価値測定の貨幣換算の功罪

世界銀行の報告によれば、世界の富の総量は増加している。

同報告の「富」の定義は、自然資本(森林や鉱物)、人的資本(生涯所得)、生産された資本(建造物やインフラなど)、対外純資産等さまざまな要素で構成されるが、いずれにせよ貨幣換算されたものであり、資本主義の基本的価値評価ベースに基づくものである。

価値基準が貨幣換算価値であっても、総量の増大により、十分とは言えないものの、絶対的貧困率は減少していると世銀は報告している。

一方、相対的貧困率はどうであろう。相対的貧困は富の分配の問題でもある。
この考察をするにあたり、ピケティの分析との関係が興味深い。

ピケティが示す、資本収益率rは資本を運用して得る収益つまり株式配当や不動産収入などの不労所得のリターン率が、 経済成長率gすなわち日々の労働で得る給与所得などの上昇率よりも高い、 つまり、働いて得る賃金よりも、株や不動産に投資して得られる収入の方が多いということ(働いたら負け)、も貨幣換算された数値に基づくものである。

資本主義は貨幣換算された価値の増大をもたらす仕組みがビルトインされているため、必然的に資本収益率rを増大させやすい金融資本主義、インダストリー的には金融セクターが発達する。

しかしながら、社会の本来的成長はエッセンシャルワーク的インダストリーからもたらされるものであり、現状はいびつな構造といえる。

日本の相対的貧困率は15.7%、アメリカの相対的貧困率は17.8%、イギリスの相対的貧困率は21.3%。

これら各国の状況から、結局、世界の富の総量は増加しているものの、富の分配の不均等さによって相対的貧困率が依然として高い水準にあることは明らかである。
しかも富の増加は貨幣換算された価値に基づいており、資本収益率の高さが経済成長率を上回る傾向が見られる。これは金融資本主義の発展と関連している以上、社会システムが現在の資本主義を超えたポスト資本主義を、それが自律社会であるか別な方法論であるかを問わす、待たなければ解決の糸口はないのかもしれない。



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