POLICE in 2117 3-15

 3-15、新繊維の追及①

  松尾浩一郎氏は70才。健康機器メーカーを退職した人物らしい。

「フォン、松尾浩一郎氏」

「はい。松尾だがどなた?」

「私、大崎クロードと言います。警察です」

「な、なんだ?警察が何の用だ?」

「フラッシュ機器の斡旋についてお尋ねしたいことがあります」

「フ、フラッシュ?」

「はい。医療機器のフラッシュ。ご存知ですよね」

「ああ、もちろん」

「それがどこで造られているのか、もしくは販売されているのかをお尋ねしたい」

「それは申し上げられない。営業上の秘密なんだ」

「いえ、松尾さん。私は警察です」

「だからなんなんだ」

「言っていただかなければなりません」

「イヤだと言ったら?」

「出頭願うことになります」

「わかった。ではうちに来てくれ」

「わかりました。10分ほどで伺います」

松尾氏の態度は明らかにおかしい。何かに怯えている。これが犯人の力なのか。

シティの北の戸建て住宅だ。10分で松尾氏の自宅に着いた。しかしベルを押しても反応はない。まさか逃げたか?ボックスはあった。出かけたわけではないらしい。

「フォン、松尾浩一郎氏」

しかし繋がらない。おかしい。

「おい、梶原。解錠して中に入る」

「はい」

部屋にはまだ体温が感じられる気がした。3キューブ、おそらく一人暮らしなのだろう。靴は1サイズ、男性用しかない。リビング、寝室、そして2階、風呂とトイレを見たが誰もいなかった。10分しかなかった。自分で出て行ったとしか考えられない。だがボックスはある。

「梶原、どう思う?」

「誰かが迎えに来たってことでしょうか」

「状況はそうだな。おれたちより近くにいたやつだな」

「どうやら核心に近づいたようですね」

「そうだな、あの繊維の線は間違っていない。管理室で松尾氏の通信記録を見よう」

管理室は吉田さんだ。

「失礼します」

「はいよ。何だ?」

「松尾浩一郎氏の通信記録が見たいんですよ」

「松尾浩一郎ね、北の戸建てだな」

「はい」

ディスプレイに次々に表示される。

「これは会社だな」

タップすると「吉永精密機器」と出た。どうやらここらしい。個人の通信相手も確認していく。ほとんどが離れて住んでいる家族だ。その中に不明な相手がただ一人、米田祐一。

次は米田祐一氏の通信記録を見る。米田氏から松尾氏への通信が確認できる。会社は「ローゼン精密化学」ここが勤務地だろうか。米田氏の通信相手は極端に少なかった。

「吉田さん、繊維の特許の申請を見せてください」

「繊維か?」

表示された。ここ三カ月の間に96件の申請がある。最近のものから順に見ていくと、2カ月前にあった。

「電磁波高密度収束繊維」これに違いない。申請者はローゼン精密化学。ここで繊維は造られているに違いない。

「ありがとうございました。カジ、行くぞ」

ローゼン精密化学は工業地域の中にある。チマチマ行っていたら1時間はかかってしまう。地下高速に乗って出口を出るとそこが工業地域だった。

ローゼン精密化学。

「米田さんはいらっしゃる?」

「社長はただいま外出しております」

「そうか、こちらの商品、新繊維ね。販売を任せていただきたいんですよ。もうどこかと契約済みかなぁ」

「レイテックスですね。たぶん販売はまだだと思いますよ。まだ改良の余地があるって言っていましたから」

「ベストは何着くらい作ったの?」

「そうですねぇ、せいぜい30着くらいです。全部試作品ですよ」

「30か、でももう医療機器には使われてるよね」

「よくご存知ですね。それは問題ないそうです」

「たしか吉永さんだよね」

「そうです。すぐそこですよ」

「ありがとう。また来ますね」

「はい。お待ちしております」

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