、背景を、服を紺&白にして、“共産党色” を薄めています。

(2022年のポスター)

 昨年の補選で使われたポスターと比較すれば一目瞭然。 “保守3分裂” という千載一遇のチャンスを掴み取るために対策を練ってきた様子が伺えます。

 まとめますと、

原候補
 ◎→ 大票田の箕輪町が地盤
 ✖→ 政党の支持が無い 組織力が弱い
瀬戸候補
 ◎→ 保守3分裂 左派リベラル票を独占できる
 ✖→ 垣内候補と地盤が同じ  「アンチ共産党」の存在
垣内候補
 ◎→ “弔い選挙” である 自民党公認公明党推薦の組織力
 ✖→ 世襲批判 瀬戸候補と地盤が同じ
清水候補
 ◎→ 公明党推薦連合長野支持の組織力 1期4年務めた実績
 ✖→ 南部票をまとめただけでは当選に届かない

(◎→ メリット ✖→ デメリット)

 という構図になります。 さぁ、どうなりますか!?


 今回の上伊那郡選挙区を皮切りに松本市→下伊那郡→長野市と続き、選挙が行われた全12選挙レポートを随時出していきます。

 まとめて購入できるマガジンを¥2,400で販売中です。 安い価格では無いと承知していますが、1本あたりだと県議選の基本価格¥200で購入できるので、バラで買うより断然おトクです。 是非ご購入を検討いただきたく存じます。


◆垣内 将邦(かきうち まさくに)候補

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