まるまり
寝るまえに、ほっとひと息つけるようなお話を集めました。冷たいふとんをあたためる、湯たんぽのようなものでありたいです。
つとめてあかるく 涙がこぼれそうだ、でも
傷ついてるって言ってほしい あなたは悪くないよって言いたい
バスのとまりますボタンを押したいと最後に思ったのはいつだろう。
コミュニケーションが繊細なガラス糸の織物だなんてだれも教えてくれなかった
めくれたカーテンの隙間から イアの街の電灯が見えた。 ブルーの壁にオレンジの光。 軽い踊りの音楽が鳴る。 あたたかい食事。 気を許した仲間たちの声。 オレンジが影に茶色が光になる。 色の帯が重なる、離れる。 顔の見えない声の主。 帰っていく場所。 遠くなる。 目が覚める。 めくれたカーテンの隙間から パナソニックの電灯が見えた。 もうどこでもない。 だれでもないものへと。 だれでもないものへと。
考えないことを考える。
呼吸を、 鼻腔から鼻の穴まで、 温かい息を、 喉の奥から鼻腔まで、 かすかな声を、 揺れる髪の先。 遠くを自動車が走っている、 冬の夜。
生活はむずかしい
やさしさを差し向けてくれたひとには やさしさを返したい
くしゃくしゃのレジ袋すら美しい
ゆっくり息を吸い
人を愛せた日
日の光が透ける薄緑色に
髪の毛を染めてみようかな
日常を慈しむことができた日
=地の底からふつふつ湧いてくるストレスを、ひとつずつ丁寧に潰していくお仕事