POLICE in 2117 3-17
3-17、主犯はこいつだ!
「ただいま、由莉奈」
「はーい」
抱きしめてキスをした。
「会いたかったよ」
「ん?どうしたの?」
「いや、なんとなくなんだけど」
「あ!さてはかわいい女の子に会ったな!」
「え?そうか?あ、そう言えば会ったな」
「やっぱり。クロードってダメね、その辺のコントロール。かわいい女の子が極悪な犯人だったらどうするの?」
「そんなかわいい女の子は犯罪なんて犯さないよ」
「ほら、もうダメだ。かわいい女の子だって人間だよ」
「でもな、そんな極悪な犯罪を犯した時点でかわいくなくなってんだよ」
「よく言うわね。もう知らない」
「なあ、そう怒るなよ」
「知らない」
「何もしちゃいないんだからさ」
「心が動いたでしょ?それがイヤなの!」
「そんなこと言われてもなぁ」
「由莉奈だってカッコいい男がいたらドキッとするだろ?」
「でも私はなびいたりしないもん」
「おれだってなびいてなんかいないよ。由莉奈のかわいさを再認識するだけだよ」
「そう?そうなの?」
「もちろんだよ」
「じゃ許してあげよっかな」
「ありがとう」
「でも、今日は野生はおあずけだよ」
「どうしてそういうことになるんだよ」
「ウソだよ。早くお風呂入って。臭いから」
「あ、そうだった」
シャワーを今日も由莉奈が覗いている。手招きをすると服のまま入ってきた。
「どうしたの?」
「臭くないから一緒にどう?」
「どうして臭くないの?」
「今日、スカッシュやったんだよ。それでシャワーしてるから」
「どうしてスカッシュ?」
成り行きを説明した。
「待ってるよ。クロードがシャワーしてるとこ見るのか好きなの」
「もう出るよ」
「あ、バスタオル。こうやってね、クロードの身体を拭くのも好きなの。ほら、大きくなった」
「なんだよ。オモチャじゃないぞ」
「なんだか愛おしくなってきた」
「そうだろ?早くベッドに入ろう」
思い切り愛し合って仰向けになった。天井を見つめながら思った。
「種類を考えると物理は必須だな。化学って線もある」
「何言ってるの?」
「いや、何でもない」
「もう寝ようよ」
「ああ」
由莉奈を抱きしめた。
「愛してるよ。おやすみ」
「私も愛してる」
翌朝も特捜班には梶原が1人だけだ。
「今日は特に訪問の予定もないから取調べに行っていいぞ」
「はい。では行ってきます」
梶原を送り出してから管理室に向かった。
「おはようございます」
「おはよう。今日は1人か」
「なんだ、イヤなんすか?」
「そういう訳じゃないけどな。珍しいだろ?最近」
「そうですかね、あまり気にしてなかったです」
「なんか用事があったんだろ?」
「ここのデータベースの豊富さを頼ってきました。この地区で物理学者と呼ばれる人は何人いるか、まずそれを知りたいんです」
「そんなに多くはないんじゃないか?」
157人が表示された。
「スゲーな。こんなにいるんだな」
「ここから著名な人を除いてください」
「139人。ほとんど無名だってことだ」
「次は化学、バケ学者で同様にやってください」
「無名なのが209人。バケ学者の方が多いんだな」
「これをクロス検索すんだな?」
「はい。お願いします」
「おー、18人。表示するぞ」
「お願いします」
「そこから年収が多くて、この1年論文を書いてない人物はと・・・」
「井澤賢介、横井一郎、左右田義光か」
「彼らの住所はわかります?」
「井澤は西住宅だな。横井はシティの北、左右田はこのすぐ近くだ」
「井澤か、井澤賢介氏の以前の論文はありますかね、その評価なんぞもあったら」
「井澤賢介氏の論文」
「かなり精力的に書いてんな」
「100本近くある」
「新しいやつから順番に」
「4年前だぞ」
「重力と遠心力の最適均衡法則、ガラス繊維の柔軟性の追及、集光性繊維の可能性分析」
「こいつだな。ついに突き止めたかもしれない」
「この論文についての評価は?」
「あるぞ。表示する」
『この荒唐無稽な論文は評価するまでもないが・・・』
「酷評ですね。ここから執筆をやめている」
「論文を全部コピーしますよ」
「ああ、いいけど100本近くあるんだぞ」
「はい」
コピーした。
「これから籠って読みます」
「え?マジかよ」
「めぼしいのを拾い読みするんですよ」
「それでもなぁ。警察ってのも大変なんだな」
「じゃ、行きますね。一日仕事ですから」
「あ、その前に地域安全課だ。山田さん、ありがとうございます。助かりました」
「なんだか、今日は殊勝だな」
「主犯はほぼわかりましたけど、決め手がないんですよ。敵を知る、ですよ」
「地道だな。おまえにもそんなとこがあるんだ」
「はは、イヤイヤですよ。それじゃ」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?