夏野菜

短編小説を書く人とつながりたいです。本職はライターをしています。最近好きな漫画はSPY…

夏野菜

短編小説を書く人とつながりたいです。本職はライターをしています。最近好きな漫画はSPY×FAMILY。 仕事の合間に思い付いたアイデアを書いていきます。

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【短編小説】ハッピーエンドから始まるラブストーリー

「これからも、君と一緒に生きていきたい」 祈る気持ちで送ったスマホのメッセージには、一瞬で「既読」が付いた。 「いいよ♡結婚しよう」 笑顔の絵文字が付いた彼女らしいメッセージ。 それがうれしくて、愛おしくて、ほっとして……。 俺は地面に両膝をついて、人目も気にせずに涙をボロボロとこぼした。 震えが止まらない指で、画面右上の通話ボタンを押した。 「久しぶり」。電話に出た彼女は、いたずらっぽく答えた。 「いま、どこ?」。俺は鼻水をすすりながら、かすれた声で聞いた。

    • 【ショートショート】隣に住み始めた田中の言動が、異世界からきたとしか思えない

      おんぼろ木造アパートの隣の部屋に、田中が越してきたのは昨年12月のことだった。 「引っ越しの挨拶です」と持ってきたのは、豚ロースのかたまり肉。 真冬だと言うのに身に付けているのは、麻で織られた大きな1枚布のみ。布には頭を通す穴が開いており、腰のあたりをロープで縛る原始的な服だ。 田中と名乗っているが、髪の色は銀色で、瞳は赤、肌は若干だが緑がかっている。顔つきは、どうみてもアジアよりも欧米人に近い。年は20代の半ばといったところだろうか。 俺が「出身は?」と聞くと、田中

      • 【超訳・宮沢賢治】雨にも負けず

        宮沢賢治の代表作の一つ「雨ニモマケズ」は、宮沢氏の遺品の手帳に記載されていた作品です。文末には法華経の題目が記されていますが、今回は省略しています。 雨にも負けず 宮沢賢治 雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫な体をもち 欲はなく 決しておごらず いつも静かに笑っている 1日に玄米4合と 味噌と少しの野菜を食べ あらゆることを 自分を計算に入れずに よく見聞きし分かり そして忘れず 野原の松林の陰の 小さなカヤぶきの小屋に住み 東に病気の子どもがい

        • 10年前に行方不明になった地元のツレが、最強のステータスで異世界から帰還した【ショートショート】

          「斎藤さん!」 ガラス戸が割れるぐらいの勢いで理容店のドアを開けたのは、近所で中学教師をしている地元の後輩だった。 あまりの声の大きさに驚いて、あやうくハサミを客の頭に突き刺しそうになる。 「た、たた、大変ですよ!!!」 よほど慌てて来たのだろう。息が切れて、言葉が続いていない。 「ちょ、ちょっと、落ち着けよ。何があったんだよ」 「ゆ、ゆう、勇作さんが!校庭に出たんですよ!!ニョキッて感じで!」 「はは。何だよそれ。高校の時に消えた勇作が幽霊になって出てきたって

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        【短編小説】ハッピーエンドから始まるラブストーリー

        • 【ショートショート】隣に住み始めた田中の言動が、異世界からきたとしか思えない

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        • 10年前に行方不明になった地元のツレが、最強のステータスで異世界から帰還した【ショートショート】

          超能力者の男女

          都内某所にポツリとたたずむ、レトロな喫茶店。 不思議とここには、超能力者たちが集まってくる。 しかし今日はあいにくの雨。 どうやら客足が伸びていないようだ。 マスターも客席のソファにごろりと横になって熟睡していた。 その時、ドアに付けられたベルが音を立てた。 カラン、カラン、カラン、カラン マスターがゆっくりと体を起こす。 入り口から現れたのは、いかにも会社員といった格好をした若い男女の客。 「お好きな席へどうぞ」。 マスターは2人のお手ふきを取りにカウン

          超能力者の男女

          5分で読める現代風 宮沢賢治「ありときのこ」

          アリの目線で描かれた童話「ありときのこ」は1933年8月、宮沢賢治が37歳で亡くなる直前に掲載されたものです。 その年に日本は、国際連盟を脱退。戦火が着実に近づいていました。 この作品にも当時の日本兵の格好をした兵隊アリが登場します。ですが、描かれているのは、自然の美しさと神秘。「やまなし」と同様に無邪気な子どもと大人の掛け合いも愛情にあふれています。 あまり有名では無い作品ですが、短いので良ければ読んでみてください。 「ありときのこ」(原文は青空文庫に)  一面に

          5分で読める現代風 宮沢賢治「ありときのこ」

          もし宮沢賢治が現代の新聞に投稿したら

          小学校6年生の国語の教科書に、40年以上も採用されている宮沢賢治の「やまなし」。「クラムボン」とはいったい何なのだろうか。不思議な言葉の響きが耳に残っている人も多いのではないでしょうか。 この作品は、1923年4月8日、宮沢賢治の地元・岩手県の「岩手毎日新聞」(現在は廃刊)に掲載されました。生き物の特性を生かした躍動感、色鮮やかな鉱物、独特のオノマトペで表現された臨場感を感じる音・・・。 掲載当時、宮沢賢治がまだ20代半ばの若さだったことにも驚かされます。 ただ、現代の

          もし宮沢賢治が現代の新聞に投稿したら