見出し画像

アガサ・クリスティー関連書籍 紹介と感想『イギリスのお菓子と本と旅 アガサ・クリスティーの食卓』『ミステリの女王の名作入門講座 クリスティを読む!』


北野佐久子『イギリスのお菓子と本と旅 アガサ・クリスティーの食卓』二見書房, 2024

2019年出版の『イギリスのお菓子とごちそう アガサ・クリスティーの食卓』に続く、イギリスの文化や暮らし、ハーブなどについて紹介している著者が送る、クリスティー作品に出てくる食べ物やアンティーク、ハーブを留学時代の思い出などを交えながら紹介する一冊。
長編短編合わせて43編の作品に出てくるイギリスならではの食事や文化が紹介されており、イギリスならではのお菓子が作れるレシピも付いています。

また、クリスティー作品がメインですが、内容的に関連した項目では、ディケンズやオースティンなど別の英国作家の作品についても取り上げられています。

文章だけでは想像が難しかったお菓子や食べ物、美しいイギリスの風景やクリスティーゆかりの地を、文章だけでなく豊富な写真でも楽しめるため、クリスティーだけでなくイギリスの文化に興味がある人にもお勧めです。
毎日少しずつ読んでは、遠いイギリスに想いを馳せたり、クリスティー作品について考えたりしていました。

ジンジャー・プティングやビクトリア・スポンジ、チョコレートケーキなど食べたいレシピも多く、大雑把すぎてお菓子作りの才能が無い自分でも作りたくなってきます。


大矢博子『ミステリの女王の名作入門講座 クリスティを読む!』東京創元社, 2024

2018年から「アガサ・クリスティを読む ミステリーの女王 その世界と魅力」という講座を担当し、ハヤカワ・ジュニア・ミステリのクリスティー原作で解説掲載作品の解説部分も全作担当している著者による、様々な視点からクリスティの魅力を紹介する一冊(創元はクリスティ、早川はクリスティー表記なので倣っています)。

探偵、舞台と時代、人間関係、騙しのテクニックと大きく4つに分けて、それぞれの趣向の紹介に向いた作品を、極力ネタバレをしないように紹介しており、最後の章では『シタフォードの謎』と『殺人は容易だ』をネタバレ全開で、いかにクリスティのミスリードがすごいのかを解説しています。
ページ下部の脚注では、別の作家の話題や作品に関係したトリビアなども展開されます。

もちろん作品について触れているため、察しの良い人ならネタバレとなってしまうこともあるかもしれませんが、極力決定的なネタバレをせずに作品の魅力を語っており、何年も講座を担当している巧さを感じました。
文体がエッセイ風なため、講座はこんな感じなのかなと感じられる、目の前で著者が語っているかのような気分になります。

非常に読みやすいため、クリスティ初心者への作品紹介としてだけでなく、クリスティに関係したエッセイを読みたい人にもオススメできると思います。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?