POLICE in 2117 3-22

 3-22、証拠固め

 警官の河本を取調べに呼び出した。

「河本俊一、取調べを始めます」

「なんだ?」

「おまえ、双子なんだな。驚いたよ」

「捕まったのか?」

「ああ、おれが。例によって例のごとくだよ」

「そうか、捕まったのか。よかった」

「武闘派兄弟なんだな。おれの家に殺しに来やがった」

「バカな」

「小宮山を殺したのはおまえじゃなかったな。しつこくしてすまなかった。おまえの弟だった」

「いや、殺したのはおれだ」

「だったら死体の場所はどこなんだ?」

「・・・」

「わかんねえよな。弟を井澤のとこに引き込んだのはおまえなのか?」

「いや、話を持ってきたのは弟だ。あいつは井澤にちょっとしたことで脅されて仕方なく仲間になったんだ。おれは井澤にはなんの義理もない」

「おまえ、井澤に会ったことは?」

「ああ、あるよ。何度も」

「そうか、何か受け取ったものとか、渡したものはあるか?」

「レーザー銃が効かないベストくらいのもんだよ。それも長時間は無理だとか言ってた。結局、レプノイドにしか使えねえ代物だ」

「何着もらった?」

「20や30はあったんじゃないか?」

「受け渡しはどこで?」

「北の住宅だったけどよく知らない。課長に訊いてくれ」

「他には?」

「あとは小宮山のリングくらいだ」

「それを大友に渡したんだな」

「そうだ」

「おまえ、井澤が怖くないのか?」

「おれは天涯おれたち兄弟だけだ。守るべきものは何もない」

「そうか、それでやつはおまえたち兄弟を殺し屋に使ったんだな」

「井澤から直接命令を受けたことは?」

「ない。おれは課長の命令しか聞かない」

「おまえが久元君を殺したことは許し難い。だがおまえたち兄弟の悲しみもわかる気がする。おまえたち兄弟は終身刑だ。できる限り同じ刑務所にしてやる。おれにできるのはせいぜいそれくらいだ」

「ああ」

河本の目から涙が零れた。

「ありがとう。以上」

収監の係に河本兄弟を引き合わせてやるように頼んだ。


大友を呼び出した。

「大友おまえ、小宮山のリングをどうした?」

「警察の保管庫にあります。でも電池が切れてる」

「そうか、警護課のだよな」

「はい」

「そうか、ありがとう。以上だ」


次は新田。

「新田正、取調べを始めます」

「なんですか。もう私に話すことはない」

「あなたは井澤に何度会った?」

「い、一度だけです」

「用件は?」

「や、やつは取り巻き連中と脅しに来たんですよ」

「お金を出し渋ったか」

「そりゃ、そうだろう。そんな訳の分からないロケットにそんな大金は出せない。1億だよ。1億クレジット」

「それでこっぴどく脅されたってわけか」

「そうだ。Wi-Fi電波の妨害衛星を打ち上げて、それから変電設備を爆破しなければならないと言うんだ。腐った社会への警告だからと」

「そこまでしなくてもダイヤは奪えるよな。あなたが管理してんだから」

「その通りなんだ。だけどあいつは・・・あいつはバケモノだよ」

「家族がどうのって言われたんだな?」

「そうなんだよ。あいつの言うことさえ聞かなかったら、こんなことには・・・」

「なってましたよ。そもそもはあなたの横領から始まったことだ」

「ロケットの代金はロシア宛てか?」

「そうだが金塊で支払ったんだ」

「そうか、ということはあんたの借金を再計算しなきゃならないな」

「もうどうとでもしてくれ」

「ロケットはどうやって?」

「パーツに分けて受け取ったんだ。エンジンだけは受け取りに行ったらしい」

「それは誰が?」

「やつの取り巻き連中とレプノイドだよ。それと警察」

「そうか、ありがとう。以上だ」

大岡警護課長再び。

「大岡さん。あなたロケットのエンジンを受け取りに行きましたね」

「ああ、行った」

「何人で?」

「そんなことは覚えてないが、3人くらいだ。警察の護送っていう形をとるためだけだ」

「どこに?」

「新潟の港だよ。コンテナで来たんだ」

「それを東の森まで運んだのか?」

「ああ、丸一日かかったよ」

「その時、井澤は?」

「ああ、いたな。東の森で組み立てたからな。井澤の指示でクレーンで組み立てた。かなり大きいからな」

「衛星二基とレプノイドだからな」

「あんた、なんでも知ってるな」

「ああ、情報が命だって教えてくれた人があってな」

「そうか、もうそろそろお終いだな」

「そういうことだ。ありがとう。以上」

もうすっかり日も暮れた。由莉奈は梶原と楽しそうだ。

「ねえ、クロード。梶原君とこってさ、赤ちゃん生まれるんだよ。いいなぁ」

「由莉奈はまだ学生だからな。卒業しなきゃ」

「そりゃそうだけどさ、生まれたらお祝い行こうよ。赤ちゃん、ダッコさせてくれるって」

「由莉奈、大丈夫なのか?落としたら大変なんだぞ」

「もう、子ども扱いしないでよ。もう大人だぞ」

「そうだな、今日は勇敢だった」

「でしょ、梶原君にも褒められた」

「2回撃ったらしいですよ」

「だからあんなヘロヘロだったんだな」

「だって起き上がろうとするんだもん」

「何発撃っても大丈夫だよ」

「じゃ、もっと撃ってやりゃよかった」

「はは、由莉奈には敵わねえな」

特捜班のメンバーが続々と集まってきた。

「今日の取調べで逮捕の目処が立った。近日中に逮捕に向う。そのときは海保の応援を借りてみんなで乗り込むぞ」

「イエーイ」

歓声が上がった。

「明日はここから始める。今日はこれで解散」

「クロード、カッコいい!」

「あ、みんな。これがおれの奥さんだ。よろしくな」

「へー、さすがクロードさん」

「かわいいっすね」

わいわいガヤガヤとしばらく雑談が続いた。ここにポリスがいてくれたら言うことないんだが。

自宅まで由莉奈とボックスを繋げて帰った。

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