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貫井徳郎『被害者は誰?』(2003)紹介と感想

貫井徳郎『被害者は誰?』講談社, 2003

病棟の本棚をブラウジングしている時に、タイトルが気になり手に取ってみました。
著者の本を読むのは初となります。


収録作あらすじ

被害者は誰?(e-NOVELS '01年10月23日号~'02年1月15日号/週刊アスキー '01年11月6日号~'02年1月29日号)

亀山俊樹の自宅の庭から女性の白骨死体が発見された。
亀山俊樹は自分の犯行だと認めたが、被害者の身許や動機などは黙秘を貫いていた。
自宅からは、十年前に書かれた三人の女性に殺意を覚えた記録を綴った書記が見つかった。
捜査一課の桂島は、ベストセラー作家で名探偵の先輩・吉祥院の力を借りるべく、彼のマンションを訪れた。

目撃者は誰?(メフィスト'02年5月号)

工場で働いている男は、大学時代に好きだった女性・美晴と社宅で再会した。
美晴は人妻になっていたが、気づいたら行き着く所まで行ってしまった。
しかし、幸せも束の間、不倫を目撃したという人物から脅迫状が届いてしまう。
男は、向かい側の社宅に住む3人の人物の誰かだと考え調査を始める。
同じ頃、桂島は大学時代の友人である薬師丸から、自分を含む同じ社宅の3人に身に覚えのない2万円分の旅行券が届いたとの相談を受けていた。

探偵は誰?(メフィスト'02年9月号)

大学時代に自分が解決した事件をモデルに小説を書いた吉祥院から、小説の中で誰が自分なのか当ててみろと言われた桂島は小説を読み始める。
物語は、モデル会社社長・桜木の誕生日パーティーを祝うために、所属モデルの松沢、梅田、柿生、栗本の4人が社長の別荘へ向かう所から始まる。
別荘では桜木と娘の桃恵が待っており、所属モデルのそれぞれが腹の中に思うことはありながらも、和やかにパーティーが進む。
しかし、明朝に桜木が殺されているのが発見されてしまうのだった。

名探偵は誰?(書き下ろし)

警視庁捜査一課の刑事であるぼくは、車に轢かれて複雑骨折をした先輩のお見舞いに来た。
加害者がすぐに来ないことに憤慨していた先輩だったが、加害者が美しい女性だと分かると腑抜けになってしまった。
しかし、ぼくはその女性が先輩の入院している階以外に居るのを目撃する。


紹介と感想

ユーモア系の中短編集で、それぞれに趣向を凝らした作品が収められていました。

問題は、自分がすれっからしのミステリー読者になってしまっていたことで、趣向としての驚きをあまり感じられませんでした。

20年以上前の作品なので、現代の目で読むとユーモアの出し方に気にる部分があったり、文章中に手懸かりとして書かれている違和感を感じることが難しい所もあるのが、今読む際に少し難点に感じました。

収録作の中では、「探偵は誰?」が謎解き短編として堅実な内容で面白かったです。

著者の本を読むのは初めてなので、今後もう少し読んで特色を知りたいと思います。

「被害者がわからない? いいねぇ、そういうの好きだなぁ」
 被害者の遺族が聞いたら憤慨しそうな不謹慎なことを、先輩はにこにこしながら言う。

貫井徳郎『被害者は誰?』講談社, 2003, p.12

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