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【七転び八起きの一転び目②】

【七転び八起きの一転び目①】

 意気揚々とオープンした古着屋なんだかセレクトショップなんだかなんなんだか、なんだかんだそれなりにやれるんだかどうなんだって感じの小さなお店。
 古着のTシャツとかジャージを業者に1ロット注文したら85%ぐらいTシャツのカタチをした布ゴミが届いたり、テキトーに筆で描いたパンダの絵をそのままTシャツにしてみたらわりと売れたり、実家で余ってた着物の生地を再利用してジーンズ作ってみたら意外と良いもの出来ちゃったり、まぁ、ハイパーダッシューモーターで回したメリーゴーランドみたいに高速回転で色々あったんだけど、半年ぐらいでもうアレでした、もうお手上げでした。

 在庫を抱える商売って立て直そうと思ったらさらに仕入れしなきゃならないから大変なんだね。死ぬかと思ったよ。途中からなんで古着屋やって上手くいくと思ったんだろうなんてことも考えちゃったし、それに関してはいまだに考えてもよく分からないままだけど。青春って二文字なら全て説明がつく気もする。いや、若気の至りか。

 さて、一緒に起業した友達と今後どうするかって話し合いになったときに、そいつがこんな話をしたんだ。
 あんたは女友達が多くて、みんな恋愛相談だったりなんだりしにお店に立ち寄ってくれるけど、うちの古着屋で女の子がついでに買うものなんてなんもないから、せめてコーヒー1杯だけでも飲んでもらえる店をやった方が良いんじゃないかって。ついであんた男友達少ないよねって悲しい事実も伝えられた気がするけど、それはもう明日には忘れてる。

 あ、それ良いねってことで、古着屋をやりながら、物件を探しつつ、市内の飲食店で料理のリハビリのためのバイトをし始めた。資金も底をつきそうだったしね。そういえばもともとずっと飲食店で働いてたし、スープカレー屋とラーメン屋で店長やってたし、調理師学校卒で調理師免許も持ってるんだった。

 さて、終焉にむかう古着屋の方は、今思うといくつかもったいないポイントがあったんだよね、それはそれでまとめておきたい。
 ひとつは閉店するからってオーストラリアで仕入れた商品たちをヤフオクに出品してみたらすごい高値で売れたこと。どうやらオセアニアでしか手に入らないモデルが多かったらしく、$5〜$10で仕入れたキャップが7000円とかで売れた。それなら最初から実店舗を持たずにオンラインショップで売れば良かったんだけど、まだガラケーの時代だったからそこに気がつけなかったのは仕方ない。
 もう一つは着物リメイクジーンズをもっと真面目に売ってたら後にオンラインで売れたんじゃないかなってこと。母親が着物の講師だったおかげでかなり良い素材で同じビルの仕立て屋さんに作ってもらってたからね、なんか売り方次第じゃ良いビジネスになってた気がして勿体無い。

 そんなわけで沈みかけた古着屋から新たに飲食店というを出すわけだが、そこからが『起』であり起き上がるのかっていったらそうではなく、両膝ついたぐらいじゃ許してくれないのが人生の厳しさなのである。

【七転び八起きの一転び目③】につづく

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