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劇薬(『台風クラブ』鑑賞記録)

プール
若い肢体
とりとめのないダンス
台風
性欲(のようなもの)
焦燥感
若さ
潔癖

 先日までアップリンク京都にて上映されていた、相米慎二監督作『台風クラブ』を、京都映画チア部のみんなで観に行きました。
 が、これがとんでもなく。
 エンドロールが流れ、劇場の明かりがついたとき、「凄い……」しか言えなくなってました。観る劇薬。
 繰り広げられるのは、何もまとわない、人間の本能むき出しの中学生たちの姿。やわらかな創作物に慣れ切っていた頭をガツンと殴られた気持ち。芸術とはこうあってほしいものです。
 以下、各部員のレビューをご紹介します。

中学生の躍動する肉体。そして台風が近づく非日常を期待している心がこんなにも天才的なショットの連続で映し出されているとは!!ひぃぃ恐るべし……といった気持ちでスクリーンを凝視していました。
特に舞台の上で踊り狂う生徒たちをバスケットゴールの枠からとらえてズームしていくシーンは無敵感がすごすぎて…早くもう一回見たいです。
(むらた)

私はこの映画を見て「静かに狂う」という印象を受けた。

音に注目すると、映画の中で、登場人物達に聞こえるはずのない音が聞こえる。それが時にピッタリ合い、時に違和感を感じさせる。その音とは逆に、先生や生徒たちが合唱するように、劇中で存在しているものもある。そのような流行歌はこの映画でとても重要な役割を果たしている。
また、不自然なカットと共に曜日を画面に出す。ストーリー性からも常に後味を消し去るような意志を感じた。その逆で、ロングショットの長回しも頻発する。どこか寂しげな沈黙と、中学3年生それぞれが抱えている葛藤が現れているように感じた。思春期で子供から大人に変わる状況の生徒たちは、中学3年生ではなく、既にもう大人で、個人が成立していると感じさせられた。

これらの要素から「奇妙」で「狂気的」な印象の1本だった。(西村)

 現在U-NEXTで配信中のようです。どんなに言葉を尽くしても足りない、ぜひ観て体験してください。

(余談ですが、私はこの作品を見て大好きな山本直樹作品を思い出しました。)

(遠塚)

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