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ウロボロス~この愛は正義だったのか?~

先週からTverで4話まで配信されているドラマ「ウロボロス」。Tverで4話まで見て、完全に夢中になってしまった私は5話以降が配信されるのを待てずに、Paraviに加入して最終話まで見切りました。この熱が冷めないうちに見終わった私の中で膨らんでいる感情を書きとどめたいと思い、早速noteを開きました。久しぶりにこんなに感情移入して泣いてしまうドラマに出会えたような気がします。


幼少期「まほろば」という施設で育った龍崎イクオ(生田斗真)と段野竜哉(小栗旬)の2人。その2人が母親のように思っていた結子先生(広末涼子)が何者かに殺され、さらに、その事件は警察に揉み消されたことで、真実を暴き復讐をする決意をし、イクオは警察の道へ、たっちゃんはヤクザの道へ進む。

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本当の親と暮らせなかった2人は結子先生から愛を貰うのと同時に結子先生のことが大好きだった。また、イクオはたっちゃんのことをたっちゃんはイクオのことをお互いに愛していた。なんせ、2匹で1つのウロボロスのように2人で1つなのだから。友人であり、相棒であり、家族である。そんな彼らは自分が貰った愛、そして自分の抱える愛を信じて、復讐のために「まほろば」で起きた事件の真相を探る。
自分たちの「愛」を信じて、生きていたイクオだが、バディである日比野美月(上野樹里)に惹かれていく。しかし、美月は復讐したい男の子供かもしれないし、彼女がどんな理由があろうと人の道から外れることを許さない人間だということを知っているイクオは気持ちが揺らぐ。そして、美月もイクオが段野(小栗旬)と何かしらの協力関係にあることを悟るが、人の道から外れた行いを許すことのできない美月は、イクオがそんなことをしていると疑いたくない、彼の事信じたいと強く思ってしまう。

「私は疑いたくなんかないんです。龍崎さんを刑事として認めてるから。でも、今は信じ切ることができません」
ウロボロス5話より
「もし、あなたが本当に段野竜哉と、、、反社会組織と関係があるなら、私の前からいなくなってほしい。たとえ、どんな理由があっても」
ウロボロス5話より

この台詞は黒に近いイクオを信じたいが故の覚悟の言葉だろう。
しかし、その美月の信じたいが故に出した言葉に6話の最後イクオは

「言ってたよね。もし反社会組織の人間と関わりがあるなら自分の前から消えてほしいって。だから、多分もうすぐ消えるよ。僕は日比野さんが許せない種類の人間だから」
ウロボロス6話より

と答える。
イクオが黒に限りなく近い存在だということはわかっていたが、彼に肯定さえされなければ、疑惑を封じて信じ続けることはできたはず。しかし、ここで彼にきっぱりと自分は黒側の人間だと言われてしまう。これを自らの口で打ち明けたイクオの覚悟も大きいものだったはずだ。思いを寄せている彼女に軽蔑されることもわかったうえでの言葉だっただろう。

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しかし、だんだんと、美月の気持ちは変わってゆく。イクオが過去に何をしていようと一緒にいたい。そばで支えたいという考えになる。

「一つ謝りたいことがあるんです。竜崎さんを調べること私にはできないと思って。間違ってるかもしれないけど、それ以上に優先したいことがあるんです」ウロボロス7話より

また、イクオの部屋にお見舞いに来たシーンで、

美月「早く体調戻して帰って来てください。相棒がいないといざっていう時困りますから」
イクオ「日比野さん、、、、、。ありがとう」
ウロボロス7話より

あの夜のことに触れない美月。そして、この台詞。美月は全てをわかったうえで自分のことを受け入れようとしてくれていることをイクオは察する。
しかし、美月への思いは復讐の妨げになる可能性があった。イクオが美月に惹かれている様子を見て、たっちゃんはイクオに忠告する。それでも美月を心配するイクオに痺れを切らした、たっちゃん。そして、イクオを切り捨てて、単独行動をし始める。しかし、これはイクオへの愛ゆえの行動だった。イクオだけならまだ平和な日常に引き返せる。自身の父親を殺すという復讐をさせたくなかった、イクオだけは救いたいという気持ちから彼は冷たい言葉を放ってイクオを引き離す。信頼できる美月や三島さん、蝶野さんに彼を託して。

しかし、運命は彼らを逃さない。やはり彼らは2匹で1つの龍、ウロボロスなのだから。たっちゃんが1人で復讐を成し遂げようとしたところに、イクオがやって来る。

「二十年間、人の道から外れて生きてきた。本当は別の生き方をした方が良かったってわかってる。きっと、それを選ぶこともできたはずだって。それでもこっちを選んだんだ」ウロボロス最終話より

彼は、美月たちと生きる選択もできた。けれど、たっちゃんと共に人の道から外れ目的を遂げることを選んだのだ。
彼は自身の父親を自分の手で殺そうとするのだが、たっちゃんが撃たれたこと、北川があの時の結子先生のように子供を守った姿を見たたっちゃんがイクオを制止したことで彼は銃を下ろす。おそらく、北川が法で罰を受けることが決まっていた状況で、たっちゃんはイクオに実の父親を殺させることはできなかったのだろう。今、自分たちが死をもって殺さなくても北川は制裁を受ける。それなら、最後くらい人の道から外れないで生きてもいいじゃないかと。きっとこれは結子先生のビデオメッセージの影響だろう。
そして、瀕死状態のたっちゃんとあの場所へ向かう。
北川宅を出たときに、銃声を聞きつけた美月に出会うがイクオは


「ごめんね。日比野さん。君に会えて良かった」

と言って、去ってしまう。美月は追いかけようとするが、深町(ムロツヨシ)に止められる。

「まほろば」、彼らの家に帰ってきたイクオとたっちゃん。たっちゃんはその頃には既に息を引き取っている。その隣で自分のこめかみに引き金を引き自殺したイクオ。そして、彼らは幻の中で結子先生に対面する。
イクオが銃をこめかみにあてたこと、現場にかけつけた美月たちの反応から2人がその場所で亡くなっていることは容易に想像できるのだが、実は映像で直接的にイクオの死を映すシーンは1つもない。銃を撃つ瞬間もないし、美月たちが現場に到着したときイクオとたっちゃんの死体が並んで壁に寄りかかっているショットがあってもおかしくないのに、あえてイクオの死を直接的に映すことは避けている。その代わりに笑顔で幸せそうに結子先生のオムライスを食べているシーンが2人の最後に流れる。一般的に考えたら、切ないバッドエンドだけれど、2人にとってはこれが幸せな結末だったのかもしれないと予感させる演出だ。それとも、最後くらいは苦しんだ彼らの姿ではなく、笑顔で幸せそうな姿を映したかったのか。ともかく、彼らの始まりの場所で、彼らは一緒に人生を終えたのだ。最初から最後まで運命を共にした。

また、北川宅のシーンから美月の部分だけ無音になる演出がある。イクオを呼び止めるところも無音、イクオとたっちゃんの死体を見て泣き叫んでいるだろうところも無音。上野樹里の表情の演技だけが映し出される。そして、やっと、最後の最後に美月の声でモノローグが入る。

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「ウロボロス。永遠や無限、死と再生、創造と破壊。
2人が貫いたその愛は、正義だったんですか?」

それまで彼女のシーンだけ無音だったからか、このモノローグがやたらと強く響く。
そして、2人が貫いたその愛は正義だったのだろうか??と改めて私たち視聴者は2人の生き様を考えさせられるのだ。
ウロボロスの副題「この愛こそ、正義」。彼らは自分たちの愛を正義だと信じるしかなかったのだろう。そうすることしかできなかった。そうすることでしか生きれなかったのだ。自分の愛を正義だと思いたいのは彼らだけではないのかもしれない。臓器移植を望んだ親も自分の子供への愛を正義と信じて行動していたし、北川だって、北川の息子だって、日比野監察官だって、美月だってみんな利己的に自分が受け取った愛、または誰かに向けて抱いた愛を正義と信じて行動しているのだ。
そして、改めて考えよう。
彼らの貫いた愛は、正義だったのか??と。


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