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【文字起こし】2021年04月20日 参議院 法務委員会 嘉田由紀子

嘉田由紀子議員

せっかく頂いたお時間の中で私、一貫して本当に日本の子どもたちが不安定な状態に置かれているというところ心痛めておりまして、そのひとつは、どうも司法の仕組みそのものが子どもたちを守る仕組みになってないんじゃないかということで、色々勉強させて頂きました。まず最初に、判検交流と三権分立についてお伺いをしたいんですが、判検交流、例えば身の周りの知っている人に、これ聞いたことある?って言うとほとんど知らないと。裁判官の身分の人が検事の身分に転換して国の行政機関など勤務している、そういう制度と伺っております。今日は資料①に小学校6年生で最も多く採用されている東京書籍の社会科の教科書を1ページお出しさせて頂きました。裁判所の三権分立の中の役割として、国会で決められた法律に問題となる部分があったり、法律に反して政治が行われたりしたら大変なことになるので、裁判所はこのようなときに法律に基づいて問題を解決し、国の権利を守る仕事をしていますとあります。そんな中で、内閣法制局さんにお伺いしたいんですが、三権分立の間で権力の抑制と均衡を図る意義についてご説明頂けるでしょうか。

木村内閣法制局第一部長

三権分立でございますけれども、通常国家作用を立法・司法・行政の三権に分けまして、各々を担当する者を相互に分離独立させ、相互に牽制をさせる統治組織原理のことを指すものとして使われております。釈迦に説法になってしまいますけども、日本国憲法におきましては、立法権は国会、行政権は内閣、司法権は裁判所にそれぞれ帰属することとされております。またそれらの間には、特に内閣と裁判所ということかと思いますけれども、内閣の裁判官の任命権、それから最高裁判所には法律・命令・規則・処分に対します違憲審査権という、相互に他を抑制し均衡を保つ仕組みが定められているところでございます。

嘉田由紀子議員

ご丁寧にありがとうございます。内閣と司法権の間で均衡を保つというところで、この判検交流は戦後昭和20年代に法務省の言わば人的資源が不足しているということで、裁判官が検事にという人事交流がなされたということでございますけれども、この判検交流の内容と法的な根拠を法務省さん、ご説明頂けますか。

竹内法務省大臣官房政策立案総括審議官

お答えいたします。いわゆる判検交流でございますが、委員ご指摘の通り、裁判官の職にあった者からの検察官への任命、および検察官の職にあった者からの裁判官への任命を始めといたします法曹官の人材の相互交流を指すものと承知をしております。このような判検交流でございますが、法務省が所掌いたします司法制度、民事刑事の基本法令の立案、あるいは商務事件の遂行等の事務におきましては、裁判実務の経験を有する法律専門家である裁判官を任用する必要があることや、裁判官が裁判官以外の法律専門職としての経験、その他の多様な経験を積むことは、多様で豊かな知識・経験を備えた視野の広い裁判官を確保するという目的のための意義があることから行われてきたものと承知をしております。法的な根拠でございますが、判検交流それ自体について定める法律の規定というのは特にないのでございますけれども、裁判官の職にあった者の検察官への任命につきましては検察庁法に、検察官の職にあった者の裁判官への任命につきましては憲法および裁判所法にそれぞれ定められているものと承知をしております。

嘉田由紀子議員

ありがとうございます。裁判官から検事の身分に転換して国の行政機関で勤務している者の数と法務省本省における役職、これ法務省さんから資料提案を頂きまして、資料②と資料③、嘉田事務所で整理をさせて頂いたものがございます。資料②と資料③を見て頂きますと、こちらで裁判官の身分から検事の身分に転換した、そして法務省で勤務されている方の人数、あるいはその課長級ポストに占める割合、また特定の役職にそうした方々が任命され続けている傾向がございます。これ個別の問題ではないので役職として、例えば民事局長さん、あるいは参事官さんなどですね。ずっと網掛けしてあるそのポストは判検交流の方が就いておられるという傾向だろうと思います。その辺りのところで、法務大臣のご認識はいかがでしょうか。

上川法務大臣

法務省が所掌をいたしております司法制度、また民事刑事の基本法令の立案、また商務事件の遂行等の実務・事務におきましては、裁判実務の経験を有する法理専門家であります裁判官を任用する必要がございます。またこれらの実務・事務に関する高度な判断を的確に行いつつ、法曹資格者を始めとする部下を指揮監督して、適正に職務を遂行しなければならない法務省幹部に、法曹としての豊かな専門的知識と経験等を備えた裁判官の職にあった者を任用することにつきましては合理性があると考えております。委員ご指摘の法務省幹部の任用状況については、その都度適材適所の観点から適正な配置に努めた結果として、裁判官の職にあった者をあてることが続いているものと認識をしております。

嘉田由紀子議員

これはコメントですけれども資料③を見て頂きますと、法務本省には裁判官出身者の方が30.5%・18名、他の管理庁・委員会には裁判官出身の方はおられないという、それは事実としてだけ示させて頂きます。そこであの、衆議院の法務委員会でちょうど2017年ですけど、金田法務大臣が、法務省で勤務した者が裁判官に復帰した時の裁判の公正・中立性について、法曹は法という客観的な規律に従って活動するものであるので、その場に応じて職責を全うするところに特色があるということを答弁しておられますけれども、客観的な規律に従って活動することと、法務省職員として、職員というのは法務大臣の指揮監督の下で職務を遂行する、いわば行政職員です。これは両者が抵触するような場合はないんでしょうか。あるいはそういう場合、法という客観的な規律に従って活動することが認められるのでしょうか。法務大臣と内閣法制局さん両方からお願いいたします。

上川法務大臣

法曹は法という客観的な規律に従って活動するものでありまして、裁判官・検察官・弁護士のいずれの立場におかれても、その立場に応じて職責を全うするところに特色があるものと考えております。元より我が国は法治国家でございます。法律による行政の原理が行政運営の基本とされるところでございまして、このことは法務行政においても異ならないものでございます。法務大臣の法務省職員に対する指揮監督は、これを前提に行われるものであります。裁判官の職にあったものが法務大臣の指揮監督下で職務を遂行することと、法曹として法という客観的な規律に従って活動することは、何ら矛盾・抵触するものではないというふうに考えます。先ほど委員ご指摘の金田法務大臣のご答弁ということでございましたけれども、こうした理解を前提になされたものというふうに考えております。

木村内閣法制局第一部長

三権分立と判検交流という人事の運用との関係というようなご質問だというふうに思うんですけれども、やはり当該運用にかかります当事者の間におきまして、一義的にはやっぱりご検討頂くべき事柄であろうというふうに思っております。お尋ねにつきましては申し訳ございませんけれども、内閣法制局としてお答えすることは難しゅうございます。

嘉田由紀子議員

理念的に説明することと、それと具体のそれこそ三権分立のこの理念が具体の裁判とかにいわば適用されるところにはズレはあるかと思うんですが、後半の方は私常々申し上げております、子どもたちが今とくに離婚の後どういう状態に置かれているかというところで、この三権分立と判検交流と関わっている事例があるのではないのかということで質問させていただきます。法務大臣、平成28年・2016年に千葉の家庭裁判所松戸支部で、フレンドリーペアレントルールというのが出されたんですけど、法務大臣はご存知でおられるでしょうか。

上川法務大臣

ご指摘の判決につきましては報道等によりまして、その概要を承知しているところでございます。

嘉田由紀子議員

上記の松戸事件の当事者である渡辺泰之参考人が、2013年・平成25年4月19日衆議院の法務委員会の参考人質疑で発言をしておられます。それをちょっと今日長いんですが、資料④としてコピーを皆様にお出しをしております。この資料をちょっとかいつまんでご紹介いたしますと、特に裁判官の役割というところで、裁判官が法をどう運用するかというので、この渡辺参考人が裁判官は当時ちょうど時代背景としては2013年、2011年に民法766条が改正をされてそこに子ども本位の離婚後のいわば監護権あるいは親権の確定というところが議論された後です。民法766条も改正をされました、その民法766条に従った運用をして頂きたいと渡辺参考人が当事者として、子どもを連れ去られた当事者ということですけれども、審判の時に発言をしたところ、その裁判官は「法務大臣が何を言おうが関係ない。国会の議事録など参考にしたことはない」とおっしゃられたということでございます。個別の審判の例ですから、そう大きく取り上げることはないのかもしれませんが、実は審判にあたった担当の若林裁判官のこの発言そしてフレンドリーペアレントルールを全く取り上げなかったということがその後のこの子どもの親権問題に大きな影響を与えているということがございますので、あえてここで取り上げさせて頂きました。そして2014年、その1年後ですけれども、親子ネットがやはり民法766条改正で家裁は変わったのかということを調べております。家裁通信簿という資料がございますけれども、ここでは裁判官の行動評価が大変低いと、子どもの福祉にかなうように適切に行動していないと思う人が90%もいる、立法府が制定した民法766条の法律の趣旨が実際の裁判において裁判官が軽視しているのではないかという疑念を持つ人が多いということでございます。ここについては、法務大臣、最高裁判所のご認識はいかかがでしょうか。

上川法務大臣

平成23年の民法等の一部改正におきまして、民法第766条第1項が改正をされました。父母が協議上の離婚をする際に定める子の監護につきまして必要な事項の具体例として面会交流および子の監護の分担が明示されるとともに、これらを定めるにあたっては子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが明示されたところでございます。この改正の趣旨でございますが、協議離婚をする当事者に面会交流や養育費の取り決めを促すとともに、これらを定めるにあたっては子の利益を最優先して考慮しなければならないという改正前の民法におきましても同様の前提とされていた理念を規定上も明確にした点にございます。その上であくまで一般論として申し上げるところでございますが、面会交流の調停や審判の手続きにおきまして、裁判官はこのような民法の趣旨をふまえ子の意思や心情・生活状況・親子の関係に関する事情・ドメスティックバイオレンスや虐待の有無等の様々な法要素を総合的に考慮して子の利益を最も優先した面会交流のあり方を検討しているものと承知をしております。

手嶋最高裁判所事務総局家庭局長

お答え申し上げます。委員ご指摘のような参考人のご発言ですとかアンケートにおけるご意見があったということは承知しているところでございますが、個別の事件それから特定の団体が実施された個別のアンケートについて最高裁事務総局として意見を申し上げることは控えさせて頂きたいと存じます。一般論として申し上げますと、個々の裁判官におきましてはただ今上川大臣からも民法766条の改正趣旨についてご説明あったところでございますが、委員ご指摘の民法766条を含みます関係法令の立法趣旨もふまえつつ、個別の事案に応じて適切な判断を行っているものと承知しておりますが、最高裁としましても引き続き必要な支援をして参りたいと考えております。

嘉田由紀子議員

ありがとうございます。個別の事案についてはコメントできない、ただし一般論としては766条の趣旨というのが大切なものであるということをご答弁頂きました。実はこの766条が改正された後であっても、具体現場の裁判実務を見ますと、片親親権の中でどちらに監護権やあるいは親権が裁判所で決められるかというと圧倒的に多くが先に子どもを連れ去ったあるいは継続的に同居している者90%以上、これが裁判実務でございます。そういう中で、単独親権でありながら親権を付与する基準が理念ではあっても具体的に裁判実務でできていないと、当時の江田法務大臣も継続性の原則は使ってはいけないとフレンドリーペアレントルール含めてですね、多様なまさに子どもの利益を総合的に考えるということを言って頂いております。そういう中で今現実に、先日も元将棋棋士の橋本八段が子どもを連れ去られてしまった。過去10年統計はございませんけれども、大変多くの方が子の連れ去りにあっている。これは継続性の原則を実務としていわば判断基準にしているのではないかと、合わせて他の本来の総合的な子どもの利益が配慮されていないんじゃないかということが社会問題化していると私は理解しております。裁判所の紛争解決機能に対する満足度・納得度というのが残念ながら日本ではあまり高くないんですけど、その辺資料⑤でお示しをしております。もう時間もないので最後に一言だけお願いをしたいんですが、家事事件における紛争満足度・納得度を評価検証した資料が今のところありません。最高裁からも提案をして頂くようお願いしたんですが、民事事件についてはあるんですけど家事事件についてはありません。このあたり最高裁判所さんの方で今後そういうデータを取られるかどうかコメント頂き、また法務省さんの方からも短くて結構です、コメント頂けたら幸いです。

手嶋最高裁判所事務総局家庭局長

お答え申し上げます。委員ご指摘の通り家庭裁判所としまして家事手続きの運営の在り方について利用者のご意見やニーズを把握してさらなる調停運営の改善や利用促進に活かしていくということは大変重要であるというふうに認識をしております。また民事調停事件についてご指摘のようなアンケートを実施した例があるということは承知しております。この点家事調停事件につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりまして調停運営のあり方についても工夫が求められる中でこれをひとつのきっかけといたしまして、まさに現在各家庭裁判所におきまして利用者の方々から求められているニーズや調停の本質的な良さを改めて見つめ直し、調停運営を一層充実改善させようと様々な取り組みを行っているところと承知しております。その過程でまずは例えば利用者のニーズをよく知る立場の弁護士会との間で意見交換を行うなどの形で利用者の人数の把握に努めているというふうに承知しているところでございます。また各庁におきまして、家事調停あるいは家事事件の手続き案内を利用された方々に対してアンケートを実施した家庭裁判所もあるものというふうに承知をしているところでございます。事務総局としましても各庁において今現在行われている取り組みの進捗状況などもふまえつつ、家事調停を中心とした家事手続きの運営のあり方に関するご意見やニーズを的確把握するためにどのような手段が適切であるかにつきまして、引き続き検討して参りたいと考えております。

竹内法務省大臣官房政策立案総括審議官

お答えいたします。法務省といたしましては、委員ご指摘のようなアンケートあるいはニーズ調査につきまして最高裁判所との間で協議等したことはございませんが、今後父母の離婚等に伴う子の養育に関する法制度の見直しにつきまして、法制審議会において充実した調査審議が行われるよう事務局を務める法務省といたしましても、関係省庁とも連携を図りながら必要な実態把握や情報収集のあり方について引き続き検討して参りたいと考えています。

嘉田由紀子議員

ありがとうございます。時間過ぎてしまって申し訳ありませんでした。以上で終わります。

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