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『シーズン・イン・フランス』レビュー【未確認映画解放同盟】8/28-9/3出町座で上映!

7月に続き、「未確認映画解放同盟」第二弾!
今月は
8/21-27 『アット・ウォー』https://demachiza.com/movies/6893
8/28-9/3『シーズン・イン・フランス』https://demachiza.com/movies/6890
の2本です。

今回も、私たち、映画チア部京都支部が映画の鑑賞体験を手助けするためのレビュー、解説を書かせて頂きました!

まとめて冊子になり、出町座で8/21より無料配布されますのでぜひ!
今回は、前回からパワーアップして、監督のインタビューや映画の背景など、情報をたくさん詰め込んでいます。
こちらのnote記事では、その中から、レビュー部分のみご紹介致します。


『シーズン・イン・フランス』

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2017年/France/101分
英題:A Season in France 原題:Une saison en France
© 2017 Pili Films, ARTE France Cinéma

監督・脚本:マハマト=サレ・ハルーン
出演:エリック・エブアニー、サンドリーヌ・ボネール

あらすじ

中央アフリカ共和国の高校でフランス語を教えていたアバスは、2人の子どもヤシーヌとアズマを連れ、激しい内戦から逃れフランスへとやってきていた。妻は民兵に殺された。フランスにやってきて19ヶ月、難民申請をするも一度却下され裁判所に再申請中。再申請を待つ間、アバスと同様にフランス政府に亡命申請をしているポーランド系移民の恋人キャロルと共に食品市場で働いていたのだが…

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イントロダクション

マハマト=サレ・ハルーン監督作品。チャド共和国の最初の映画監督とされる彼の作品は日本ではあまり観る機会は多くないが、カンヌ国際映画祭で受賞経験もあるアフリカを代表する映画監督である。日本では『終わりなき叫び』(2010)という公開作がある。本作ではフランスに逃れてきた難民、移民の過酷な運命を描く。子どもたちとの食卓での些細な会話、お母さんの歌、表情、何気ない生活のひとつひとつが絶望を地に足着かせている。生活感をもった社会問題の厳しさと神話のようなうつくしさを兼ねそろえている作品。

レビュー

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以下、ラストシーンへの言及が含まれます。ご注意ください。

この物語はキャロルがどこかへと消えてしまったアバスたちの足跡を追うよう、誰もいない砂山を彷徨うシーンでラストを迎える。場所はかつて難民キャンプが所狭しと建てられていた、フランス北部に位置する港湾都市カレーだ。多い時には1万人近くの中東・アフリカ出身者がこの「カレー・ジャングル」にテントを張り、フランスからイギリスへの入国を目指していた。しかし2016年10月頃、このキャンプはフランス当局により解体され、「キャンプ」の住人はフランス各地の宿泊施設に移送された。-(1) ハルーンはキャンプの解体後すぐの同年10月にこのラストシーンを撮影した。
”「最初はこんな脚本ではなかったんです。でもカレーが破壊されていくのを見て、物語の結末を変えました。一番最初に撮影したのが、このラストシーンです。全てが消えてしまうのではないかと心配していたので、私とサンドリーヌ(キャロル役)はすぐに撮影に行きました。テレビは人々が追い払われる光景だけを映し出していたが、私は歴史を撮りたかった。記憶の抹消を証明したかったのです。」” -(2)
2020年7月23日のル・モンドは、パリ北部に位置するオーベルヴィリエのサン=ドニ運河沿いに、現在広大な難民キャンプの設置が進んでいると報告している。その多くはアフガニスタンやスーダンなど母国の内戦や紛争から逃れてきた難民だ。5月末にはおよそ200人程であったが、ここ数週間でその数は1500人を超えた。政府は同月29日に彼らをイル・ド・フランス地方の様々な難民収容センターや体育館などに移送したという。しかしこの避難者の中には、すでに強制退去を10回以上経験している者や、5回の国外追放処分を受けている者など、難民認定が降りなかった後も行く当てがなくフランスに留まるしかない人々も多い。加えてこの避難も3ヶ月間という一時的な措置であり、期間が過ぎれば彼らはまた路上で暮らすことになる。-(3)(4)このように、カレーの難民キャンプ解体から4年経った現在でも、難民を取り巻く環境は依然として改善されていない面もある。
姿を消したアバスが最後にキャロルに宛てた手紙には、「結末はまだ先だ…生きている限り…子供たちと歩き続ける限り…輝く星がいつでも僕たちを導いてくれる」と書かれている。母国からも、避難先の国からも追い出された彼らは何処へ向かうのだろうか。その先に光はあるのだろうか。試練を受けながらも家族のために必死に生きる難民第1世代。劇中息子のヤシーヌが日々を淡々とナレーションしているように、成長した第2世代によって、悲劇的な彼らの人生が語られ始める日が来るのも遠くはない。

出典
(1)CNN『仏カレーの難民キャンプ、6900人の立ち退き作業開始へ』(2016/10/24)
https://www.cnn.co.jp/world/35090998-3.html
(2)マハトマ=サレ・ハルーン インタビュー① (2018/4/4)
Maham
at-Saleh Haroun on Une saison en France
(3)ル・モンド『« Je ne sais pas dans quel pays aller » : à Aubervilliers, plus d’un millier de personnes migrantes dorment à la rue』(2020/7/23)
https://www.lemonde.fr/societe/article/2020/07/23/a-aubervilliers-plus-d-un-millier-de-personnes-migrantes-dorment-a-la-rue_6047025_3224.html
(4)ル・モンド『『« Mon pays est en guerre, je n’ai pas le choix d’être là » : la Préfecture de police de Paris évacue le vaste campement de migrants d’Aubervilliers』(2020/7/29)
https://www.lemonde.fr/societe/article/2020/07/29/seine-saint-denis-la-police-evacue-le
-vaste-campement-de-migrants-d-aubervilliers_6047564_3224.html

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冊子では、他にもトピックとして
・作品中に登場する「歌」について
・制作の背景
・フランスにおける難民を取り巻く状況
・難民申請の手続き

さらに、
同志社大学グローバル地域文化学部助教、亀谷百合佳先生にお話しを伺うコーナー
が掲載されています!
ぜひ出町座にてお求めください。

『シーズン・イン・フランス』上映スケジュール@出町座
2020/8/28(金)〜9/3(木)
16:55(〜18:40終)
*9/3で終映。
https://demachiza.com/movies/6890
あらすじ:水嶋
イントロダクション:水嶋
レビュー:丘澤


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