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夢から覚める前のあの感じ
お尻のあたりが、すーすーする。
東京駅の改札を出てすぐのところで、立ち止まる。
どこに、落としてしまったのだろうか。
振り返るが、見当たらない。
わたしのしっぽ。
駅のなかは混雑していて、何度も、人にぶつかる。
しっぽがどこにあるのか、わからないまま、広い駅のなかをさまよう。
泣きたい気持ち、さみしい気持ちが、かわりばんこに、やってくる。
しかたがないから、歩き続ける。
そのうち、あれっ、と思
いまにもこわれそうで
居間に、ぽつんと、バイオリンが置いてある。
だれかが、練習していたのだろうか。
おそるおそる、指ではじいてみる。
パリン、と氷柱が落ちるような、音がした。