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『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』の作り方/真相解明の時間です

こんにちは。
『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』の監督をした入江悠です。
2023年春、3月31日に、本作が劇場公開になりました。

今回は、『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』をどうやって作ったか。
監督として、どんな謎を本作に込めたか。
その真意などを含めて書いてみたいと思います。
本作をすでに映画館でご覧になった方に向けて、というつもりです。

わたしにとって、子どもの頃から大好きだった夢の<探偵モノ>。
オリジナル企画で実現するために、制作過程でどんな工夫があったか、スタッフ・キャストとどんな試行錯誤があったか、製作時の記憶がおぼろげになる前に、監督目線で赤裸々に記せたらと考えています。
長文になりますが、よろしければ最後までお付き合いください。
もちろんご興味のある箇所だけ、飛ばし読みしていただいても大丈夫ですよ。

※本文中には重要な展開についての記述やネタバレを含みますので、ぜひ映画をご覧になった後にお読みください。

それでは、「真相解明の時間です!」

『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』メインビジュアル

1、あらたな船出〜映画化始動

もともと『ネメシス』は連続ドラマでした。
2021年に日本テレビ系列で全10話で放送されました。
主演は、広瀬すずさん、櫻井翔さん。
さらに江口洋介さんを加えて、3名が「探偵事務所ネメシス」のメンバーです。
わたしは、ドラマ版で総監督と脚本を担当しました。
全キャラクターの名前を考えたり、ゲノム編集についてのミステリーなどを構成し、ドラマ版の監督をしました。
他に監督は片桐健滋さん、岸塚佑季さん、共同脚本は片岡翔さん。
ドラマ『ネメシス』はBlu-ray&DVD発売中です。

※ドラマ『ネメシス』の撮影記については、以前書いたこちらの記事もご参照ください。

さて。
映画化の話がもちあがったのは、ドラマ『ネメシス』の放送が終わってしばらくたってからでした。
もともとドラマ『ネメシス』のスタッフは、映画制作を主なフィールドとする方々で構成されていました。
わたしたちは、ドラマ撮影中から「映画になったらいいね」と話していました。「また集まりたいよね」と。

でも、最初から映画化が決定していたわけではありません。
映画化が決まったのは、ひとえにドラマ放送時に応援してくださった視聴者の方々の熱いエールであり、その反響ゆえです。
さらに、広瀬すずさん・櫻井翔さん・江口洋介さんはじめ、出演者の方々がドラマ終了後に、「またこのメンバーで映画を作りたい」と思ってくれたことが大きいです。
ドラマ版では「探偵事務所ネメシス」の3名だけでなく、”チームネメシス”と呼ばれる助っ人のキャストがいて、彼ら彼女らも全員「やりたい」と言ってくれたからこそ、映画化が始動したのでした。
まさに、夢の船出です。

ドラマ『ネメシス』の広瀬すずさん、櫻井翔さん、江口洋介さん

2、脚本作り

なにはともあれ最初に必要なのは、脚本です。
「どんな映画にするか」
建築にとっての設計図、航海における海路図、それが脚本。
誰もがワクワクする脚本を作ることが、まず最初のミッションでした。

プロデューサーに呼ばれ、日本テレビの会議室で映画化始動の打ち合わせをしました。
わたしは2021年秋から長野県の山奥にこもってWOWOWドラマの撮影があり、脚本を自分で書くことはできない状況にありました。
また、ドラマ版のときに全10話の構成をしたり、各話のアイデアを出したりして、「できれば映画版ではまったく違う角度からのアイデアが欲しい」と思っていました。
自分の発想では出てこない、斬新な切り口での「探偵事務所ネメシス」を描いてくれる方を求めていたのです。

そこで招聘されたのが、ミステリーの旗手でありベテラン脚本家の秦建日子さんでした(ちなみに、男性です)。
わたしは「はじめまして」で、しかも秦さんのほうがわたしよりベテラン。
とりあえず失礼を承知で、要望を一気にお伝えしました。

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