『新潟は実際に上手くいっていないのか?』 2023.#18 柏レイソル×アルビレックス新潟 レビュー
ご無沙汰しております。白鳥です。
Twitterをフォローしていただいてる方ならご察しがつくかと思いますが、とある事情でnoteを更新していませんでした。していないというより精神的にできなかった、という表現の方が正しいでしょうか。正直まだ回復してないけど←
(推定全治1.5ヶ月)
さて、全くnoteを更新しなかった3週間程度の間、新潟では色々な出来事が起こりました。「色々な」とは言ってもその殆どがネガディブな方向に針を振っているものばかり。だって全然勝ってないんだもん。それに結果と繋がっているからかピッチ上も何か上手くいっていなさそう。
上記のような現状についてよく分からないけど深いモヤモヤを残すサポーターの方は非常に多いと思います。正直僕自身もその一人です。観ていて楽しくない,期待感が無い…今はポジティブな印象を持つのが難しいですね。
そこで改めて柏戦を観てみました。試合を観返すのも湘南戦以来。フラットに観ると色々な事を考えるようになったので、3週間ぶりにnoteを書いていこうと思います。
今回は柏戦で注目したポイントと、そこから見えてくる新潟の現在地について分かりやすく書いていこうと思います。よろしければお付き合いください!
ブレないチームコンセプト
https://twitter.com/albirex_pr/status/1672511203309142018
早速行きましょう。まずはスタメンから。
メイントピックは三戸舜介のトップ下起用。伊藤涼太郎の海外移籍に伴い暫くは椅子が空くこのポジション。先週のルヴァン杯では2トップ気味のメンバーを採用。そして今節は松橋体制どころかアルベルト体制でも無かった(?)三戸によるトップ下。
ただ、トップ下とはいっても涼太郎のそれとは全然違う役割が期待されていましたし、それをピッチでも実践していたと思います。
続いて試合の話に。全体として新潟が保持して柏が睨む展開がメインに。新潟の2CB,アンカー(高)には必ず人を付けてきた柏。
相手2トップの間で彼らのプレスを牽制,更には出口になろうとする高宇洋。そこにCMFの椎橋が密着して、高の横で浮遊する星には高嶺が意識強めに付いてきました。これにより中央からの前進ルートを阻止して外に追い込もうとする柏。
しかし、新潟には地上がダメでも空中がある。
上記は昨季のシーズン総括会見でのコメント。『シーズン当初から自分達がどんな事に取り組んでいたのか』と松橋監督によって語られていた中の一つ。松橋アルビは22・23年とGK・主に小島享介を全面的にビルドアップに組み込みながら前進を構築してきました。
マンチェスターシティのグアルディオラ監督も言っていますが、相手がGKをフィールドプレイヤーとして換算できない以上、自軍のビルドアップ局面では常に数的有利が起こります。小島というFPと遜色ないボールスキルを持ったGKを誇る新潟はこの恩恵を活かしながら+1を生み出してボールの供給源を確保しています。
そうした、体制発足時から共有してきたプレーモデルを1年半経った上に苦しい状況下で披露している事からも新潟は進むべき方向性を決して見失っていないと思います。そしてプレーモデルを柏戦へのゲームプランとして有効的に落とし込むのも◎。
そんなこんなで必ずフリーになる小島をアメフトでいうクォーターバックとして運用する新潟。アウェイチームが保持する中で互いの配置が噛み合いやすかった割に、前半の柏はピッチ全体で明確にマンツーマンで構える,奪いに来るわけではありませんでした。
相手CHがアンカーに寄せる事で空くライン間、割と高かった柏のライン設定により出来た背後にそれぞれターゲットを見つけて最後尾からボールを送り込み前進手段を確保します。そこでターゲットとなったのが鈴木孝司、そして三戸。
ここでようやく三戸の話に。
鈴木の降りる動きで結構な数のボールを引き出せたのも、パリ五輪世代のアタッカーが背後へのランニングで奥行きを取り続けた事が要因の一つとして挙がると思います。背後への抜け出しを見せると柏CBからすれば恐らく『自分の空けたスペースに飛び込まれるかも』と一定の警戒心が植え付けられる事に。
それに、三戸がシンプルに背後を突いて(37;40~)ポイントを作る動きもありました。彼の武器である機動力,俊敏性を活かして柏DFの手前と背後に存在するスペースを突く。最終ライン付近だけでなく小見やダニーロが持った時に横のサポートを作りパスルートを寄与するなど、トップ下、いやフリーマンとして三戸は新たな可能性を見せてくれました。
松橋監督の意向、感じてしまう"齟齬"
試合後会見では上記のように『フィニッシュへの持ち込み方』に課題を述べていた松橋監督。実際に我々も何かもどかしい気持ちを抱えながらここ数試合を観ているかと思います。
ただ、ラスト30mの崩しがダメならそこだけにフォーカスすればいいのかと言われるとそうではないのかなと思います。
辿り着くまでにどのようなプロセスを歩んできたのか?相手にどれ程のダメージを与えられたのか?新潟のフットボールならそういった視点が凄く大切になります。
柏戦に関しては相手のやり方もありましたが前進:〇・崩し:△といった印象を個人的に抱いています。そこについてこの後で触れていきます。
前進
アルベルト期にやっていた、ゆっくりと何回でもやり直しながら確実にボールと陣形を進めて相手にダメージを与えるボール循環は継続中。そこに縦方向の意識も加えながら状況に応じて使いたい領域に進んでいくのが松橋アルビ。
柏は人への意識が強く、陣形全体も比較的前のめりになる傾向にあったので、新潟にはその反動を上手く利用したいという狙いがあったように思います。それは先程紹介した通り、ある程度成功していたのかなと。
ただ、ホームチームがマンツーマンの要素と陣形のコンパクトネスを色濃くした後半。DF-MF間を狭くして古賀-土屋のCBコンビも新潟の降りる動きを思い切って潰しに来るなど、大枠は似ているとはいえ前半とは毛色の違う45分間を過ごしました。
新潟としては
・引き付けながら横パス,バックパスを多用して柏を走らせて陣形を広げさせる
=ピッチに使いたいスペースを作る
・SBの内側へのポジション移動など、相手に『どこまで付いていく?』を突き付けるようなポジション調整を行う
=どこかでフリーマンを生み出す
そのような駆け引きがあると、より効果的なボール循環になったと思います。小島からのロングパスは一つの軸とはいえそれだけになると流石に苦しい。地上からの前進も織り交ぜるのが理想です。
ただ、そこには泰基-トーマスのコンビがまだ急造に近い事と、各々の個人戦術が以前より徹底されていない事を踏まえる必要がありそうです。ゆっくり選択肢を探ればいいのにワンタッチで狭い方へ送ったり、後半は特に柏プレスの矢印通りにボールを進めてしまい蹴らされて回収されたシーンも目立ちました。
アルベルト期だろうがどんな体制であろうとボールと共にプレーするチームとしては死活問題となる上記の課題。ラスト30mでの振る舞いやビルドアップでの選択肢に違いはあれど、継続するべき所は血を絶やさずに取り組んで欲しいです。
後程触れますが、ラスト30mでの手詰まりも結局はビルドアップで前方にボールと時間(スペース)を思い通りに届けられていない事が起因しているのかなと思います。
余裕がない状態で受けたアタッカー陣は1タッチでプレッシャーから逃げるしかない。後半は特にそんなシーンが多発しましたが、点ではなく線で見ると全て繋がっているのでしょう。
(※好例はこちら⇩。連鎖的に前方の選手が余裕を持ってプレーできる)
柏の出方を踏まえながら意図した事は上手く実践していた。しかし、ボールを地上に着けた前進には課題を残す。そのように今節のボール保持については観ていました。
ビルドアップは目的ではなく手段。どうやってゴールにたどり着くか?どうすれば攻撃陣に良い状態でプレーさせてあげられるか?最終地点に向かって狙い通りに進んでいけると尚良いかなと思います。
ラスト30mでの崩し
ここは松橋体制の意向と観ている側の認識に若干の齟齬を感じる部分です。
これも昨季の総括会見での一幕。恐らくですが、松橋監督は『スペース=何もしなくても既にある物』として捉えている節があります。
『スペース=創り出す物』としてボールの移動やポジショニングでスペースを作り、そこにフリーマンを生み出して優位性を見出すアルベルト・ポヤトス監督とはスペースに対する認識が違うと言ってよいでしょう。
そこは松橋監督のチームを観る上で抑えるべきポイントになります。だってそれを無視して色々考えてもただのないものねだりになってしまうから。個人的にも最近そういった事を考えて少し反省してました。
そのために、近い位置で人と人が繋がって人や狭い箇所にボールを送り込むのが松橋アルビ。5月頃からピッチ全体や幅を意識し始めたとはいえ、本質は大きくは変わっていません。
大天才伊藤涼太郎が居るならそれでも何とかなった。しかし彼が抜けた今、ゴールネットを揺らす一歩手前の作業については再設計が求められているでしょう。
個人的には何か形を決める (もし決めても現状は再現性を見出す個も特徴も欠けている) よりは、どんな場所や状況でも通用する普遍的な原則があると良化の兆しが見えてくるのかなと思います。
サイドだろうが中央だろうが密集だろうが、人の動きでスペースを作ってそこに誰かが入り込んでフリーになる。或いは突きたいスペース(例:バイタルやポケット)を共有して意図的に空ける事でボールと人を送り込む。
要はスペースを作ってそこに侵入する、パスを引き出す。そういった要素が求められるし今は足りていないのかなと思います。
パス交換で狭い箇所を攻略しようとしても結局は目の前に相手がいる訳で、人と人が繋がりやすいとはいえ効果的なダメージを繰り出すには難易度が高い。ならばスペースでプレーするフリーマンを生んで時間と選択肢を与えていきたいところです。
その必要性を感じるのが特にサイド攻略で、新潟は多くても2人(SBとWG)の関係性に終始してしまい、結局後方へ下げざるを得ない…というシーンが目立ちます。そこに最低でも3人は確保して、動く→スペースを作る→入り込む→フリーで前向きに受ける…という関係性を見出したいところです。
先程の主張と矛盾している?でも実際は過去にやっていたし、今もその片鱗を見せているんだから実現できるはずです。
・詰まってるし取り敢えず人数かけなきゃ!
→星に加えて高も前方へ出張
→攻から守のフィルター役が0
→しっかりカウンター喰らう(47:20~)
・右サイドの関係性が二人に留まって、パス交換で相手SHを引き出してもそのスペースに誰も入ってこない
柏戦でも幾つか見受けられましたが、とにかくスペースを生み出してそこに侵入する作業が足りていないと思います。
もし夏に1,2人補強したとしても根幹にそういった原因があると状況はさほど変わらないはず。例えWG・IHを補強して大外アタックからのポケット侵入とか明確な武器を定着させたいにしてもスペースメイクの意識は必須条件。
人から人へのパスを繰り返して何も生み出せない今だからこそ、人もボールも動かしながらスペースを生み出す動的な構造にもう一度着手してみてもいいんじゃないかなと思いました。
という事で求めたいのはスペースの再定義。
別にポヤトスと全く同じフットボールにしろ!と言ってる訳ではなく、スペースを作ってそこに飛び込ませる作業はどんな監督,やり方でも必須要件だと言いたいのです。
勿論狭い所を突くのは要所要所で織り交ぜていけば良いと思います。相手が完全に籠城きた時は新潟なら中央突破が1番の武器になるでしょう。でもそうではなく、ある程度スペースを見出しやすい状況なら上記のような取り組みもあって良いんじゃないかと思います。
松橋監督もラスト30mは課題として認識しているようなのでチームにどうメスを入れるのか、楽しみに観ていきたいですね。
最後に
やはり試合についてnoteを書くと思考が整理されて良いですね。ここ最近は観戦する上の態度として批判的なバイアスがかかる傾向にある筆者からすると尚更。
組織は生き物、ピッチからは見えてこない・感じられないような我々が知り得ない事象がきっと沢山あるんだろうなと思います。
それに復帰したばかりの堀米悠斗,高木善朗が足に違和感を抱えて退きましたが、DAZNの試合後インタビューでの監督の話からすると彼らは若干の無理をしてでも遠征に帯同してくれたと。
要は台所事情がとにかく厳しいのでしょう。ただでさえ薄い選手層からキープレイヤーの怪我人が続出している現状。正直今のスカッドに多くを求めるのは酷だと思っています。
現実を見据えながら一つ一つ、それでも手をつけられるであろう取り組みはまだまだ残されている。中断期間までまだ3試合も残されているので、勝ち点と共にピッチ上の様子が上向きになってくれると幸いです。そして、中々飛び立てないSwansを皆さんが追いかけていく際に今作のnoteが少しでもそのガイドラインになると嬉しいです。
それでは最後まで読んで頂きありがとうございました!またよろしくお願いします、ではでは。